医師の時間外労働 年間960時間超が2割 去年の勤務実態調査

来年度から医師の働き方改革が本格的に始まるのを前に、去年行われた医師の勤務実態調査の結果が公表され、時間外や休日労働の時間が来年度以降、「上限」の一つとなる年間960時間を超える医師の割合は4年前より減少したものの、依然として2割に上っていたことがわかりました。

医師の働き方をめぐっては来年4月から、患者の診療にあたる勤務医に対して、労働基準法に基づき、休日や時間外労働の上限規定が適用されます。

これを前に、12日、厚生労働省の検討会が開かれ、去年行われた医師の勤務実態調査の結果が公表されました。

この中で、休日や時間外労働時間が年間に換算すると
▽960時間の上限を超える医師の割合は全体の21.2%
▽1920時間を超える医師は3.6%いることがわかりました。

4年前の同様の調査より16.6%と4.9%、それぞれ減少したものの、依然、長時間労働が課題となっています。

一方、働き方改革と地域医療体制の維持との両立が課題となる中、地域医療で中心的な役割を担う医療機関への調査では、来年4月時点で、大学病院の医師の引き上げにより診療機能に支障が出ることが見込まれる医療機関の数は、46の都道府県であわせて「30」あったということです。

検討会で委員からは「単に労働時間を短縮するのでなく、現場の医師がワークライフバランスを実感できることが重要だ」とか、「“自己研さん”の時間が適切に勤務時間と認められているのか見直す必要がある」といった意見が出されていました。

来年4月に向けて、各地の医療機関は労働時間短縮に向けた計画をまとめていて、国は研修会などを通して今後、さらに長時間労働の是正に向けた呼びかけを進めることにしています。

検討会の委員「実際の業務量を減らせているか注視」

検討会の委員を務める、京都大学医学教育・国際化推進センターの片岡仁美教授は「労働時間数が減ってきたのは、現場の意識が変化した表れだと思うが、依然として長時間労働をしている医師もいて、時間短縮への意識が優先される中で、実際の業務量を具体的に減らせているのかを注意深く見ていく必要がある」と指摘していました。

その上で、「持続可能な地域医療の体制を確保するために、まだ超えていかなければならないステップがあり、そのつど、課題が見えると思う。変化に伴う混乱も生じるおそれがあるので、広く国民に理解される“働き方改革”にしていくのが重要だ」と話していました。