ジャニーズ事務所「SMILE-UP.」に社名変更 11月から補償開始へ

ジャニー喜多川氏の性加害の問題で、ジャニーズ事務所は17日、社名を「SMILE-UP.」に変更しました。新たな公式ホームページでは、関連会社の一部について、社名が変更されたことなども確認できます。

新たな公式ホームページでは

ジャニー喜多川氏による性加害をめぐり、ジャニーズ事務所は17日、社名を「SMILE-UP.」に変更し、日付が変わるとともに新しいロゴが掲載された公式ホームページを公開しました。

この中では、ファンクラブの表記が「Johnny’s Family Club」から、「Family Club」に、また、「ジャニーズJr.」という表記が「ジュニア」に変更されています。

このほか、一部の関連会社については「ジャニーズ出版」が「ブライト・ノート・ミュージック」になるなど、社名が変更されています。

今後、「ジャニーズ」から名前を得たタレントたちの所属グループについても、名称の変更が示されるものとみられます。

一方、「SMILE-UP.」は、11月から始める被害者への補償に専念し、将来的に廃業するとしています。

ただ、補償についての詳細なスケジュールや財源などは、明らかにされてなく、今後、具体的な計画をどのように示していくのか、注目されます。

本社ビルにはファンの姿も

17日に社名を変更した「SMILE‐UP.」の東京・港区にある本社ビルには、ジャニーズ事務所の看板が撤去されたあと、新たな看板は掲げられていませんが、ファンや通りかかった人がビルをスマートフォンで撮影する姿が見られました。

岐阜県から来た20代の女性は、「ファンなので社名が変わったので見に来ました。社名変更は残念に感じていますが、引き続きタレントを応援していきます」と話していました。

また、千葉県の30代の女性は、「社名に親しみがありましたが、性加害の問題があるので社名が変わったことはとても複雑な気持ちで受け止めています。今後、タレントが傷つかずに活動できることを願っています」と話していました。

このほか、近くを通りかかったという30代の男性は、「ファンではないので社名が変わったことには何も感じませんが、社名が変わったからといって中身が変わったわけではないと思います」と話していました。

当事者の一人 “救済の具体案示して”

ジャニーズ事務所が社名を変更したことについて、アイドルグループ「忍者」のメンバーだった志賀泰伸さんは、「人類史上類をみない性虐待が、長年行われてきたと明らかになった今、やはり残すべき名前ではないし、ジャニー氏への同情もない。これまで事務所の名前を聞いたり、合宿所のあった原宿の光景を見たり、色々な要素が重なって何度も被害の記憶が鮮明によみがえってきた。今もカウンセリングを受けながら治療を続けているが、名前が変わったことはフラッシュバックの材料がひとつなくなることでもある」と話しました。

一方で、「SMILE-UP.」という社名が、これまで行ってきた社会貢献のプロジェクトに由来することに触れ、「企業の名前は、その会社の理念などが反映されるものだと思うが、プロジェクトの名前を横滑りさせて、被害者の補償や救済を行う全く異なる目的の会社の名前にすることには違和感がある」と述べました。

その上で、「スピード感を持って救済を進めることはもちろん大事だが、その中身がいまだ具体性に欠ける印象がある。被害によって受けた心の傷の深さや病の状況、必要な救済の形は人によって違うので、より具体的で詳細な対応が必要になってくると思う。事務所には、そうした内容について具体案を示してほしい」と話しています。

「当事者の会」は会社側に “要請書”

ジャニー喜多川氏の性加害の問題で、社名を「SMILE-UP.」に変更した会社側に対し、被害を訴えてきた「当事者の会」は、改めて事実の全容究明と被害者全体への救済や補償を求める要請書を送ったことを明らかにしました。

性被害を訴える元タレントらでつくる「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は16日、ホームページ上で要請書を公表しました。

この中では、被害者と対話しながら救済が進められるよう、外部の弁護士で作る「被害者救済委員会」に当事者の会が推奨する数名を参加させることや、救済に向けた具体的な手続きの内容、認定基準や補償基準の速やかな公表を求めています。

また、補償の対象がタレントや研修生として所属経験がある人に限定されていることに、不安の声が多く寄せられているとした上で、すべての被害者への救済の実施を要請しています。

識者 “11月の早い段階で補償の成果示すべき”

ジャニーズ事務所が17日、社名を「SMILE-UP.」に変更したことについて、企業統治に詳しい高田剛 弁護士は、「社名の変更に伴って、関連する名称を変更する動きが、16日から17日にかけても見られており、そういった事務量は多いと思う。ただ、それよりも社名の変更それ自体が、ジャニー喜多川氏との決別を象徴する重要なステップだと言えるのではないか」と話していました。

被害者への補償については、「先日の記者会見からまだ半月ほどしかたっておらず、補償の開始を11月としていることからも、それほど進んでいないというのはやむをえない。ただ、11月の早い段階で補償に関する何らかの成果を示すべきであり、それができなければ被害者救済が進んでいないという印象を与えてしまい、世間からの批判が再燃することになりかねない」と指摘しました。

また、補償の対象を事務所の所属にかかわらず認めるべきだという声があることについては、「補償の対象をあまりにも広げてしまうと言った者勝ちのようになって、かえってモラルハザードを起こす可能性もあるので、線引きをすることはやむをえないと思う。ただ、所属していなければアウトだという線の引き方は少し硬直的であり、関係性があったことを蓋然性をもって示すことができるのであれば、それは当然、補償の対象にすべきだと思う」と話していました。

そして今後に向けては、「11月に被害者に対する補償が開始され、タレントのマネージメントなどを行う新会社の設立を実現することがより重要なことであり、新しい会社がファンや関係者にとって魅力的な企業として根づいていけるかどうかに注目したい」と話していました。