解散命令の請求決定 旧統一教会や被害対策弁護団などの反応は

旧統一教会をめぐる問題で盛山文部科学大臣は12日、臨時の記者会見を開き、教団の行為は民法上の不法行為に該当し、著しく公共の福祉を害するなどとして、解散命令の請求を正式に決定しました。

決定について、教団側や元信者、被害対策にあたってきた弁護団などの反応をまとめました。

“2世”の男性「ようやくここまで来られた」

合同結婚式で結ばれた両親の元に生まれた30代の男性は、望まない信仰の強制など心理的な虐待や、さまざまな人権侵害を受けている「2世」からの相談に応じる団体を、ほかの宗教の「2世」とともに、ことし4月に立ち上げました。

自身は、物心ついたころから教会の行事への参加を強要され、両親の多額の献金によって、経済的に苦しい家庭環境で育ちました。

男性は、教団や教義を否定することは親の人生そのものを否定することにもつながるとして、複雑な心境を明かしつつ、今回の解散命令請求について、「教団は解散するべきだと1年近く訴えてきたので、ようやくここまで来られたという思いです。請求はあくまでスタートであり、教団をめぐる問題が風化しないよう、これからもできることをやっていきたい。2世や3世が親が信じる教義に縛られず、自分の意志で生きていけるようサポートを続けたい」と話していました。

元信者の女性「ようやくスタートラインに」

旧統一教会をめぐる問題について、アバターを使い、YouTubeで発信している元信者の女性は、「恋愛をしてはいけない」などとする教義に疑問を持ち、10年ほど前に教団を離れましたが、高齢の母親が現在も信仰を続けています。

母親のために毎月10万円ほどを生活費として渡していますが、母親は今も教団への献金を続けているということで、「家計を助けるためのお金はすべて献金されてしまいました。人生もお金も戻ってこないと感じている」と語りました。

教団への解散命令請求について女性は「今まで30年という長い時間がかかってきたので、『うれしい』とか、『節目だ』という思いはなく、ようやくスタートラインに立ったのだと感じます。解散命令が出たとしても解決ではなく、多くある関連団体への規制をどうするかなど、課題が残ると思います」と話していました。

被害対策弁護団「取り組みを高く評価する」

「全国統一教会被害対策弁護団」は今回の文科省の決定について、「全国の被害者のヒアリングを行うなど、深刻な被害の実態に向き合い、丁寧な調査を積み重ねた結果に基づいたもので、その取り組みを高く評価する。大きな一歩だが、解散命令請求が被害者全員の救済と、今後の被害予防に結びつくものでなければならない。教団の財産隠しや韓国への送金を防ぐため、政府は財産保全の特別措置法など、立法や行政の措置を速やかに講じてほしい」などとするコメントを出しました。

教団に返金求める親族「強制力ないと問題は解決しない」

高齢の母親が過去に多額の献金などをし、現在、教団に返金を求める集団交渉に加わっている50代の長男は、これまでの教団の姿勢について、「当初は最低限の責任を認め、一部は返金するという話でしたが、それが一切なくなっている。最近は自分たちの正当性をより主張するようになり、被害に向き合う姿勢はあまりないように感じる」と話します。

解散命令請求について、「教団を解散させることだけが目的だとすると、我々の望みは被害を回復することなので、そこにどう繋がるのかまだ先が見えないことが一番心配です」とした上で、議論が進められている被害者救済のための法整備について、「例えば、資産の売却や海外への送金などをできなくする措置を取ってもらいたい。また、法律ができても実行性がなければ意味がないので、強制力をもって対応できるようにしてほしい。何らかの強制力がないとこの問題は解決しないと思います」と話していました。

支援者「心のケアはこれまで以上に必要」

「統一教会被害者家族の会」の活動で、教団とのトラブルにまつわる信者や家族からの相談対応や、脱会支援などを行ってきた60代の夫婦は、盛山大臣の会見の様子を自宅で確認しました。

この夫婦には、妻が26年前に旧統一教会に入信し、夫がおよそ1年半かけて脱会させたという過去があり、解散命令請求の決定について、「ようやくスタートラインだ」と安どの表情を見せました。

夫は「時間がかかった分、丁寧に調べてくれた印象です。教団の財産を被害者の救済にあてられるよう、財産保全を可能にする法案を一刻も早く作ってほしい」と話していました。

妻は「この先、家族から脱会を強要される信者も出てくると思います。しかし、無理やり脱会させられても長年の信仰は心に染みつき、整理は難しいです。家族から批判されて心が壊れてしまう信者もいるでしょうし、心のケアはこれまで以上に必要になると思います」と話していました。

《旧統一教会の見解は》

旧統一教会「日本の憲政史に残る汚点」

文部科学省が解散命令の請求を正式に決定したことを受けて、旧統一教会=世界平和統一家庭連合は「このような決定がなされたことは、極めて残念であり、遺憾に思っています。偏った情報に基づいて、政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極みです」などとする見解を発表しました。

教団側はこの中で、政府が『解散命令請求が認められる法令違反の要件には民法の不法行為は入らない』という長年の法解釈を一夜にして強引に変更したと指摘し、「野党の追及や世論に迎合した結果であるのは明らかで、日本の憲政史に残る汚点となるでしょう」などと請求の決定を強く批判しました。

その上で、「私たちは国から解散命令を受けるような教団ではないと確信している」として、今後の裁判で法的な主張を行う方針を示しました。

韓国 旧統一教会の本部「深い遺憾 新しい教会文化を」

韓国にある旧統一教会の本部は12日、声明を発表し、文部科学省が日本の旧統一教会に対する解散命令の請求を正式に決定したことについて、「深い遺憾の意を表明する。日本での法人運営は日本の法律に従わなければならず、解散命令請求が公正に審査され判断されることを願う」としています。

また、「日本は特別な国だ」とした上で、「世界的な本部として道義的責任を感じている。日本社会から信頼を得られる新しい教会文化をともに作っていく」としています。

《政府や各党の反応》

松野官房長官「請求するに足る客観的な事実が明らかに」

松野官房長官は午後の記者会見で、「文部科学大臣が事実関係の確認を重ね、解散命令を請求するに足る客観的な事実が明らかになったと認められたため判断した。宗教法人審議会の意見も聞いた上で、あす以降、準備が整いしだい請求を行う」と述べました。

その上で、被害者救済の取り組みについて、「さまざまな相談に対応できるよう、法テラスと関係機関・団体などの連携の強化を図り、利用しやすい相談体制の整備など必要な支援に努め、しっかり取り組んでいく」と述べました。

立民 泉代表「関係あった議員は『決別宣言』をすべき」

立憲民主党の泉代表は記者団に対し、「ようやくだ。この間にも被害が拡大し、遅すぎると言わざるを得ないが、今回の決定が被害者の救済につながることは前向きに捉えたい。政府には、なぜ解散命令請求に至り、どんなことが明らかになったのか、もっと情報公開してもらわなければならない」と述べました。

その上で、「細田衆議院議長が象徴的だが、与党と旧統一教会の関係ははっきりさせなければならない。『解散命令請求を出すので、関係に距離が出ました』ということにはならず、関係のあった議員は『決別宣言』をすべきだ」と述べました。

また、泉氏は被害者の救済にあてるため、教団の財産を保全する法案を臨時国会に提出し、与野党で協議して成立させたいという考えを示しました。

維新 馬場代表「解散命令請求は妥当な判断」

日本維新の会の馬場代表はコメントを発表し、「旧統一教会によって長年生み出されてきた被害は悪質かつ重大で、解散命令請求は妥当な判断だ」としています。

また、被害者の救済にあてるため、教団の財産を保全する法整備の必要性について、「法律がないことで財産が散逸し、被害者への救済が十分に行われないおそれがある。臨時国会冒頭に財産保全を義務づける宗教法人法の改正案を提出し、一刻も早く国民や被害者の不安がふっしょくされるよう、早期の成立を目指す」としています。

公明「裁判所の判断を見守りたい」

公明党はコメントを発表し、「解散命令の要件に該当する事由について十分な裏付けがあり、宗教法人審議会においても『解散命令請求は相当である』との全会一致の意見だったということであれば、速やかに宗教法人法にのっとり、東京地方裁判所に解散命令請求がなされるものと認識している。今後は裁判所の判断を見守りたい」としています。

共産 小池書記局長「被害者や国民世論が政府を動かした」

共産党の小池書記局長は記者会見で、「被害者や国民世論、野党の追及が政府を動かした結果だ。迅速な判断を求めていきたい。このような事態を知りながら、旧統一教会と癒着をしてきた自民党の責任は極めて重大で、過去にさかのぼって全体像を解明する責任がある」と述べました。

その上で、「政府が解散命令請求をするので、財産保全の法整備も含めて、政府の責任で行うのが筋だ。政府・与党が動かないのであれば、党として法整備の検討を進め、他の党ともよく相談していきたい」と述べました。

国民 玉木代表「被害者救済に向けた意味ある一歩に」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し、「解散命令請求に値するのであれば、速やかに手続きに入るべきだ。被害者救済に向けた、意味ある一歩になることを期待したい」と述べました。

また、被害者の救済にあてるため、教団の財産を保全する法整備の必要性について、「救済に万全を期すため、現行法で不十分なら、政府が責任を持って法案を出すべきだ。難しければ、与野党を超えた合意が得られる議員立法で法案を早急に作るべきで、与野党が一致できる法案づくりに協力していきたい」と述べました。