連合の春闘方針案判明 定期昇給分を含め5%以上の賃上げ要求へ

労働団体の連合は来年の春闘でベースアップ相当分として3%以上、定期昇給分を含めて5%以上の賃上げを要求する方針案を固めたことが関係者への取材でわかりました。1995年以来となったことしの春闘を上回る水準を求めるもので、持続的な賃上げの実現に向けて2年連続して高い水準の要求となりました。

連合は組合員およそ700万人の労働組合の中央組織で、関係者によりますと17日、来年の春闘について基本構想の案をまとめました。

この中で、来年の春闘は経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へのステージ転換をはかる正念場で、その最大のカギは持続的な賃上げの実現だとしています。

さらに物価を加味した実質賃金はマイナスで推移し、暮らしは厳しさを増しているとして生活向上につながる賃上げの必要性を強調しています。

そのうえで、基本給を引き上げるベースアップ相当分として3%以上、年齢や勤務年数などに応じた定期昇給分を含めて5%以上の賃上げを要求するとしています。

ことしの春闘では、ベースアップ相当分と定期昇給分を合わせて5%程度としていましたが、今回は5%以上と表現を強めた形となり、1995年以来の水準となったことしの春闘を上回る水準を求めるもので、2年連続で高い水準の要求を掲げることになりました。

この基本構想の案は19日に開かれる連合の中央執行委員会で議論され、決定される見通しです。

春闘 要求方針の意味とその推移

春闘とは労働組合が賃金の引き上げや労働環境の改善などについて経営側と話し合う交渉を春の時期に足並みをそろえて行う動きです。

この際、中央組織である連合が今の時期に要求方針や目標を掲げ、各労働組合は連合や産別の指導や調整を受けながら経営側との交渉を進め、春に一斉に回答を引き出します。

1990年代前半までの経済成長が続いた時期には、連合は高い水準の賃上げ要求を掲げていましたが、バブルが崩壊し経済停滞とデフレが長期化する中で、2002年以降は具体的な要求水準を掲げない時期が続きました。

その後、デフレ脱却に向けて賃上げの機運が高まった2014年になって定期昇給を2%確保したうえで、ベースアップを1%以上求めるとする方針を掲げました。

それ以降、連合は毎年4%の賃上げ水準を掲げ、物価上昇が続いた去年は1995年と同じ水準の5%程度の要求方針を掲げ、ことしの春闘に臨みました。

“来年も高い賃上げ率を維持できるかが重要”

来年の春闘について、大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「ことしの春闘では高い賃上げ率を実現したが、1年で終わってしまうとせっかく回り始めた賃金と物価の循環的な上昇がしぼんでしまう可能性があり、来年も高い賃上げ率を維持できるかどうかは非常に重要になる。来年もこれを実現しその後も続くと多くの人が考えるようになれば、消費の拡大や賃上げからの値上げもしやすくなって経済全体が回りやすくなる状況になると思う」と指摘します。

労働団体の連合が、来年の春闘で定期昇給分を含めて5%以上の賃上げを要求する方針案を固めたことについては「足元でインフレ率が3%を超え、そう簡単に終わらない状況では生活を維持するという意味でも、ベースアップ相当分で3%ぐらいの水準を設定したことはある程度理解できる。ことしの春闘では中小企業も大幅なベアをしたとはいえ、大企業に比べると少し低い数字になっていて、連合は『程度』ではなくて『以上』ということばを使ってより賃上げ促し、中小企業も含めてベアをより加速させたいねらいがあると思う」と分析しています。

その上で「企業が価格を転嫁できなければ企業にとっては負担が重くなるので、政府は大企業に賃上げだけでなく、価格転嫁もしっかりと働きかけて進めていくことが求められる」と話していました。