ロッテ 延長10回3点差から大逆転サヨナラでファイナル進出

プロ野球、パ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージ第3戦、ロッテ対ソフトバンクはロッテが延長10回、4対3でサヨナラ勝ちし、ファイナルステージ進出を決めました。

9回まで両チーム無得点のまま延長戦へ

パ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージは、千葉市のZOZOマリンスタジアムで16日に第3戦が行われ、ここまで互いに1勝1敗どうしのレギュラーシーズン2位のロッテと3位のソフトバンクが対戦しました。

試合はチームトップの10勝をあげたロッテの27歳、小島和哉投手とリーグ最年長42歳、ソフトバンクの和田毅投手の両先発の投げ合いとなり、両チーム無得点で進みました。

ロッテは6回、1アウト二塁からここまで好投の小島投手が4番・近藤健介選手にライト前にヒットを打たれましたが荻野貴司選手の好返球でホームをねらった柳田悠岐選手がアウトになり、先制を許しませんでした。

試合は0対0のまま延長に入り、10回、ロッテは5人目の澤村拓一選手が打たれ3点をリードされました。それでもロッテはそのウラ、ノーアウト一塁二塁から2番の藤岡裕大選手のスリーランホームランで追いつく驚異的な粘りを見せ、最後は途中出場の安田尚憲選手のサヨナラタイムリーで試合を決めました。ロッテは4対3で最後までもつれた熱戦を制し、2勝1敗でファイナルステージ進出を決めました。

ロッテは2021年以来、2年ぶりのファイナルステージ進出で18日からリーグ3連覇を果たしたオリックスと京セラドーム大阪で対戦します。

ソフトバンクは延長10回に1番・周東佑京選手からの3者連続タイムリーでリードを奪いましたが、そのウラに7人目の津森宥紀投手が手痛い同点ホームランを浴び、最後は大津亮介投手が粘れませんでした。

《ロッテ 選手・監督談話》

吉井理人監督「すごい集中力」

2勝1敗でファイナルステージ進出を決めたロッテの吉井理人監督は「みんな本当によく頑張ってくれた。とてもうれしいです」と喜びを語りました。

その上で、3点リードされて迎えた10回ウラの攻撃について「負けたわけではなく、まだみんなの力が残っていた。やれることは全部やろうと思って角中を代打に送って、勢いのつくヒットを打ってくれた」と振り返りました。

そして、同点のスリーランホームランを打った藤岡裕大選手について「なんとかつないでくれと思って見ていたが、ほしいところで一発を打ってくれた。すごい集中力だった」とたたえました。

先発ピッチャーが不足するなか、3試合でのべ14人が投げチームを支えた中継ぎ陣について「シリーズが始まる前から先発がきつく、リリーフに頼ることになると思っていた。こちらが順番を間違えないのがカギと思っていたが、みんな起用にこたえてよく頑張ってくれた」と話していました。

オリックスとのファイナルステージに向けては「こちらはチャレンジャーなのでいつも通りできることに集中して頑張りたい」と意気込んでいました。

同点スリーランホームラン 藤岡「入ると信じていた」

藤岡裕大選手は同点のスリーランホームランを打った場面について「前の2人がつないでくれたのでホームランを打つくらいの気持ちで打席に立った。ヒットでつないでも相手ピッチャーはつないで来るだろうと思ったので一気に3点取れるようにと思ってがんばった。あまり覚えていないが、いい角度で上がったので、入ってくれると信じていた」と振り返りました。その上でファイナルステージ進出を決め「まだまだ試合ができる、まだこの応援が聞けると思って非常にうれしく思った。絶対に勝ってここに戻ってくるのでたくさんの応援をよろしくお願いします」と力強く話していました。

サヨナラタイムリー 安田「もう1回ここに帰ってくる」

途中出場で延長10回にサヨナラタイムリーを打った安田尚憲選手は「本当に最高だ。声援の力で打つことができ、この球場でクライマックスシリーズをできて幸せだ」と喜びを語りました。

3点リードされた10回ウラ、藤岡裕大選手のスリーランホームランで追いついたことについては「まだまだ行けると、チームの勢いをつけてくれたホームランだった。先輩方の勢いに乗って僕も打てたと思う」と振り返りました。そしてオリックスと戦うファイナルステージに向けて「きょうはチーム一丸となって戦えたと思う。この勢いのまま大阪に乗り込み、もう1回ここに帰ってこられるように頑張りたい」と意気込みました。

《ソフトバンク 監督・選手・王球団会長 談話》

藤本監督「相手の最後の攻撃すごかった」

ソフトバンクの藤本博史監督は「中継ぎ陣はみんな要所、要所をしっかり抑えてくれた。相手の最後の攻撃がすごかった」と悔しそうな表情で話しました。

また、レギュラーシーズン3位で、クライマックスシリーズもファーストステージで敗退となった今シーズンについては「若手選手の中で抜きん出てくる選手がなかなか出てこなかった」と振り返りました。

先制タイムリーヒットの周東「絶対に決めようと思っていた」

延長10回に先制のタイムリーヒットを打った周東佑京選手は「自分がもう試合に出られなくなったとしてもチームがファイナルステージに進出するためにこの試合に勝ちたいと思って出場させてもらった」と話しました。

先制タイムリーについては「生海選手が勇気を持ってバットを振っている姿を見て、その勇気を僕も引き継いで絶対に決めようと思っていました」と自身の打席の前に代打で出場し、空振り三振となったルーキーの生海選手の姿に奮い立たされたことを明かしました。そして9回まで無得点だったことについて「投手陣が頑張っていた中で、得点できなかったのはバッターの責任だと思う。もっと早い段階で自分がいい仕事をできていればこういう展開にならずに済んだかもしれない」と悔しそうに話しました。

津森宥紀「“過去イチ”で悔しい この経験を糧に」

延長10回に同点のスリーランホームランを打たれたソフトバンクの津森宥紀投手は「自分の中でも精いっぱいやったが、悔しい結果になった。両チームが無得点で試合が進む中、やっとソフトバンクが得点して流れがきている中だったので、“過去イチ”で悔しい」と率直な思いを述べました。その上で「この経験を糧にして成長して、こういう場面も抑えられる信頼してもらえるピッチャーになりたい」と話しました。

王貞治球団会長「これが現実」

ソフトバンクの王貞治球団会長は「こういうことを乗り越えてわれわれはやっていかないといけない。負けたことはしかたない。最後の試合で負けて悔しいが、これが現実。乗り越えていくように秋の練習、来年春の練習で、悔しさを忘れずにレベルアップしていきます」と話していました。

【解説】ロッテ 踏ん張り続けた投手陣にようやくこたえた打線

ロッテが劇的な形でファイナルステージ進出を決めた裏には十分な戦力がそろわない状況でも「超短期決戦」の戦いの中、踏ん張り続けた投手陣と、最後の最後でこれに応えた打線がありました。

ロッテはシーズン最終盤、肉離れのけがからの調整登板を続けていた佐々木朗希投手の体調不良による登録抹消から始まり、チームトップの10勝をあげていた種市篤暉投手、カスティーヨ投手など主力の先発陣の離脱が相次ぎました。

クライマックスシリーズに向けて「先発陣が足りていないので、どうやりくりするか考えたい」と頭を悩ませていた吉井監督は、大事な第1戦を佐々木投手を3回までの「ショートスターター」として先発させ、そのあとをホールド数でリーグトップを誇る中継ぎ陣でつなぐ決断をしました。

その結果、佐々木投手が3回を完璧に抑えて試合の流れを作り、後を継いだ5人のピッチャーが強打のソフトバンクをヒット4本に抑えて第1戦の勝利につなげました。

第2戦は先発した西野勇士投手が3回3失点と打ち込まれて敗れはしたもののこの日も後を継いだ4人のリリーフ陣が4回以降無失点で抑えました。

そして16日の第3戦も先発の小島和哉投手が7回途中無失点と好投しプレッシャーのかかる中で、試合を作りました。

この試合でも中継ぎ陣が一人一人、自分の役割を果たして無失点でつなぎ、延長10回、5人目の澤村拓一投手がシーズン中チームで一度もなかった3連投となるマウンドに上がりました。しかし、連続タイムリーを打たれて2失点、代わった坂本光士郎投手もタイムリーを浴びてこの回あわせて3点を失い、チームを支えてきた中継ぎ陣もついに力尽きたかに思われました。

しかしそのウラ、吉井監督は「中継ぎ陣が本当に頑張っていた。やれることは全部やる」とベテランの角中勝也選手を代打に送ると、ファウルで必死に粘った末にセンター前ヒットで出塁し、続く1番の荻野貴司選手もボテボテのサードゴロでしたが全力疾走で内野安打としてつなぎました。

そしてレギュラーシーズンで1本しかホームランを打っていなかった藤岡裕大選手の劇的な同点スリーランホームランが生まれました。

このイニングの前まで打線は第2戦から17イニング連続で得点を奪えず、土壇場でようやくこれまでの投手陣のふんばりに応えた形になりました。

藤岡選手は「投手陣が頑張っていたので、今度は野手がなんとかしないといけないと思っていた」と振り返り、その後サヨナラのタイムリーを打った安田尚憲選手も「投手陣のために最後なんとかひっくり返したかった」と話していました。

また、村田修一打撃コーチも「久しぶりに野球って本当におもしろいと感じた。全く点のとれていなかった打線が最後の最後でつながったのも、9回までゼロで抑えてくれた投手陣のおかげだと思う」と逆転を呼び込んだ投手陣の粘り強さをたたえました。