旧統一教会めぐる問題 解散命令請求 正式決定へ 文部科学省

旧統一教会をめぐる問題で文部科学省は、12日、宗教法人審議会を開き、解散命令の請求について表明する方針です。審議会の意見を聴いた上で正式に決定し、13日にも裁判所に請求する見通しです。

旧統一教会をめぐる高額な献金やいわゆる「霊感商法」の問題を受け、文部科学省は、宗教法人法に基づく質問権の行使や、被害を訴える元信者らへの聞き取りなどを通じ、献金集めの手法や組織運営の実態などの調査を進めてきました。

これについて、文部科学省は12日午後、学識者などによる宗教法人審議会を開き、調査の結果、教団の行為は解散命令の事由である「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などに該当するとして、教団の解散命令の請求について表明する方針です。

審議会の意見を聴いた上で正式に決定し、13日にも東京地方裁判所に請求する見通しです。

請求が行われれば、行政機関が法令違反を根拠にした事例ではオウム真理教などに続いて3例目となります。

請求後は、裁判所が文部科学省と教団の双方から意見を聴いた上で解散命令を出すかどうか判断することになります。

解散命令が確定した場合、宗教上の行為は禁止されませんが、教団は宗教法人格を失い、税制上の優遇措置が受けられなくなります。

一方、教団側は、教団の活動には国が主張するような組織性、悪質性、継続性はなく、解散命令を請求する要件を満たさないと反論しています。

現役信者「解散命令が出ても 出なくても 改革進めていく必要」

信者の両親の元に生まれた現役信者の40代の男性は、“純潔を守って1人の相手を永遠に愛する”という教団の理念や教義には共感しているといい、解散命令請求について、「世論への迎合や政治的な動きで請求しているのなら、非常に残念だ。これまでの審議の内容が見えない部分が多いので、受け止めが難しい」と語りました。

一方、安倍元総理大臣への銃撃事件以降の教団の対応や、行き過ぎた高額献金、2世への教育に関しては疑問に感じる部分もあるということで、「法的な根拠に基づいた審理が行われ、裁判所が決定を出した場合は素直に従うべきだ。ただ、私自身は、解散命令が出ても、出なくても、教団は改革を進めていく必要があると思う」と話しました。

男性は、現役信者や元信者に対するひぼう中傷などが、解散命令請求によって強まることに懸念を示し、「信者や元信者の教団に対する思いにはグラデーションがあることを理解して欲しい」と話しています。

”宗教2世”「苦しむ2世が一歩踏み出すためにも 解散しかない」

旧統一教会の合同結婚式で結ばれた両親がいる、20代の男性は、同じ教会に通っていた信者が家族を亡くした際、教団から「祈りのため」などといわれて多額の献金を要求されたことなどをきっかけに、教義に疑問を持つようになり、10年ほど前に教団を離れました。

しかしその後も、自身の生い立ちなどに悩みを抱え、心の不調に苦しんでいるといいます。

男性は教団に対して、2世へのケアの必要性や、高額の献金を受けないよう訴えるメールを、送り続けてきましたが、望んだ形での回答は無かったということです。

教団への解散命令請求について、男性は「教団が言い訳を続けるほど、心が苦しくなります。私のように苦しむ2世が一歩を踏み出すためにも、教団には解散の道しか無いと思う」と話しました。

一方、今も信者であり続ける両親との関係を考えると、複雑な思いもあるといい、「私たち家族は、教団という存在を中心に円満に過ごしていた時期もありましたが、解散命令請求を望む子どもと、望まない親がいて、今後家族がどうなるのか不安です」と話していました。

専門家「宗教法人としての適格性が問われた」

宗教社会学が専門の北海道大学の櫻井義秀教授はこれまでの旧統一教会の解散命令請求の議論について、「安倍元総理大臣が銃撃された事件をきっかけに、信者への過度な献金の要求などさまざまな問題が浮かび上がってきた。宗教法人というのは『公共的な活動をなす』ことを期待され、逆に『公共の福祉を害しない』ことが非常に重要な要素だ。しかし『霊感商法』は一般市民の財産権を侵害し、2世信者の問題や高齢信者の生活を見ても、福祉を害している。宗教法人の行為としていかがかという議論の中、旧統一教会の宗教法人としての適格性が問われた」と指摘しました。

その上で、「文部科学省が解散命令請求をするとなれば、少なくとも信者を不幸にしないことと、一般社会に対して危害を加えないという、宗教法人としての最低ラインを確認したといえる。これを満たさない場合は法人としては認められないということだろう」という見方を示しました。