コントラバス 電車で運ぶと迷惑?

コントラバス 電車で運ぶと迷惑?
電車で大きな手荷物を運ばなくてはいけないとき、あなたならどうしますか。

楽器、部活で使う道具、大型のスーツケースなど…。迷惑かもと思いながら電車で運んだ経験がある人も多いと思います。

中でもとくに大きな弦楽器、コントラバスを電車で運ぶことについて、SNSで議論になっているんです。

そもそも電車で運べる手荷物とは?あらためて調べました。
(おはよう日本 橋本亮 / ネットワーク報道部 鈴木彩里、谷口碧)

ほかの乗客とぶつかる 批判も

コントラバス奏者の石塚廉さん(28)。

先月30日、コントラバスを電車で運ぶことについてSNSに投稿しました。
「ハードケースより少し小さいセミハードケース(合計25kg)で楽器を運んでいる図です。これ持って満員電車乗っていいですか?」

投稿には450件を超えるコメントが寄せられ、理解を示す内容の一方で、「この大きさは持ち込み不可では」「なんで車使わないの?」など批判的な内容も相次ぎました。
石塚さんがこの投稿をしたのには理由がありました。

前日に別のコントラバス奏者が電車で楽器を運ぼうとしたら、ほかの乗客とぶつかって一部のパーツが外れたと投稿。

これに対しても
「邪魔やん」
「そんな大事なら最初っから混んでる電車に乗らないほうがいいんじゃないですか?」
「ハードケースに入れてないんですか?いつもソフトケースに入れているんですか?」
といった批判的なコメントが相次いでいたのです。

“楽器を蹴られたことも”

石塚さんは中学校の部活でコントラバスを始めて高校、大学と続けてきました。

大学時代は親の車を借りて楽器を運ぶこともありましたが、電車や新幹線を使って自力でコントラバスを運ばないといけないケースも多かったといいます。
石塚廉さん
「僕らからしたら大事なものであってもほかの人から見たらただの荷物だし、あれだけ場所を取ってるんだから邪魔に決まってるんですよね。それは僕自身も思います。他人の迷惑にならないことと自分の楽器を守るという2点で見れば、当然混雑している時間帯や場所は避けるべきです。どうしてもその時間に乗らなきゃいけないなら、なるべく空いているところに乗るなど、考えながら気を遣って乗っています」
石塚さんはこれまで電車に乗っているときに楽器を蹴られたり「邪魔」と言われたりする経験もしてきましたが、今回の投稿への反応にも心を痛めていました。
「コントラバスの事情を知っている人は『そうだよね、分かるよ』っていう反応がほとんどでしたが、そうでない人は『そもそもなんであんな大きい物を持って電車に乗るの?』って意見がほとんどだったんです。そういう反応が来るだろうなって想像はしていましたが、やっぱり改めてこんなにあるんだって思ってショックでしたね。いかに自分が知ってる世界が狭くて周りからどう思われているか分かってないかというのを改めて痛感しました」

電車の手荷物 ルールは?

そもそも電車にはどのぐらいの大きさの手荷物まで持ち込むことが認められているのか。首都圏や関西の鉄道各社に問い合わせました。

JR東日本によりますと、電車内に持ち込める手荷物の大きさについては、規則で細かく定められているということです。
持ち込める荷物の原則はJR東日本では、▽縦・横・高さの合計2.5メートル以内▽重さ30キロ以内▽長さは2メートル以内で2個までとなっています。
ただし長さが2メートルを超えるものであっても、スポーツ用品、楽器、娯楽用品などで、車内に立てて携帯できるものは持ち込むことができるということです。

この規則に基づくと、コントラバスは電車で運ぶことが可能でした。

それ以外にも2メートルを超える筝(こと)や、弓道部の学生が使う弓、サーフボードなども専用の袋やケースなどに収納すれば持ち込めるということです。

ほかの鉄道各社も基本はJRの規則と同じでした。

ただ注意が必要なのが長さ2メートルを超えるもの。鉄道会社の一部では、この点については立てて携帯できたとしても、原則持ち込みを認めていないところもありました。
また、各社とも電車内がかなり混雑している時など、ほかの乗客の迷惑になる場合は規則の範囲内でもあっても大型の荷物の持ち込みを断る場合があるということでした。

車内に持ち込んでいいか迷ったら、各社の駅の窓口などで聞いてほしいということです。

事故が起きたことも

原則持ち込める大型の楽器などの荷物ですが、事故が起きたケースもありました。
去年10月、東京・調布市にある京王電鉄の仙川駅で撮影された写真です。駅のホームにあるエスカレータと天井に、長さ2メートルを超える筝とみられる楽器が挟まっています。

京王電鉄によりますと、この事故によるけが人はいませんでしたが、エスカレーターのステップ部分が数枚、破損したということです。

京王電鉄では大きな荷物、長い荷物を持っている時は、周りの乗客や施設に接触しないよう注意してほしいと呼びかけています。

安心して運ぶためには

原則持ち込めるものの、事故やトラブルを防ぐためにも、周囲への配慮は必要な大きな楽器などの手荷物。
音楽大学やプロのオーケストラにもどうやって運んでいるかを聞いたところ、基本はトラックなど車で運ぶことが多いということです。

ただ中学生や高校生などの中には、どうしても電車で運ばざるを得ないケースもあるということで、そういう時には基本は混雑する車両や時間を避け、トラブルが起こらないよう配慮しているということでした。
コントラバス奏者の石塚さんは現在、ドイツの音楽学校に留学しています。ドイツの電車では荷物置き場がある車両もあるなど周囲の理解もあり、電車に乗ることへの心理的なハードルは低いといいます。
石塚廉さん
「大きい荷物を持って乗っているという謙虚さは絶対に必要だと思います。ただ必要だから運んでいるのだし、学生たちは電車で楽器を運ぶことに罪悪感を感じなくて済むようになればいいと思います。今回の議論をきっかけに、少しでも理解が広がってほしいです」
私(記者)も高校や大学時代に弓道部に所属していたので、2メートルを超える弓を持って、よく電車に乗っていました。

電車に乗るときにはできるだけ部員全員の弓を1か所に束ねて隅に置くなど、ほかの乗客の邪魔にならないようにと思っていましたが、嫌な顔をされたこともありました。

今回の取材を通して、大きな物を持ち込む人たちは「できるだけ迷惑をかけないようにしよう」「満員電車は避けよう」と考えている人がほとんどだと思いました。

トラブルや思わぬ事故を防ぎ、安心して利用するためには
▽ルールを正しく理解する。
▽大きな荷物を持つ人と居合わせた人の双方が配慮して思いやる。
当たり前かもしれませんが、この2つが大切なのだとあらためて感じました。
おはよう日本
橋本亮ディレクター
2019年入局
学生時代はボート部。地方だったので移動はいつも自転車でした。
ネットワーク報道部
谷口碧記者
2016年入局
学生時代は弓道部。試合が多いときは毎週のように弓を持って電車移動していました。
ネットワーク報道部
鈴木彩里記者
2009年入局
高校は弓道部。家の近所に弓道場があるので、弓を持った人を見かけると優しくしたい気持ちになります。