豪 先住民の声政策に反映の機関創設 国民投票 反対多数で否決

オーストラリアで、先住民の声を政策に反映しやすくするための機関の創設などを含む憲法改正の是非を問う国民投票が行われましたが、反対多数で否決されました。

アボリジニの人たちなど、オーストラリアの先住民をめぐっては、1970年代まで差別的な政策がとられるなどした結果、いまも世帯収入や教育水準が低く、平均寿命も短いなど、格差が解消されていません。

今回の国民投票では▽先住民の声を政策に反映しやすくするための専門機関の創設を憲法に盛り込むことや▽オーストラリアの「最初の人々」であると明記することの是非が問われました。

オーストラリアの選挙管理委員会によりますと、開票作業はほぼ終了し、賛成がおよそ40%、反対がおよそ60%と反対多数で否決されました。

今回の国民投票をめぐってはことし初めには世論調査で賛成が上回っていましたが、▽専門機関の権限が明確ではないとか、▽先住民を優遇することになり、国民の分断につながるなどといった批判が高まっていました。

国民投票を重要政策の1つとしていたアルバニージー首相は結果を受けて「望んだ結果ではないが、国民の決断を尊重する。今回、活性化された議論により、新しい世代の先住民のリーダーが生まれることを期待したい」と述べました。

多文化共生を掲げるオーストラリアですが、国民投票をめぐっては国民を二分する議論となり、先住民をめぐる課題解決の難しさが浮き彫りになりました。

専門家「過度な優遇 危惧」

オーストラリアの先住民をめぐる問題に詳しい筑波大学の堤純教授は、今回の国民投票が行われた経緯について「与党・労働党は、先住民の権利を重視する政策を行ってきた。そして、この国民投票はアルバニージー首相が就任当初から訴えて実現したものだ」と話しました。

国民投票が近づくにつれて反対が増えていった背景については、先住民の声を反映しやすくする専門機関の設置に懸念を持つ人が多かったとしたうえで「先住民が過度に優遇され、自分たちに使われる予算が少なくなるのではないかという危惧を持つ人はいる。高齢の人は、自分たちが苦労して築き上げてきた社会について、先住民の土地を取り上げてできた社会だとは認めにくい」と指摘しています。

一方で、国民投票を行うことで先住民が置かれた状況などが改めて明らかになったとして「先住民と白人を中心とする社会のメインストリームの間にはまだ問題があるということが認識された。こうした問題が広く議論されたことは意義があったと思う」と述べました。