NHK 牛田茉友アナ 友人が国際ロマンス詐欺に遭いそうに…

「早く結婚してほしいな」
「気になる女性に頼られるのは幸せなことだと思います」

この夏、私の友人の女性のもとに送られてきたメッセージです。
やり取りしていた相手は、マッチングアプリで出会った男性。
しかし、やり取りを続けるうちに、男性の様子が変わっていったといいます。

(首都圏局 アナウンサー 牛田茉友)

ぎこちないやり取りだったけど…

私の友人の40歳の女性は、真剣に結婚相手を探したいと、マッチングアプリを利用していて、ことし8月、30代後半だという男性とやり取りを始めました。

男性の話では、台湾と日本にルーツがあり、日本に来たのは1年前。
日本語がまだ不自由で翻訳アプリを使っていると言いました。

男性からのメッセージ

「おはようございます。今日の仕事が順調になることを望みます」

「今日は仕事が忙しいでしょう。時間通りにご飯を食べることを忘れないでください」

すぐにLINEでもやり取りするようになりました。少しぎこちない日本語が、逆に新鮮だったといいます。プロフィール写真も好印象で、話もよく合ったそうです。

連日、やり取りを重ねるうちに、結婚の話も出てきました。

「早く結婚してほしいな」

「大きなリスクを冒して、子どもを産むなら。じゃあ子どもはいらないほうがいい。子どもは重要ですが(友人の名前)は私にとってもっと重要です」

彼からのメッセージに誠実さを感じたという友人は、私に「すごく素敵な人に出会った。まだ会えていないけれど、会えたときには付き合うつもり」と教えてくれました。

男性からのメッセージに変化が・・・

しかし、およそ2週間後。男性からのメッセージに変化が現れました。

「私と一緒にドル取引の基本知識と操作の流れを学ぶことをおすすめする」

「取引所に無料の学習アカウントを申請する」

突然、金融取引に関する話題を持ち出してきたのです。

友人はまだ1度も男性と顔を合わせたことがなかったため「会ったらやり方を教えてほしい」と伝えました。

すると…

「未来に何が起こるか予測できません。だから早く行動しなければならない」

「会ってからいいタイミングがないかもしれない」

執拗に、迫られたと言います。

「すごく焦らされているみたいで怖いです。必ずしないといけないことでもないし」
友人が断ると、男性からの連絡は途絶えてしまいました。

そして2週間後、男性から突然「病院で数十日意識不明になった」とのメッセージが届きました。

でも、友人は男性がマッチングアプリで別の相手を探していることに気付き、自分がだまされているのではないかと感じたといいます。

「国際ロマンス詐欺の可能性が高い」

この友人のケース、犯罪心理に詳しい立正大学の西田公昭教授にたずねると、「国際ロマンス詐欺」だった可能性が極めて高いと指摘しています。

「国際ロマンス詐欺」は、外国人をかたって恋愛関係にあると錯覚させ、知り合って短期間で▽暗号資産による投資や▽FX取引への参加などを持ちかけるのが特徴です。

国民生活センターも、マッチングアプリなどで出会った人にだまされないためのチェックリストを作って公開しています。

だまされないためのチェックリスト

■相手の特徴
・自称外国人や外国の在住経験がある日本人
・不自然な日本語
・暗号資産やFXでもうけている
・趣味は投資や資産運用・副業で投資をやっている

■連絡の取り方
・マッチングアプリから早々にLINE等のSNSへ変更を提案
・まめな連絡

■投資の誘い文句
・投資に詳しい家族や親戚(知人)の言うとおりに投資すればもうかるよ
・結婚するなら金銭感覚が近い人が良いから、一緒に資産運用しよう
・結婚の資金を貯めるために投資しよう
・豊かな結婚生活のために投資は重要だよ

友人のケースは、このほとんどが該当していましたが、幸い、お金をだまし取られずにすみました。

アレッと思ったら周りに相談を

実は、最初に友人から「素敵な人に出会った」と教えてもらった1週間前、私はたまたま、知人から似たようなケースで詐欺に遭った人がいるという話を聞いていました。

その人はアプリで知り合った人に投資名目でお金を預けたところ、「もうけが出たが、金を引き出すにはお金が必要だ」などと次々とお金を要求され、結果として1400万円だまし取られてしまったそうです。

そのため、私は今回の友人にも「水を差すようで申し訳ないが、最近聞いた詐欺の事案にそっくりだ。実際に彼と会うことができたら、杞憂で済んだでいいかもしれない。でも、この先お金の話が出てきたら、絶対にお金は渡さないでね」と伝えていました。

立正大学 西田公昭教授

西田公昭教授は、“婚活アプリ”はだます側にとっては相手を陥れやすいツールだと指摘します。

自分が真剣に結婚相手を探していると、相手も同じ目的で使っていると思い込みやすい。

そして、やり取りする時間が長くなるほど、その関係を断ち切れなくなっていき、怪しい話でもいいアドバイスをもらったと受け止めてしまうおそれがあるといいます。

今回のことを受けて、友人は「同じような被害に遭う人を少しでも減らせれば」と取材に協力してくれました。

恋愛が絡むとなかなか周りに相談しにくいという人も多いかもしれません。

ただ、恥ずかしがらずに友人に早めに相談できれば、第三者の冷静な視点が入ることで、本人も気付ける可能性が高まります。

なりすましも簡単にできる時代、その相手を本当に信用できるか、一人で抱え込まずにぜひ周りに相談してください。

(10月6日 首都圏ネットワークで放送)