「ねるねるねるねは…練れば練るほど色が変わって…」怪しげな黒ずくめの魔女の姿とともに、印象的なメロディのCMを覚えている方もいるのではないでしょうか?
ねってねってお薬を お薬が苦手な子供が楽しんで飲む!?
粉と水をねってねって作る。
子供に人気のおやつが、薬が苦手な子供も飲めるようにと姿を変えて全国で発売されました。
子供に薬を飲ませるのに苦労している保護者からは期待の声が上がっていて、さっそくネット上でも話題になっています。
(ネットワーク報道部 藤目琴実 小林紀博)
お薬を「おやつ」の力で楽しく
「ねるねるねるね」は1986年に子供向けのおやつとして発売されました。
2種類の粉と、水を混ぜると色が変わって膨らんで、自分で練って食べるのが楽しいと、子供たちから長年人気を集めています。
37年を経た今年10月16日、このおやつが生まれ変わって、子供向けに粉薬を飲みやすくする服薬補助食品として全国で一斉に発売されました。
「おくすりパクッとねるねる」です。
「ねるねるねるね」の粉に水を混ぜて膨らませたあと、粉薬を混ぜると泡が薬を包み込み、飲みやすくなるというものです。
「粉薬を飲む時間は、薬は嫌いというお子さんにとっても、多くの親にとってもストレスになっていると思うが、おやつ感覚で楽しんで作ることで、前向きな時間にしてもらえたらうれしい」
「ありがたい…」親たちから期待の声
親しまれてきたおやつが生まれ変わって、服薬を助ける商品が発売されたことに、SNS上ではさっそく期待の声が上がっています。
「服薬楽しくなったらいいなあ。次男がお薬めっちゃ苦手なので」
「これで薬飲む時間が短縮されたらありがたい。楽しそうだったから、試してみたい」
「混ぜるの楽しくて、子供が喜ぶ、喜ぶ。こりゃ、薬を混ぜても喜んで食べてくれそう」
一方、今も薬が苦手という大人からも。
「使ってみたい。大人の薬は苦すぎる」
「いいねー 薬がものすごくまずくてびびったんだけど、今度処方されたら試してみよう」
きっかけは 薬剤師からの1通の手紙
人気のおやつを、薬を飲むのに活用するというアイデア。
実は、開発のきっかけになったのは現場の薬剤師の声でした。
4年前の2019年、子供の高度医療を担う病院「国立成育医療研究センター」に1通の手紙が届きました。
手紙を書いたのは九州の薬剤師。
「子供に薬を飲ませる際、お菓子の『ねるねるねるね』に混ぜると飲みやすくなった」という内容の手紙でした。
病院の薬剤師たちが試してみたところ、練る過程も楽しく、粉薬特有の粉っぽさをうまく隠せたということです。
製品化に向け試行錯誤 成分やアレルギーの壁
製造元に、服薬補助食品として応用できないか相談し、病院も共同研究として参加して製品化に向け試行錯誤を重ねました。
お菓子に含まれる酸味やカルシウムは、薬の成分を妨げる可能性があるということで、取り除きました。
また、薬をすべて飲みきれるよう、ふわふわに膨らむ泡も3分の1の量に抑えました。
さらに、卵などのアレルギー物質も使わず、アレルギーのある子供も安心して使えるように工夫されました。
「苦手」克服する工夫 大切なのは「気持ち」
多くの子供たちに接する薬剤師たちの経験を生かして、子供たちの「苦手」を克服するための工夫も行いました。
子供が粉薬を飲むのが苦手なのは「苦み」「匂い」「口当たり」に拒否感があるからです。
泡状にすると、泡が粉薬を包んでまとまり、口当たりが柔らかくなって粉薬の粉っぽさが緩和されます。
また、病気と闘う子供たちと日々向き合っている現場の薬剤師たちは、子供たちの「気持ち」も大切に考えました。
「子供たちは長期にわたる入院生活や、連日の検査、つらい治療などで気持ちが落ちこんで、普段は飲める薬が飲めなくなったり、飲まなくなったりなることもあります。自分で粉末を練って作ることで『ワクワク感』を体験でき、楽しみながら主体的に薬を飲んでもらえる効果もあると思います」
小さな体で一生懸命病気と闘う子供たちと、それを応援するプロフェッショナルたちの思いが「魔法」のように混ざって、おやつの姿を変身させたのかもしれません。