IOC ロサンゼルスオリンピック 追加で野球など5競技の採用決定

IOC=国際オリンピック委員会はインドで開かれた総会で、2028年夏のロサンゼルスオリンピックで実施される追加競技として
▽野球・ソフトボール
▽クリケット
▽ラクロス
▽スカッシュ
▽フラッグフットボール5つの競技を採用することを決めました。

フラッグフットボール スカッシュは初の採用

IOCは16日、インドのムンバイで15日に引き続き総会を開き、今後、予定されているオリンピックの準備状況などについて審議しました。

このうち、2028年にアメリカのロサンゼルスで開かれる夏のオリンピックについては、大会組織委員会が追加競技として提案した
▽野球・ソフトボール
▽クリケット
▽ラクロス
▽スカッシュ
▽フラッグフットボール
5つの競技を実施するかどうか採決が行われました。

採決は5競技一括で行われ、賛成多数で可決されてロサンゼルス大会で採用されることが決まりました。

野球・ソフトボールは、東京大会でも追加競技として実施され、いずれも日本が金メダルを獲得していて、2大会ぶりの実施となります。
▽クリケットは第2回大会以来128年ぶり
▽ラクロスは第4回大会以来120年ぶりで、今回は6人制が採用されました。

▽フラッグフットボール
▽スカッシュ初めての実施となります。

IOCによりますと、追加競技の選手枠は742人分あり、夏の大会の上限とされている選手1万500人の総枠は超えるということで、既存の競技の選手数を削減して調整する見込みだということです。

また、国際競技団体に解決すべき問題があるとして、実施の判断が保留されていた
▽ウエイトリフティング
▽近代五種についても
ロサンゼルス大会で実施されることが決まりました。

このうち近代五種は、乗馬に代わって障害物レースを種目に加えるということです。

一方、IOCが認可した国際統括団体がない状態となっているボクシングは引き続き保留となりました。

《追加競技の採用の経緯と実績》

開催地が追加競技を提案できる制度は、IOCが進めるオリンピック改革の一環としておととしの東京大会から導入されました。開催地に柔軟性や裁量権を与え、大会ごとの独自性や多様性を生み出すことで、立候補地を増やすことがねらいです。

原則、全体の実施種目や選手数の目途を超えない範囲で競技数の上限を撤廃し、開催地の大会組織委員会が自国での人気などを踏まえ、IOCが示した評価基準を基に提案します。

【東京大会:5競技 採用】
▽野球・ソフトボール
▽空手
▽サーフィン
▽スケートボード
▽スポーツクライミング

【パリ大会(2024年):4競技 採用】
▽ブレイキン
▽スケートボード
▽スポーツクライミング
▽サーフィン

この2大会では、いずれも大会組織委員会がIOCに提案した競技のすべてが採用されています。

バッハ会長「プロリーグと連携強化」

総会の2日目の審議を終えた会見したバッハ会長は、2028年夏のロサンゼルスオリンピックの追加競技として野球やクリケットといったプロリーグを中心とした競技が採用されたことについて「中長期のオリンピック改革案に示しているように国際競技団体の協力のもと、プロリーグとの連携も強化していきたいと考えている。バスケットボールでもNBA=アメリカプロバスケットボールそれにFIBA=国際バスケットボール連盟と連携することでオリンピックの活動のなかでも競技の発展に役立つことができている」などと話しました。

また、イスラム組織ハマスとイスラエル軍の衝突が続いていることについて「非道な暴力の犠牲となっている罪のない人たちに心からのお悔やみの気持ちを伝えたい。イスラエルで開催予定だった大会も延期され、イスラエルやパレスチナの選手たちは戦闘状態にさらされ、スポーツ活動を通常のようには続けられない状況にある。この状況が長期にわたる可能性もあるため注視したい」と述べました。

《追加競技 詳しく》

◆「野球・ソフトボール」

オリンピックで野球は1992年のバルセロナ大会から、ソフトボールは1996年のアトランタ大会から正式に採用されましたが、2008年の北京大会を最後に実施競技から除外されました。

それぞれの競技団体は、2013年にWBSC=世界野球ソフトボール連盟を設立し、野球とソフトボールを1つの競技として東京大会で復帰させることを目指しましたが、オリンピック競技としては
▽世界的な普及度が低いことや
▽試合時間の長さ
さらに
▽野球が盛んではないところでは球場を整備する必要があり、大会後の施設の利用も難しいことなどが課題となっていました。

WBSCでは、試合時間短縮のために野球もソフトボールと同じ7イニングで行うことなど改革案を打ち出し、東京大会の実施競技の最終候補に残りましたが、2013年9月のIOC総会での投票の結果、復帰はかないませんでした。

それでも、その後のオリンピック改革の中で開催都市が実施競技を追加提案することが認められるようになり、国内での人気や球場を新規に建設する必要がないことなどを背景に東京大会で3大会ぶりに正式競技として復帰しました。

東京大会では野球は稲葉篤紀監督率いる日本が決勝でアメリカを破り、正式競技としてはオリンピックで初めて金メダルを獲得し、ソフトボールも宇津木麗華監督のもと、エースの上野由岐子投手の活躍などで決勝でアメリカを破り北京大会以来、3大会ぶりの金メダルを獲得しました。

しかし、来年のパリ大会では再び正式競技から除外されていて今回、野球とソフトボールが盛んなアメリカのロサンゼルスで行われる大会で再度、追加競技として復帰するか注目されていました。

【野球・五輪での日本の成績】

東京大会で金メダル(2021年)

オリンピックの野球で日本は公開競技として行われた
▽1984年のロサンゼルス大会で金メダル
▽1988年のソウル大会では銀メダルを獲得しました。

正式競技となって最初に行われた
▽1992年のバルセロナ大会は準決勝で台湾に敗れましたが銅メダルを獲得。
▽続く1996年のアトランタ大会では決勝でキューバに敗れ、銀メダルでした。

▽2000年のシドニー大会から初めてプロ選手の参加が認められ、史上初めてプロ・アマ合同チームで臨みましたが、準決勝でキューバに敗れ、3位決定戦でも韓国に敗れて4位となり、公開競技の時代を通じて初めてメダル獲得を逃しました。

▽2004年のアテネ大会では長嶋茂雄さんを代表監督に選び、初めてメンバー全員をプロの選手で固めましたが、長嶋さんは脳梗塞のため本番の指揮をとることができず、大会は中畑清ヘッドコーチのもと戦い、準決勝でオーストラリアに敗れて銅メダルでした。

▽2008年の北京大会では星野仙一監督の指揮のもと準決勝に進みましたが韓国に敗れ、3位決定戦でもアメリカに敗れてメダルを獲得できませんでした。

▽3大会ぶりに追加競技として復活した2021年の東京大会では稲葉篤紀監督が正式競技で初めてとなる金メダル獲得に導きました。

【ソフトボール・五輪での日本の成績】

東京大会で金メダル(2021年)

ソフトボールは1996年のアトランタ大会で初めて採用され、2008年の北京大会までと2021年に東京大会の5つの大会で実施されました。

日本は、5大会すべてに出場しています。

▽最初のアトランタ大会では、4位に終わってメダルを獲得することはできませんでした。

▽続く、シドニー大会では宇津木妙子監督のもと、当時112連勝中だったアメリカに勝つなど快進撃を続け、全勝で予選リーグを突破しました。しかし、無敗のまま進んだ決勝では、アメリカに延長戦の末サヨナラ負けし、銀メダルでした。

▽再び、宇津木監督が指揮した2004年のアテネ大会では、エースの上野由岐子投手が予選リーグの中国戦で、オリンピックで初めてとなる完全試合を達成し、3大会連続で決勝トーナメントに進みましたが、銅メダルに終わりました。

▽実施競技から除外されることが決まったあとに行われた2008年の北京大会では、3大会連続で金メダルを獲得しているアメリカに予選リーグ、準決勝と連敗しました。それでも、斎藤春香監督のもと他の試合はすべて勝ち、アメリカと3回目の対戦となった決勝では、エースの上野投手が前日の2試合も合わせて、2日間で413球を投げる熱投でアメリカの反撃を1点に抑えて3対1で勝ち、悲願の金メダルを獲得しました。

▽追加競技として復活した2021年の東京大会では宇津木麗華監督が指揮し、決勝のアメリカ戦ではチーム最年長となった当時39歳の上野投手とチーム最年少、当時20歳の後藤希友投手の2人のピッチャーの好投で2対0で勝ち、13年前の北京大会以来となる金メダルを獲得しました。

◇クリケット


クリケットはイギリス発祥の球技で世界の競技人口は3億人以上に上り、サッカーに次ぐ第2位と言われています。

長さおよそ20メートルの『ピッチ』と呼ばれる長方形のスペースで、投手がワンバウンドで投げたボールを打者が打ち返し、打球が処理される間に打者がピッチの端から端までを走って得点します。

1チーム11人で対戦して規定のアウト数を取られる間に、より多くの得点を取ったほうが勝ちとなりますが、形式によっては試合時間が7時間のものや数日間に及ぶものもあります。

過去のオリンピックでは、1900年のパリ大会で実施されましたがその後は行われず、近年は、競技団体がTwenty20という競技時間が3時間ほどに収まる方式でオリンピック競技への採用を目指していました。

ヨーロッパやインド、オーストラリアなどでも盛んに行われていますが、日本では競技人口が4000人ほどにとどまっていて、日本クリケット協会はオリンピック競技への採用を普及につなげたいとしています。

◆ラクロス

ラクロスは、北アメリカが発祥の球技で1チーム10人制と6人制があり、選手は先端に網のついたアルミニウム製の『スティック』を持ち、直径6センチのボールを奪い合って相手のゴールに入れて得点を競います。

男子のシュートは、時速150キロを超え、日本では主に大学スポーツとして人気を集めていて、競技人口は1万3000人ほどです。

オリンピックでは1904年のセントルイス大会と1908年のロンドン大会で行われました。

その後、公開競技として行われた大会もありましたが、アメリカでは、バスケットボールやフットボールなどとならんでラクロスも盛んで、ロサンゼルス大会では6人制を提案し、正式競技としての採用を目指してきました。

◇スカッシュ

スカッシュはイギリス発祥の球技で、4面を壁に囲まれたコートの中でラケットを持ち、ゴムでできたボールを1対1で打ち合います。

ボールのスピードは最速で時速200キロに達し、1ゲーム11点先取で5ゲームを行い、先に3ゲームを取ったほうが勝ちとなる形式で行われます。

世界の185の国でおよそ2000万人がプレーしているとされています。

オリンピックでは、2012年のロンドン大会から、リオデジャネイロ大会、東京大会、さらにパリ大会と、実施競技の候補に挙がりながら落選が続いてきましたが、ロサンゼルス大会で初めて採用されることになりました。

◆フラッグフットボール

フラッグフットボールは、アメリカンフットボールのルールをベースに、タックルなどの接触プレーの代わりに腰の左右につけた『フラッグ』を取り合うことで安全性を高めた競技です。

老若男女が楽しめるスポーツとして日本でも人気が高まっていて、国内の競技人口はおよそ3000人です。

試合は5人対5人でオフェンス側とディフェンス側に分かれ、オフェンス側には4回の攻撃機会が与えられて、ボールを持って走ったりパスを回したりしながらタッチダウンを目指します。

反対にディフェンス側はボールを持った選手の腰のフラッグを奪うか相手のパスをカット、もしくはボールを持った選手をサイドラインから外に追いやれば相手の攻撃機会を1回減らすことができます。

戦略が重要なスポーツで、オフェンス側には攻撃の機会がくるたびに作戦を考える時間が与えられます。

こうしたことから「コミュニケーション能力」と「思考判断力」、そして「体力」を同時に育むことができるとして、日本では令和2年度から小学校の体育の授業に本格的に取り入れられています。

《関係者の反応は》

プロ野球 榊原コミッショナー「関係者にとって誠に大きな喜び」

プロ野球の榊原定征コミッショナーは「野球競技関係者にとって誠に大きな喜びとするところであります。東京大会の試合を通して、世界中でたくさんの皆さんが、すばらしいプレーや相手チームに対する信頼と尊敬に心を打たれ、深く感動されたことと思います。ロサンゼルスオリンピックに各国を代表して参加されるチームの皆さんが、その卓越した技量を通じて様々な興奮と感動をもたらし、野球の魅力が世界中の人々にもっと広く認知され、受け入れられることを心から願っております」とコメントしています。

全日本野球協会 山中会長「最強チームで金メダルを」

決定を受けた会見で山中会長は「大変うれしく思う。オリンピック出場までには予選もあって本当に大変だと思うが、そのためにもプロアマ一緒になって最強のチームを編成して金メダルを目指したい」と喜びを語りました。

また、前回の東京大会以来、2大会ぶりにオリンピックで野球が行われることについては「野球人口の減少には2008年の北京大会のあと2021年の東京大会までオリンピックで野球がなかったことも影響している。ロサンゼルス大会でもWBC=ワールド・ベースボール・クラシックと同じようないい野球をして、2032年のブリスベン大会につなげていくのが使命だ」と話し、オリンピックでの実施を野球の普及につなげていきたい考えを示しました。

東京五輪 日本代表監督で金 日本ハムの稲葉GM「大変喜ばしい」

おととし行われた東京オリンピックで、日本代表の監督を務めて金メダルを獲得した日本ハムの稲葉篤紀ゼネラルマネージャーは球団を通じて、「2028年のロサンゼルスオリンピックで野球競技が追加されたことを野球人の1人として大変喜ばしく思います」とコメントしました。

そのうえで、「東京オリンピックで日の丸を背負って一丸となった選手たちの姿は本当にすばらしいものでした。オリンピックという舞台で野球競技が行われることで、野球の魅力が世界に伝わり、野球に興味を持つ子どもたち、応援してみたいと思う方々が増えることを期待しています」としています。

大リーグ シーズンMVP2回 ハーパー「オリンピック出場は夢」

2028年のロサンゼルスオリンピックで2大会ぶりに野球が採用されたことを受け、大リーグでシーズンMVP=最優秀選手を2回受賞しているフィリーズのハーパー選手が「オリンピック出場は夢だ」と話し、現役のトップ選手が早速大会への参加を希望しました。

ハーパー選手は大リーグ通算で306本のホームランを打っている強打者で、2015年とおととしにはナショナルリーグのシーズンMVPを受賞しています。

16日が31歳の誕生日だったハーパー選手は、2028年のロサンゼルスオリンピックに野球が採用されたことについて「5年後にはかなり年をとっているからチームが僕を必要としてくれるかどうかは分からないけれど、オリンピック出場はずっと夢だった。最高の舞台で、USAを胸に付けてプレーしたい」と話し、大会への参加を希望しました。

ハーパー選手は去年11月に右ひじのじん帯を修復するトミー・ジョン手術を受けたため、ことし3月のWBC=ワールド・ベースボール・クラシックのアメリカ代表は辞退しました。

ハーパー選手はオリンピックがWBCとは異なり大リーグのシーズン中に開催されることについては「アイスホッケーのNHLのように、リーグ中断の期間を設ければいいのではないか」と提言し、過去に冬のオリンピックでトップ選手が代表チームに参加したNHL=北米プロアイスホッケーリーグのケースを例に挙げていました。

日本ソフトボール協会「北京 東京につぐ連続金メダルを」

日本ソフトボール協会は「大変うれしく興奮しています。東京オリンピックで金メダルを獲得しましたが、パリオリンピックでは採用外となって、残念な思いをしていました。東京オリンピック金メダルの瞬間での震えるような感動が今、再び胸の中によみがえっています。選手たちにとって大きな夢が膨らんだことと思います。北京、東京につぐ、連続金メダルを目指し、強化を進めていきたいです」とコメントしました。

日本クリケット協会 宮地事務局長「取り組みを高めたい」

栃木県佐野市は、10年以上前からクリケットの普及にまちぐるみで取り組んでいて、2010年から日本クリケット協会の本部が置かれているほか市内には日本で初めての全面天然芝のクリケット専用のグラウンド「佐野市国際クリケット場」が整備されています。

16日は午後2時から協会の関係者や選手などおよそ20人がグラウンド脇の建物に集まって、インターネットで中継されるIOC総会の様子を見守りました。そして、午後5時前にクリケットが追加競技に正式に採用されることが決まると「おー」という歓声がわき会場は大きな拍手に包まれました。

採用決定の瞬間を見届けた元プロ野球選手でクリケット日本代表の木村昇吾選手は「うれしいです。日本のクリケットはこれからなので、頑張りたいです」と話していました。

日本クリケット協会の宮地直樹事務局長は記者会見で「クリケット競技にとって大きな追い風になると思う。今後、オリンピックという新たなステージを目指せるよう選手の育成など、さまざまな取り組みを高めていきたい」と話していました。

クリケット練習していた中学生「出場したい」 栃木 佐野

クリケットの普及にまちぐるみで取り組んでいる栃木県佐野市では、16日夜も地元の中学生や高校生でつくるクリケットチームの練習が行われ、子どもたちは互いに声をかけあいながら、ボールを打つなどしていました。

佐野市にある日本クリケット協会によりますと市内では、体育などの授業中にクリケットを行う学校もあるということで、子どもから大人まで、多くの人が競技に親しんでいるということです。

練習をしていた中学3年の生徒は「オリンピック競技に選ばれたと聞いて、びっくりしました。いずれ自分も日本代表になってオリンピックに出場したいです」と話していました。

また、高校1年の生徒は「うれしいです。世界ではメジャーなスポーツだと思うので、これを機に、日本でも広がっていくといいと思います」と話していました。

スカッシュ 全日本選手権優勝 机龍之介「きょうがスタート」

日本スカッシュ協会の強化指定選手6人は、東京都内でIOCの総会を見守り追加競技に決まると、ハイタッチや握手などをして喜びを分かち合いました。

このあと選手たちが取材に応じ、ことし3月の全日本選手権で優勝した26歳の机龍之介選手は「スカッシュがオリンピック競技になったという実感はまだないがスカッシュにとっても僕にとってもきょうがスタートだと思っている。出場してメダルを獲得できるように頑張っていきたい」と話しました。

競技の魅力については「スカッシュは老若男女問わず楽しんでいる人がいて、トップの選手になるととても激しいスポーツになる。見るスポーツとしても非常におもしろいと思う」とアピールしていました。

また、今月、中国で行われたアジア大会で、日本選手として初となる銅メダルを獲得した24歳の渡邉聡美選手はイギリスの大学に通っているためオンラインで取材に応じ「オリンピック競技に追加されることをずっと待ち望んでいた。ことばにするのが難しいくらいうれしい。今、やっと世界のトップ選手と戦えるところまできたので、しっかりこの5年で上に立てるスカッシュを学んでメダル圏内に入りたい」と語りました。

そしてスカッシュの見どころについて「壁を使うので、ボールがどこから飛んでくるかわからない変幻自在なスポーツだ。スピードとパワーがある、躍動感いっぱいなところを見てほしいと思う」と話していました。

日本フラッグフットボール協会 岡出表理事「現実的な目標に」

2028年夏のロサンゼルスオリンピックで実施される追加競技として、フラッグフットボールが採用されたことを受け、日本代表の選手たちは「オリンピック出場が現実的な目標になった」と5年後に向けた意気込みを話しました。

日本フラッグフットボール協会の関係者や日本代表選手などおよそ10人は、都内の会場でIOCの総会を見守りました。

そして、フラッグフットボールが追加競技に採用されることが決まると、拍手をしたり握手を交わしたりして喜びを分かち合っていました。

このあと会見した協会の岡出美則代表理事は「これまでの関係者の尽力が思い出されて喜ばしいのと同時にこの決定に対して私たちがどういうふうに責任を持てるのかが問われる次のステージに進んだと思う」と気持ちを新たにしていました。

男子日本代表のキャプテンを務める植松遼平選手は「選手として言い表しがたい高揚感を覚えている。オリンピックに出て結果を出せるようにより一層、気を引き締めて取り組んでいきたい」と話しました。

また、女子日本代表の近江佑璃夏選手は「決まるまでは夢を見ているような感覚だったが、きょうの決定でオリンピック出場が現実的な目標になったと強く感じる。女子は男子よりもさらにマイナーなので、これを機に競技が発展していくとうれしい」と話していました。

フラッグフットボールの高校生「金メダル目指したい」 福岡 糸島

福岡県糸島市で20年間活動し、全国大会優勝の実績があるフラッグフットボールチーム「マッスル糸島」では16日、在籍する小学生から社会人の選手およそ30人が練習を行い、追加競技への採用が決定したことについて喜びの声が聞かれました。このうち、福岡市の高校2年生、有田陽奈選手は、小学3年生から競技を始め、ことし7月の国際大会では17歳以下の日本代表として銀メダルを獲得しました。

有田選手は「オリンピック競技に採用されることをずっと望んでいたので、うれしいという感情しかない。努力して技術も高めてオリンピックの代表に選ばれるよう頑張りたい。金メダルを目指したい」と話していました。

また、2018年の国際大会の日本代表に選ばれた経験を持つ青木真人さんは「海外の選手とオリンピックで戦うのは興奮すると思うのでチャレンジしてみたいが、応援する立場になっても楽しみだ。競技を盛り上げていくという気持ちも高まっている」と話していました。

日本ラクロス協会 佐々木理事長「認知度を広げるインパクトに」

日本ラクロス協会の佐々木裕介理事長は「オリンピック競技に復帰するという、新しい挑戦の機会を得ることができ、すべての関係者にお礼を申し上げたい。去年のワールドゲームズで男子が銅メダルを獲得するなど日本は強豪国の一角を占めている。競技力を着実に高めてきた日本のラクロスがどのようなパフォーマンスを発揮できるのか、楽しみながら真摯(しんし)に取り組んでいきたい」と話しました。

また、オリンピックでの採用が今後の普及や強化に与える影響について、佐々木理事長は「“地上最速のスポーツ”とも呼ばれるラクロスが、認知度を広げていく大きなインパクトになる。特に小中高生の若い世代にラクロスが広がっていき、国内の競技基盤を固めた結果、日本代表が活躍してくれればそれが一番うれしい」と展望を語りました。

【取材記者の見方は】大谷翔平などトップ選手参加できるか

オリンピックで2大会ぶりに採用された野球をめぐっては、エンジェルスの大谷翔平選手など大リーグのトップ選手たちが参加できるかどうかが注目されています。

WBSC=世界野球ソフトボール連盟のフラッカリ会長は「世界中のリーグと話し合い、プロフェッショナルな大会にすることで合意し、選手会からも賛同してもらっている」と話していますが、実際にトップ選手が参加するためには、どのようなハードルを乗り越えなければならないのか、大リーグを取材する記者に聞きました。

大リーグ機構などが運営する放送局「MLBネットワーク」のジョン・モロシ記者は、1週間程度であれば大リーグを中断することが可能だという見方を示しました。

MLBネットワーク ジョン・モロシ記者
「トップ選手の参加は可能だと思う。大会はおそらくロサンゼルスのドジャースタジアムで開催されると思うが、リーグが1週間の非常に短い休みを設け、その間にオリンピックのトーナメントを開催すればいい」

今後は大リーグ機構と選手会、IOC、それにWBSCの4者間での話し合いが重要になるとしたうえで、トップ選手の参加に好意的でした。

MLBネットワーク ジョン・モロシ記者
「2026年に大リーグ機構と選手会の今の労使協定が切れたあと、次の協定の一部に含まれる話になるので実現できるかはまだ先の話だ。ただ、WBCの時の大谷対トラウトのようなシーンをみんなもう一度見たいと思っている。トップ選手の参加が野球界の成長にどれほど役立つかを理解しているので、非常に楽しみだ」

一方、アメリカの全国紙、USAトゥデーのボブ・ナイチンゲール記者は、東京大会では11日間にわたって野球が行われたことを前提に、否定的な見方を示しました。

USAトゥデー ボブ・ナイチンゲール記者
「どのチームもマイナーリーグの選手の出場は許可するだろうが、大リーグの選手のプレーはこれまでどおり許可しないだろう。2週間もリーグを中断すればシーズン終了は11月中旬か下旬にずれ込むことになるし、7月中旬にあるオールスターゲームもできなくなる。選手たちもオリンピック期間中の給料を放棄しないだろう」

ナイチンゲール記者が指摘するように、2000年のシドニー大会からプロ選手の参加が認められたあとも、大リーグ機構は全30球団の40人枠に入っている選手たちの参加を認めたことはありません。

このためオリンピックで野球のアメリカ代表は傘下のマイナーリーグの若手選手を中心に構成されていますが、シドニー大会は金メダル、2008年の北京大会は銅メダル、前回の東京大会は銀メダルと一定の成績を残しています。

ただ、モロシ記者の言うようにオリンピックや野球界全体の盛り上がりのためには、ことしのWBCのようにトップ選手の参加が不可欠なのも事実で、シーズンまっただ中に開催されるオリンピックに大リーグの選手たちが参加するには、現状の課題を乗り越える大胆な仕組み作りが求められることになりそうです。