【13日詳細】イスラエル軍 ガザ地区北部の人々に退避通告

イスラエル軍は、パレスチナのガザ地区北部に住む100万人以上の人々に対し24時間以内に地区の南部に退避するよう通告しました。
近く地上侵攻を含む大規模な軍事作戦を実行に移すものとみられ、情勢が一層緊迫しています。

※13日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

ハマスが今月7日にイスラエル側に大規模な攻撃をしかけたことを受け、イスラエル軍は報復作戦として、ハマスが実効支配するガザ地区への激しい空爆を続けていて、双方の死者があわせて3000人を超えました。

こうした中、イスラエル軍は、ガザ地区の周辺に大規模な部隊を展開させ、地上侵攻も辞さない姿勢を強めています。

一方、ハマスはこれまでにイスラム教徒が集団礼拝を行う金曜日にあわせてパレスチナ人や周辺のアラブ諸国を含め、世界の人々に対し、連帯を示して抗議行動に加わるよう呼びかけています。

緊迫の度合いが増すなか各国がチャーター機などを用意して自国民をイスラエルから国外に退避させる動きもでています。

ロイター通信によりますとフランス政府は、国外への退避を希望したフランス人およそ380人をチャーター機で退避させ、12日、パリに到着しました。

また、アメリカ・ホワイトハウスも退避を希望する自国民のために13日からチャーター機を用意すると発表しました。このほか、車や船などを使った退避についても検討しているとしています。

双方の死者 3000人超に

パレスチナの保健当局は13日夕方、ガザ地区でこれまでに1799人が死亡したと発表しました。

一方、イスラエル軍はイスラエル側でこれまでに少なくとも1300人が死亡したと発表しています。

イスラエル側とパレスチナ側をあわせた双方の死者は3000人を超えました。

イスラエル軍 ビラ投下し南部への退避呼びかけ

イスラエル軍はガザ地区の住民に向けて航空機からビラを投下し、南部への退避を呼びかけています。

13日にガザ市内で撮影された映像では投下された大量のビラが空を舞い、太陽の光が反射してキラキラと光っているのが確認できます。

ビラにはアラビア語で住民への呼びかけが書かれていて「テロ組織はイスラエルに対して戦争をはじめ、ガザ市は戦場となった。直ちに自宅を出て、ワディ・ガザの南に向かえ」としています。

そのうえで「イスラエル軍からのさらなる通告があるまで、自宅に戻るな。ガザ市内にあるすべての避難所から立ち去り、境界には近づくな。近づく者は、命を危険にさらすことになる。あなたたちの安全のため、直ちに自宅から退避し、ワディ・ガザの南に向かえ」と警告しています。

イラン外相 ヒズボラ指導者と会談しイスラエルをけん制

イランのアブドラヒアン外相はレバノンを訪れ、イランが後ろ盾となってともにイスラエルと敵対してきたイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師などと13日、会談し、地上侵攻を含む大規模な軍事作戦を実行に移す構えを見せるイスラエルをけん制しました。

アブドラヒアン外相は声明を出し「人々は戦争が地域に広がり、新たな戦線が開かれることを恐れている。イスラエルが犯罪をやめなければ、何が起きるかわからない」と警告しました。

その上で「アメリカはみなに自制を呼びかけながら、イスラエルには兵器を提供してネタニヤフが犯罪を続けるのを放置している」と述べ、イスラエルを支援するアメリカの対応も、強く非難しました。

一方、レバノンの国営通信はナスララ師の発言について、「イスラエルによってガザ地区の人々に対して行われている残忍な犯罪や今後、起こりうる結果について意見を交わした」と伝えています。

これに先立ち、アブドラヒアン外相は12日、イラクを訪れ、スダニ首相などと会談したほか、レバノンに続いてシリアを訪れる予定で、イランと関係の深い国や勢力と連携してイスラエルをけん制するための外交攻勢を活発化させています。

専門家「イスラエル軍地上部隊の侵攻 現実味おびてきた」

イスラエル軍がガザ地区北部の住民に対し、24時間以内に地区の南部に退避するよう通告したことについてパレスチナ情勢に詳しい東京大学の鈴木啓之特任准教授は、「イスラエルの軍事行動の段階が1つ上がるという合図で、地上部隊の侵攻が現実味をおびてきたと理解すべきだ」と述べ、地上侵攻が差し迫っていると指摘しました。

地上侵攻のタイミングについては「24時間の退避期限を迎えた時点で始まる可能性も真剣に考えなければならない」と述べました。

一方「ガザ地区は世界でも有数の人口密度で、100万人を超える避難民が逃げ込める建物や、仮住まいできるスペ-スはない。避難できない人々が家屋に残されたまま地上侵攻が行われることが推測される」と述べ退避が可能かは疑問が残るとしています。

また地上侵攻が始まった場合について「現在展開している部隊などから、イスラエル軍はかなりの規模でガザ地区に地上侵攻を行うのではないかと予測される。そうなると戦闘員か否かを問わず人々の命が失われていき、被害者の数は桁違いに増えることになる」と懸念を示しました。

イスラエル軍 ガザ市の全民間人にガザ地区南部への退避通告

イスラエル軍は13日午前7時すぎ、日本時間13日午後1時すぎに声明を出し、パレスチナ暫定自治区のガザ地区の北部にあるガザ市に住むすべての民間人に、地区の南部に退避するよう通告したことを明らかにしました。

声明ではイスラエルとの境界のフェンスには近づかないよう警告するとともに、今後、数日間、イスラエル軍はガザ市で大規模な作戦を継続し、民間人に危害を加えないよう努力を続けるなどとしています。

また、国連のデュジャリック報道官によりますとガザ地区にある国連の事務所にも13日の午前0時前に、24時間以内の退避を求める通告があったということです。

対象となるのは国連のスタッフや、国連の施設に避難している人々を含むガザ地区北部の民間人で、その数はおよそ110万人にのぼるとしています。

国連が通告を受けた時間を起点とすると、現地時間14日の午前0時、日本時間の14日午前6時ごろが退避の期限となります。

短時間で100万人以上の住民が避難をするのは極めて困難で、国連は「このような住民の移動は、破滅的な人道上の問題なしに不可能だと考えている」としてイスラエル側に退避通告の撤回を求めるとしています。

一方で、ハマス側は「これは住民を混乱に陥れるための偽情報だ」として通告を無視するようガザ地区の人々に呼びかけています。

イスラム組織ハマスは、13日、SNS上で「イスラエル軍の無差別な空爆によってこの24時間で、人質13人が死亡した」と発表しました。
13人はガザ地区北部の5つの場所で死亡したとしています。

ハマスは100人以上とされる人質の命をイスラエル軍の攻撃が脅かしていると強調し、イスラエル軍の動きをけん制しています。

イスラエル軍は、2014年にガザ地区に地上侵攻した際、北部と東部の住民に事前に避難を呼びかけています。

今回も近く地上侵攻を含む大規模な軍事作戦を実行に移すものとみられ、情勢が一層緊迫しています。

一方、13日はイスラム教徒が集団礼拝を行う金曜日にあたり、ハマスがパレスチナやアラブ諸国の人々に抗議行動を呼びかけていることもあり、エルサレムでも厳重な警備態勢がとられています。

ハマスによる大規模攻撃に報復するイスラエル軍の攻撃が続く中、パレスチナ人が多く住む東エルサレムやパレスチナ暫定自治区のヨルダン川西岸では、抗議行動が起きているほか、警察署への襲撃やユダヤ系住民との衝突なども起きていて、混乱がガザ地区以外にも広がるおそれが出ています。

ガザ市内 避難を始める市民たち

現地時間13日午前11時前、日本時間午後5時前にガザ市内でNHKの現地スタッフが撮影した映像では、市民たちが自家用車や乗り合いバスなどでガザ地区の南部に向けて避難を始めている様子が映っています。

集合住宅の1階部分には避難する住民のリュックサックや買い物袋がたくさん置かれていました。

また、通りでは大きな荷物や買い込んだ食料を車に積み込む人や知人と一緒に避難するために電話で連絡をとろうとする人の姿が見られました。

ガザ地区内の避難者 42万人超

OCHA=国連人道問題調整事務所は12日、イスラエル軍の空爆をうけてガザ地区内で自宅などから避難している人は42万3378人に上っていると発表しました。

この24時間で8万人以上増えています。このうち3分の2にあたるおよそ27万人はUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関が設置した学校に避難しているということです。

ただ、UNRWAによりますと、今月7日以降、こうした学校など少なくとも18の国連の施設がイスラエル軍による空爆の被害を受けたほか、2人の職員とUNRWAの学校に通う生徒5人が死亡したということです。

さらに、現地からの報道では、南部にある学校はすでに避難者であふれていて、1つの教室に最大で60人が滞在しているところもあるということです。

また、イスラエル軍はガザ地区の北部の住民を対象に退避を通告しているため、今後、さらなる避難者の増加が懸念されます。

専門家「地上侵攻は準備が整い次第始まるだろう」

イスラエルの安全保障に詳しいエルサレム戦略安全保障研究所のエフライム・インバール所長は12日、NHKの取材に対し「地上侵攻は準備が整い次第始まるだろう」と述べ、早ければ数日以内に地上侵攻が始まる可能性があると指摘しました。

イラン イスラエルを非難するデモ

イスラエル軍が近く地上侵攻を含む大規模な軍事作戦を実行に移すとみられる中、イランでは13日、イスラム教の金曜礼拝に合わせてイスラエルを非難するデモが行われました。

首都テヘラン中心部では政府の呼びかけに応じて集まった大勢の人たちが、パレスチナの旗とともに「イスラエルは終わりだ」などと書かれた紙を掲げて通りを埋め尽くしました。

予想される地上作戦について、参加した51歳の女性は「イスラエルはいつも、人を殺すことをためらわないので、今回も同じようにするでしょう。アラブ諸国はこれを黙って見過ごすべきではありません」と訴えていました。

また、別の50歳の女性は「地上作戦をさせてはいけません。ガザ地区はすでにひどい状況にあり、パレスチナの人々のことが心配です」などと話していました。

イスラエルと敵対するイランは、長年、ハマスを支援していますが、今回の大規模攻撃への関与は否定しています。

エルサレムの旧市街 治安当局の警備態勢が強化

イスラム教徒の金曜日の集団礼拝が行われた13日、エルサレムの旧市街では入り口に検問所が置かれ、厳重な警備態勢が敷かれていました。
イスラム教の聖地「ハラム・アッシャリフ」にある「アルアクサ・モスク」に通じる道は、ハマスによる大規模攻撃が行われた今月7日以降、イスラエルの治安当局による警備態勢が強化され、13日も若いパレスチナ人の男性は集団礼拝に向かうことを許されず検問所で追い返されていました。なかには検問所で治安当局と大声で言い争う人の姿も見られました。
また、ガザ地区への地上侵攻が近づいているという懸念が高まるなか、同胞への不安の声も聞かれました。74歳のパレスチナ人の女性は「ガザの住民のことを考えると心が痛む。アラブ諸国の介入を期待します」と話していました。
また42歳の男性は、「イスラエルの地上侵攻は地獄の門を開けることになる。神にこの危機を終わらせ、パレスチナに勝利をもたらすよう祈っている」と話していました。

《各国の反応》

EU委員長「連帯示すためイスラエルに到着した」

EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は13日、SNSに投稿しイスラエルを訪問していることを明らかにしました。

この中で「ハマスのテロ攻撃を受けるイスラエルの人々との連帯を示すため、ヨーロッパ議会のメツォラ議長とともにイスラエルに到着した」としてイスラエルへの支持を打ち出しました。

一緒に投稿された映像にはフォンデアライエン委員長らがイスラエル政府の関係者とみられる人たちと握手やことばを交わす様子が映っています。

イスラエルには、欧米各国の閣僚が相次いで訪問していて、これまでにアメリカのブリンケン国務長官やオースティン国防長官、それにイギリスのクレバリー外相が連帯を表明しています。

プーチン大統領 イスラエルの立場に理解も地上侵攻の可能性懸念

ロシアのプーチン大統領は13日、旧ソビエト諸国でつくるCIS=独立国家共同体の首脳会議で行った演説でイスラエル・パレスチナ情勢についても言及しました。

このなかでプーチン大統領は「イスラエルがその残虐性において前例のない攻撃を経験したことは理解している。イスラエルは自衛の権利がある」と述べイスラエルの立場に理解を示しました。

一方で「ガザでの地上作戦の準備についても耳にしている。住宅街で重装備品が使われると深刻な結果を伴うことになる」と述べ、イスラエルがガザで地上侵攻を行う可能性に懸念を示しました。

そのうえでプーチン大統領は「イスラエルとパレスチナが経験している大規模な悲劇は、アメリカの中東政策の失敗だ」と述べ、改めて対立するアメリカへの批判を展開しました。

日本政府 邦人の国外退避支援 チャーター機手配へ

イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫の度合いを増していることを受け、アメリカなど各国では、イスラエルから自国民を退避させる動きが出ています。

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で、日本政府としても、イスラエルにいる日本人の国外退避を支援するため、14日に現地のテルアビブを出発し、UAE=アラブ首長国連邦のドバイに向かうチャーター機1機を手配することを明らかにしました。

その上で「現地の情勢は非常に流動的で、この機会に改めて希望する方に早期に出国いただくよう呼びかける。政府としては、関係国や関係機関と連携しつつ引き続き邦人の安全確保に万全を期したい」と述べました。

木原防衛相 邦人退避に備え自衛隊に派遣命令

これに加え、政府は、チャーター機の運航が滞るなどの不測の事態に備えて、対応に万全を期したいとして、周辺国ジブチに自衛隊機を派遣することを決め、木原防衛大臣は午後6時前に、自衛隊に対し、自衛隊機を派遣し待機するよう命じました。

木原防衛大臣は午後7時前に防衛省で記者団に対し、「現下のイスラエル・パレスチナ情勢を受けて外務大臣から私に対し、現地に滞在する邦人の輸送に向けて準備開始をするよう要請があった。これを受けて私から自衛隊輸送機をジブチ共和国まで移動させ待機することを命じた。命令を受けて在イスラエル国邦人等輸送統合任務部隊を編成し、各種調整が整い次第、航空自衛隊の輸送機をはじめとする自衛隊の部隊をジブチ共和国に向けて出発させる予定だ」と述べました。
自衛隊機は準備が整い次第、現地に向けて出発するということです。

防衛省関係者によりますとジブチには航空自衛隊の
▽C2輸送機2機と、
▽KC767空中給油・輸送機1機の派遣を検討しているということです。

輸送機は早ければ日本時間の14日にも現地に向けて出発する予定だということです。

ジブチには、アフリカ沖で海賊対策などにあたっている自衛隊の活動拠点が置かれていて、イスラエルからは直線距離でおよそ2400キロ離れています。

ジブチはことし4月にアフリカのスーダンで武力衝突が起きた際、国外退避を希望する日本人の輸送任務にあたった自衛隊機の活動拠点となりました。

帰国した駐在員「これまでとは違う危険度の高さを感じた」

JETRO=日本貿易振興機構によりますと、イスラエルに日本から駐在員を派遣している企業はおよそ30社あり、13日時点で1人の駐在員を除いて、国外に退避したということです。

このうちおととしから南部の商業都市テルアビブに駐在していた東京のコンサルティング会社に勤める男性は、11日、家族で帰国しました。
男性は「地上戦になる可能性があるということで、日本企業もかなり危機感を高めています。現地の同僚の中にも軍に招集された人がいて、これまでとは違う危険度の高さを感じました」と話しました。帰国直前のテルアビブは多くの商店が営業が取りやめ、街は閑散としていたということで、今後はオンラインで現地とつなぎながら、仕事を続けていくということです。
男性は「軍に招集された同僚の1人は北部の前線のレバノンの国境のほうに行くと話していました。2年半滞在し、多くの友人や同僚もいるので本当に無事でいてほしいという気持ちです。とにかく早く戦闘が収まりイスラエルに戻って仕事をしたり、お酒を飲んだりして友人と再会できる日が来ることを祈っています」と話していました。

また長期出張で先月からテルアビブに滞在していた金融関係の会社に勤める男性も11日、予定を切り上げて、帰国しました。
男性は「現地の人から、今はこの10年で経験したことのない状況なので帰れるなら帰った方がよいと言われ、帰国することになりました。こんなことが同じ世界で起こるなんて、ひと言では言えない感覚です。早く争いが終わって日常に戻ってほしいです」と話していました。

在留邦人の数は

外務省によりますと、今月9日の時点でイスラエルとパレスチナには、企業関係者などあわせておよそ1300人の日本人が滞在しています。

ガザ地区には国際機関やNGOの関係者など少人数の日本人がいて、全員と連絡はとれているということです。具体的な人数は明らかにしていません。
上川外務大臣は12日夜、記者団に対し「在留邦人の安全確保に万全を期す」と述べ、現地にいる日本人の出国手段を確保するよう関係部局に指示したことを明らかにしました。
また、エジプトのシュクリ外相と電話で会談した際、ガザ地区からエジプト側に退避を希望する日本人がいた場合には支援するよう要請しました。

危険情報のレベルは

外務省は、今月10日、イスラエルの危険情報のレベルを引き上げ、ガザ地区とその境界周辺に最も高いレベル4の「退避勧告」を出しています。また、レバノンとの国境地帯はレベル3の「渡航中止勧告」、ヨルダン川西岸地区は不要不急の渡航中止を求めるレベル2を継続しています。一方、テルアビブやエルサレムなど、このほかの地域については不要不急の渡航中止を求めるレベル2に引き上げています。
外務省は、イスラエルにいる日本人に対して国外への退避を希望するか意向の確認を行うとともに、現地の情勢を踏まえながら危険情報のレベルをさらに引き上げるか検討することにしています。

イギリス空軍 P8哨戒機が監視活動 航空支援艦を派遣へ

イギリス政府は、イスラム組織ハマスとの戦闘を続けるイスラエルを支援するため、13日から周辺上空で空軍のP8哨戒機が監視活動にあたるほか、来週から東地中海に海軍の揚陸艦と、ヘリコプターが発着できる航空支援艦を派遣すると発表しました。

地域の安定を脅かすテロ組織への武器の移転などを監視するとともに、イスラエルや友好国に抑止力と安心感を与えるとしています。

このほか、キプロスなど周辺地域に駐留・展開しているすべての部隊に、イスラエルでの不安定な状況が近隣諸国に波及した場合の備えを強化するよう指示したということです。

スナク首相は「わが国の軍隊と外交チームは、国際的なパートナーたちが安全を再び確保するとともに、ハマスのテロリストの野蛮な攻撃による、罪のない何千人もの犠牲者に人道援助を確実に届けられるよう支援していく」とコメントしています。

東地中海には、すでにアメリカが空母打撃群を派遣していて、イランや、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラをけん制するねらいもあるとみられています。

米 国務長官と国防長官 相次ぎ現地訪問

イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫の度合いを増す中、アメリカのブリンケン国務長官とオースティン国防長官が相次いで現地を訪問しました。

12日にイスラエルを訪れてネタニヤフ首相と会談したブリンケン国務長官は、13日、ヨルダンの首都アンマンでパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長と会談しました。

パレスチナの地元メディアによりますと、会談の中でアッバス議長は、イスラエル軍の攻撃をただちにやめるよう呼びかけるとともに、水や医薬品など必要な物資を届けるための人道回廊の設置を求めました。

その上で、人道支援と唯一の発電所の停止によって大惨事が起こると警告したということです。

会談後、ブリンケン国務長官は自身のSNSで「争いの拡大を防ぐために、アメリカがパートナー国と連携していくことについて詳しく説明した」と述べました。

一方、アメリカのオースティン国防長官は13日、イスラエルに到着し、ネタニヤフ首相やガラント国防相と会談しました。

ガラント国防相との会談後の共同記者会見で、オースティン国防長官はハマスの攻撃を強く非難した上で「われわれはウクライナと同じく、イスラエルとも共にある」と述べ、複数の事態に対応できる能力を強調したうえで、必要に応じてイスラエルに追加の軍事支援を行う考えを示しました。

また、ガラント国防相は、ガザ地区の住民に南部に退避するよう呼びかけた上で、「ハマスのインフラ施設やハマスの本部、軍事施設を破壊するつもりだ」と述べ、イスラエル軍が近く大規模な軍事作戦を実行に移す可能性を示唆しました。

米 ブリンケン国務長官 アラブ5か国訪問へ

中東を訪問中のアメリカのブリンケン国務長官は、イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫の度合いを増す中、衝突が拡大するのを防ぐため、アラブの5か国を訪れると発表しました。

アメリカのブリンケン国務長官は12日、訪問先のイスラエルで記者会見し、このあと15日にかけてヨルダンやサウジアラビア、UAE=アラブ首長国連邦、エジプト、カタールの5か国を訪問すると明らかにしました。

このうちヨルダンでは、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長とも会談するとしています。

イスラエル軍が、イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区への地上侵攻も辞さない姿勢を強めるなど、緊迫の度合いが増す中、衝突が拡大するのを防ぐとともに、ハマスに捕らえられた人質の解放に向けて各国が影響力を行使するよう働きかけるためだとしています。

また、ブリンケン長官は、ハマスが大規模な攻撃に踏み切った理由について問われると「明確な答えはない」としながらも「われわれはイスラエルとサウジアラビアの国交正常化に向けて支援してきた。誰が正常化に反対しているのか。ハマスと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、それにイランだ」と述べ、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化の妨害をねらった可能性があるという見方を示しました。

一方、アメリカ国防総省の高官は記者団に対し、イスラエルの安全への関与を示すため、オースティン国防長官が13日にイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相やガラント国防相と会談すると明らかにしました。

アメリカ 自国民退避にチャーター機を用意

イスラエルで各国の航空会社が相次いで欠航を決める中、アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は12日、イスラエルにいるアメリカ人のうち国外への退避を希望する人たちのために、13日からチャーター機を用意すると発表しました。

このほか、車や船などを使った退避についても検討しているとしています。アメリカ国務省は、11日にイスラエルへの渡航の安全度を示す情報を、4段階で2番目に厳しい「渡航の再検討を求める」に引き上げていました。

フィリピン外務省 退避を支援

ガザ地区内にはパレスチナ人と結婚した女性やその子どもなどあわせて130人あまりのフィリピン人が暮らしているということです。

フィリピン外務省はこのうち少なくとも92人が退避を求めているとしてイスラエル軍がガザ地区北部の住民の退避を通告する中でエジプト側との境界にある検問所が開いた場合を想定して退避を支援すると発表しました。

《外国人の死者・人質の状況》

アメリカ 27人の死亡確認

アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は12日、ハマスによる攻撃で、これまでにアメリカ人27人の死亡が確認されたと発表しました。

フランス 13人死亡 子ども含む17人行方不明

フランスのマクロン大統領は12日、地元のテレビ局の番組での演説で、ハマスの攻撃でこれまでにフランス人13人が死亡し、子どもを含む17人が行方不明となっていると明らかにしました。その上で、行方不明者について、「イスラエル当局や関係国とともに、彼らが安全に帰還できるよう全力を尽くす」と述べました。

フィリピン 3人死亡確認 3人行方不明

フィリピン政府はパレスチナのイスラム組織ハマスの攻撃で、女性1人の死亡を新たに確認したと発表し、フィリピン人の犠牲者はあわせて3人となりました。

フィリピン外務省はほかにも自国民3人と連絡がつかず行方不明になっているとして、ハマスに連れ去られて人質になった可能性も含めて、イスラエルの治安当局と連携して確認を続けています。

イスラエルの専門家「人質は二の次にすぎない」

イスラエルの安全保障に詳しいエルサレム戦略安全保障研究所のエフライム・インバール所長は、イスラエル軍が地上侵攻に踏み切るタイミングについて「侵攻の規模にもよるが、準備が整い次第始まるだろう。奇襲をかけるかもしれないし、ハマスを緊張させるために時間をかけるかもしれない」と述べ、早ければ数日以内にも始まる可能性があると指摘しました。

また、ハマス側が捕らえている多くの人質については「軍事作戦の観点からは、人質は二の次にすぎない。人質の救出に小規模な部隊が動くかもしれないが、主な目標はハマスの軍事能力の消滅だ」と述べ、人質の存在がイスラエル側に地上侵攻をためらわせることは考えにくいと分析しています。

さらに、イスラエルが封鎖を続けるガザ地区の人道状況が悪化し、国際社会が懸念を示していることについては、「私たちはこうした事態をこれまでも経験している。国際社会はいつも受け身で、ガザに対して同情を示すが、何も行動は起こさない。国際世論には限界があると思う」と述べ、イスラエル側の判断に影響しないだろうと指摘しました。

そして「中東では、弱いと見なされると侵略を招く。ハマスがイスラエルをいま攻撃した理由のひとつは、われわれの内政の混乱にある。ハマスはイスラエルが弱いと評価し、だからこそ攻撃してきたのだ。抑止力を回復させることが、イスラエルが生き残るための鍵だ」と述べ、今回の報復作戦はイスラエルの自衛のためにも必要だと主張しました。

ICRC 「ハマスと連絡取っている」

多くの人が人質になっていることについて、ICRC=赤十字国際委員会のカルボーニ中東事業局長は12日、スイスでロイター通信の取材に応じ「現在、ハマスと連絡を取っていて、人質を人道的に扱う義務があると呼びかけている」と明らかにしました。

その上で「ICRCは中立的な仲介者の役割を果たさなければならない」と述べ、人質の無条件の解放に向けてハマスに働きかけていく考えを示しました。

一方、カルボーニ氏はガザ地区の人道状況について「最悪の事態に備えている。ただ、どこまで悪くなるのかもわからない」と述べ、イスラエル側が地上侵攻に踏み切ることに懸念を示しました。

人質の家族が悲痛な思い明かす

イスラム組織ハマスへの軍事作戦を続けるイスラエルがガザ地区への地上侵攻も辞さない姿勢を強める中、ハマスに捕らえられた人質の家族がNHKの取材に応じ、悲痛な思いを明かしました。

取材に応じたのは、エルサレムに住むカリーナ・アリエブさんの家族です。

19歳のカリーナさんは、去年10月に徴兵され、ことし1月からガザ地区との境界沿いにあるイスラエル軍の基地で任務にあたっていましたが、今月7日に基地がハマスによる襲撃を受け、カリーナさんは拘束されたとみられています。

家族がSNSで見つけた、ハマスによる襲撃のあとの様子を撮影したとみられる動画には、カリーナさんがほかの女性2人とともに、車の中でぐったりと横たわる姿が映っていました。

自宅のカリーナさんの寝室のベッドには、本人の写真や、安否を気遣う友人からの手紙などが置かれていて、姉のサーシャさんは、カリーナさんのお気に入りのぬいぐるみを抱いて無事を祈っていました。

サーシャさんは「ガザ地区の近くでの任務は怖かったと思うが、妹は責任感が強く、国のためだと考えていました。動画を初めて見たときは信じられない気持ちでしたが、間違いなく妹でした」と話していました。

行方不明になってから5日がたってもカリーナさんの安否は分からず、家族3人は食事がのどを通らず、夜も満足に眠れないと言います。

自宅では一日中テレビをつけて、カリーナさんら人質についての新たな情報が入るのを待ち続けています。

一方で、イスラエル政府がハマスに対し地上侵攻など強硬な軍事作戦を進めようとしている現状を、悲痛な思いで見ています。

父親のアルベルトさんは「地上侵攻を進めることがよいことなのか、私には分かりません。私が望むのは娘が無事に帰ってきてくれることだけです」と、涙を浮かべながら話していました。

また、サーシャさんは「ガザ地区を空爆し封鎖を進めるだけでなく、市民のことを考えるべきで、まずは人質の解放のための交渉を始めるべきです。政府は作戦のことばかり話し、人質のことを忘れています」と話し、国際社会がイスラエル政府に対し、人質解放に向けた行動をとるよう呼びかけてほしいと訴えていました。

イギリス 人質の家族が会見“人質解放と事態打開を”

イスラエルでは、ハマスの攻撃で外国人を含む100人以上が人質になっていて、イギリスの公共放送BBCは、子どもを含むイギリス人17人が死亡したり行方不明になったりしていると伝えています。

こうした中、家族を人質にとられたというイギリス国籍の2人が12日、ロンドン市内のホテルで記者会見しました。

このうち、80代の両親がハマスに連れ去られたというシャロン・リフシッツさんは「彼らは私たちから多くのものを奪った。私の85歳の母は、バイクか何かに乗せるために酸素を吸入する装置をはずされベッドから連れ出された」と涙ながらに話しました。

また、75歳の母親が人質になっているというノーム・サギさんは「私がここにいるのは、子どもや母親、それにお年寄りの解放のため助けを求める必要があるからだ」と述べ、国際社会の支援を求めました。

サギさんは、記者会見のあとNHKのインタビューに応じ、各国政府に望むことについて「状況がエスカレートすれば人質の解放はうまくいかないと思う。交渉によって事態を打開する方法が見つかることを願っている」と話していました。

英 BBC「テロリスト」表現で論争

イギリスでは、ハマスによるイスラエルへの攻撃でイギリス人17人が死亡、または行方不明になっていると報じられ、スナク首相など政府高官はハマスを「テロリスト」と呼んで非難しています。

こうした中、BBCは「『テロリスト』ということばは理解の助けよりも妨げになる可能性がある」などとする編集ガイドラインに基づき、発言を引用する場合を除いて「武装勢力」などという表現にとどめています。

これに対してシャップス国防相は11日のラジオ放送で「ハマスはイギリスで違法なテロ組織に指定されている。武装勢力などではなく、まさしくテロリストだ」と批判しました。

12日には、家族を人質にとられている男性が会見でBBCの記者に「テロリスト」ということばを使うよう求めたほか、BBCに出演したイスラエルの代理大使もキャスターに強い口調で迫りました。

BBCはホームページで「私たちの役割は、視聴者がみずから判断できるよう、現場で何が起きているか正確に説明することだ」などと編集方針を説明しています。

WHO「ガザ地区の病院は限界に達している」

イスラエル軍がパレスチナのガザ地区北部に住む100万人以上の人々に対し地区の南部に退避するよう通告したことを受けて、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は13日、旧ツイッターの「X」に「ガザ地区の病院は限界に達している。直ちに支援が入らなければ、必要不可欠な医療サービスは停止してしまう」と投稿しました。

その上で「南部への集団での退避が悲惨なものになることは明らかだ。患者や医療従事者、それに、市民が取り残されたり、危険に巻き込まれたりするかもしれない」として通告の撤回を求めています。

NATO イスラエルへの連帯示すも 釣り合いを求める

NATO=北大西洋条約機構は12日、ベルギーの本部で国防相会議を開き、イスラエルのガラント国防相からオンラインで、イスラム組織ハマスによる攻撃やイスラエルの報復作戦の状況について説明を受けました。

NATOによりますと、会議の中でストルテンベルグ事務総長は、ハマスによる攻撃に対し、NATOとして最も強いことばで非難するとした上で、イスラエルへの連帯を示したということです。

一方、会議のあとの記者会見で、イスラエルの報復作戦についての認識を問われたストルテンベルグ事務総長は「戦争にはルールがあり、釣り合いをとることが求められる。加盟国の多くが、ハマスによる虐殺と暴力を明確に非難すると同時に、この点を強調した」と述べました。

ストルテンベルグ事務総長は前日の記者会見でも、イスラエルの対応をめぐって「罪のない民間人の命が失われることを防ぐため、できるだけの手段を尽くすことが重要だ」と述べていて、自衛する権利を認めながらもイスラエルに自制を求めています。