IMF 世界経済の最新見通し “地域間の成長格差拡大”

IMF=国際通貨基金は、世界経済の最新の見通しを発表しました。来年の世界全体の経済成長率をこれまでより0.1ポイント下方修正し、地域間の成長格差が拡大していると指摘しています。

9日からモロッコで始まったIMFと世界銀行の年次総会に合わせてIMFは10日、世界経済の最新の見通しを公表しました。

それによりますと、ことしの経済成長率は3.0%と前回7月時点から据え置いた一方、来年は2.9%で前回より0.1ポイント引き下げました。

国と地域別では、アメリカが主要国の中でコロナ禍から最も力強く回復しているとして、ことしと来年の成長率をいずれも上方修正しました。労働市場の強さを背景に個人消費が好調なことが主な要因で、来年の成長率は1.5%と0.5ポイント引き上げました。

一方、中国はことしと来年ともに下方修正し、このうち来年は0.3ポイント引き下げて4.2%と見込んでいます。大手企業の経営悪化が相次いで明らかになった不動産市場の危機によって、投資の減少が見込まれるためとしています。

また、低所得国では通貨安が経済を悪化させ、半数以上の国がすでに危機に陥っているか危機に陥っているリスクが高く、IMFは地域間の成長格差が拡大していると指摘しています。

日本の成長率は、外国人観光客の増加や日銀による金融緩和の継続、自動車輸出の回復などによってことしの成長率は0.6ポイント引き上げて2.0%と予測していますが、来年は1.0%に鈍化すると分析しています。

“アメリカの長期金利上昇 債務増加が原因”

世界経済の最新の見通しを発表したIMF=国際通貨基金のチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏がNHKのインタビューに応じ、アメリカの長期金利の上昇は政府の借金、債務の増加が原因となっているという考えを示しました。

グランシャ氏は、外国為替市場で円安ドル高の要因となっているアメリカの長期金利の上昇について、「FRB=連邦準備制度理事会によるさらなる利上げ予測を反映しているものではなく、アメリカで国債が市場に大量に出回っていることが一因になっている」と指摘し、アメリカ政府の債務が増加していることが原因となっているという見方を示しました。

また、日銀の金融政策について、日銀はすでに枠組みの調整を行っているとしたうえで「政策金利を引き上げる必要が出てきた場合に備えて、円滑な移行ができるように準備しておくべき」だと述べました。

イスラム組織ハマスとイスラエルの大規模な衝突が経済に及ぼす影響については、「地政学的な緊張が高まるたびにエネルギー価格は高騰して経済活動の重しとなり、インフレ率の上昇につながる可能性がある。ただ、その影響がどの程度大きくなるのかを見極めるのは時期尚早だ」と述べました。