コメの取り引き「現物市場」開設 価格決定の透明性に期待

相対での取り引きが主流のコメについて、生産者と卸売業者などが参加し需要と供給に基づいてオープンな形で価格を決める「現物市場」が16日、開設されました。取り引きが活発に行われ、コメの価格決定の透明性につながるか注目されます。

新たに開設されたコメの現物市場「みらい米市場」は、民間のシンクタンクやコメの卸売業者などが出資した会社が運営します。

専用のサイトを通じて、生産者などが希望価格や販売数量を示したコメを出品し、一定の期間内にもっとも高い価格を提示した卸売業者などが競り落とす形で取り引きが行われます。

コメの取り引きは、JAグループなどの集荷業者と、卸売業者が相対で価格を決めるのが主流ですが、需要の動向を踏まえて生産を進めたり、価格の透明性を高めたりするためには、価格の指標となる現物市場が必要だという指摘が上がっていました。

このため、農林水産省も現物市場の開設を後押ししていて、別の会社も12月の取引開始を目指して準備を進めています。

16日、開設された市場の運営会社は、最初の1年間で2万トンの取り引きを見込み、5年後には10万トン程度にまで増やしたいとしていて、取り引きが活発に行われ、コメの価格決定の透明性につながるか、注目されます。

「みらい米市場」の折笠俊輔社長は「コメの価格は、生産者や業界が持続可能な形で価格形成ができているかが課題だった。生産者が自分で価格を決め、付加価値や苦労が反映されるような市場を作りたい」と話していました。

「現物市場」メリットと今後の課題

戦後長らく、国が決めていたコメの価格は、現在、自由化されていて、JAなどの集荷業者と卸売業者の間で、相対で決めるのが主流となっています。

この相対の取引価格は、JAなどがコメを集荷する際に、農家に支払う「概算金」と呼ばれる前払い金の額に影響され、必ずしも需要と供給の状況を反映していないとか、価格決定の透明性が不十分だといった指摘が上がっていました。

こうした状況を改善するため農林水産省は、検討会を設置するなどして、コメをオープンな形で取り引きする、現物市場の開設を後押ししてきました。

16日開設された現物市場では、産地や品種、栽培方法といった情報をもとに取り引きが行われるため、どの品種が人気かなども把握しやすくなります。

運営会社では、現物市場での取り引きが活発になれば、農家が人気の高い品種の生産に取り組むようになるなどの効果が期待できるとしています。

また、農家が企業などに直接、販売できるメリットもあるとしています。

ただ、コメの市場については、先物取引を試験的に行っていた大阪堂島商品取引所がおととし「取り引きに参加する生産者や流通業者が増えず、認可の基準を満たしていない」などとして、農林水産省から本格的な取り引きに必要な認可が受けられず、廃止になっています。

いわゆる“コメ離れ”で需要が低下する中、新たな現物市場が、十分な取引量を確保することで、価格の目安としての役割を果たすことができるかが今後の課題となります。