チームのために変えたスタイルと貫き続ける姿勢 阪神 大山悠輔
試合を決めるホームランで大きな歓声がわき起こるスタジアム。
対照的なプレーがフォアボールです。
一見、地味に見えてもヒットと同じく一塁にランナーが出ます。
そのホームランとフォアボールで18年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献したのが、阪神の大山悠輔選手。
クライマックスシリーズで活躍が期待される虎の4番には、チームのために変えたスタイルと、貫き続ける姿勢がありました。
自らのスタイルを変えて
「今までの6年間を考えたら、だいぶ変わったんじゃないかな と思います」
今シーズンのみずからのバッティングスタイルについて語った大山選手。
プロ7年目、28歳のシーズンでの大きな変化でした。
一体、何を変えたのか?。
それは“ボール球を見極める”意識でした。
阪神は岡田彰布監督のもと、シーズンを通して堅実な攻撃を目指してきました。
指揮官が特に口酸っぱく伝えていたのが、ボール球を見極めることでした。
開幕前には、「査定」と呼ばれる選手の年俸につながる基準のフォアボールのポイントを上げるよう球団に要望。
選手たちは、その重要性を常に説かれてきました。
大山選手
「監督が査定を上げたっていう話があると思うんですけど、そこで給料が上がるとかそういうことではなくて『査定を変えるほどフォアボールって大事なんだよ』っていう風にチームに浸透させられたというか。
もちろんフォアボールが大切っていう思いはずっとあったんですけど、ことしに関してはより強くなった」
フォアボールの重要性を改めて感じた大山選手は、その意識を徹底しました。
昨シーズンまでと大きく変わったのは打席に入るまでの準備です。
▼相手投手がカウント別で投げることが多い球種
▼キャッチャーの配球の癖
▼自分の状態や試合状況 など
データも駆使しながらくまなくチェックした上で、1打席、1打席に臨んできました。
大山選手
「見るデータ自体は昨シーズンと一緒ですけど、より深く考えるようになった。
いろいろ考えたなかで『こういう風にしていこう』と打席、打席での準備がしっかりできたことが、ボール球を我慢することにつながったと思う」
その結果、阪神ファンから大歓声を浴びたホームランは19本。
この4年間で最も少なくなりましたが、フォアボールの数は昨シーズンの59個の倍近くになり、リーグトップの99個を選びました。
出塁率の向上に大きくつながり4割3厘をマークし、プロ7年目で初めてのタイトルとなる「最高出塁率」を獲得しました。
大山選手
「まさか自分が最高出塁率のタイトルをとるっていうのは思っていなくて。どっちかと言えば初球からどんどん振って結果を出す、打席の結果が出るタイプだったので、そういう意味では自分でもびっくり」
貫き続けた姿勢
みずからのスタイルを変え、一見地味で目立たなくても、チームの勝利に大きく貢献してきた大山選手。
一方で貫き続けたことがありました。
それは“全力疾走”です。
全143試合に先発出場し、すべてで一塁へと必死に走り続けました。
たとえ、ピッチャーゴロや内野フライでも一塁ベースまでスピードを緩めることはありませんでした。
岡田監督からは疲れるからやめるよう諭されたこともあったと言いますが、それでも大山選手はやめませんでした。
大山選手
「僕からしたら当たり前のことなので。相手のミスがいつ起こるかわからないですし、次の塁を狙うことでチームの勝ちにつながることもあるので。試合以外で全力疾走をすることがなかなか難しいなかで、1年間続けることで自分の体を作るという意味もある」
「あと、野球ができていることが当たり前じゃないという気持ちを持ちながらやらないといけないと思っているので、走れるところは走ろうと思っています。これは僕が決めたこと。やめることはないと思います」
あふれ出た涙
大山選手は球団生え抜きの選手としては、日本一となった1985年の掛布雅之さん以来、すべての試合で4番を任されました。
チームメートや家族に支えられながら、虎の4番を全うしてきました。
そして9月14日。
18年ぶりのリーグ優勝を決め、甲子園球場全体が歓喜の渦に包まれるなか思わず涙があふれ出ていました。
大山選手
「これまでは悔しい思いがほとんどだったので。いろんな経験もしたし、最下位も経験したし、あの瞬間、いろんなことを思い出して自然と出てしまった感じなんですけど。
でも本当に優勝した瞬間、ほっとしたというのがやっぱり1番だった」
38年ぶりの日本一へ
地道に、泥臭く、一生懸命に。
球団史上2度目、38年ぶりの日本一に向けて、まずはリーグチャンピオンとしてクライマックスシリーズファイナルステージに臨みます。
大山選手
「リーグ優勝はしましたが、クライマックスシリーズはまた別だと思っています。まずは目の前の1試合を勝たないことには次はないし、勝ち抜かないと次はない。本当に目の前の試合をもう1回チーム全員で必死になってとりに行きたいです」