アフガニスタン地震3日経過 2000人以上死亡 活断層が動いたか

アフガニスタンで7日に起きた地震では2000人以上が死亡したとされ、現地では生存率が急激に下がるといわれる72時間が過ぎました。懸命な救助活動が続けられていますが、新たな地震で捜索が一時中断されるなど厳しい状況が続いています。

アフガニスタンでは今月7日、西部を震源とするマグニチュード6.3の地震が2回発生し、現地で実権を握るイスラム主義勢力タリバンの暫定政権は、これまでに2000人以上が死亡し、およそ2000の家屋が倒壊したとしています。

現地では日本時間の10日午後、生存率が急激に下がるといわれる72時間が過ぎました。

タリバンの暫定政権は、被害の大きかった西部ヘラート州に1000人以上の救助隊を派遣して捜索にあたっているとしています。

ただ、現地で取材するフリージャーナリストなどによりますと、現地では、救助隊もおらず重機も無いまま住民だけで救助作業を続けている地域も少なくないということです。

新たな地震が複数回発生 捜索の一時中断も

また、アフガニスタン西部では9日もマグニチュード5.1の地震が発生するなど新たな地震が複数回発生していて、捜索にあたる人たちは地震が起きるたびに安全を確保するため一時作業を中断し、現場を離れることを余儀なくされているということです。

厳しい状況が続く中、現地ではタリバン暫定政権に対しさらなる救助隊の派遣や、重機の提供を求める声も上がっています。

生後3か月の娘を捜す父親「つらくて悲しい 助けてほしい」

ヘラート州に住むアブドゥル・クドゥス・サルダリさんは、生後3か月の娘のマスダちゃんが崩れた自宅の下敷きになっていていまだに行方がわかっていません。

これまでに救助隊などが地域に来たことはないということで、1人で、素手でがれきをどかして娘の行方を捜し続けています。

サルダリさんは「地震当時、男性は仕事で屋外にいたが、女性と子どもは自宅にいて多くが犠牲になった。つらくて悲しい。助けてほしい」と話していました。

専門家は活断層の一部がずれ動いた可能性を指摘

現地の地震活動に詳しい専門家は、国のほぼ中央を東西にのびる「ヘラート断層」と呼ばれる活断層の一部がずれ動いた可能性を指摘しています。

現地ではその後も地震活動が続いているため、専門家は救助活動などの際の二次災害のおそれもあるとして注意を呼びかけています。

地震のメカニズムなどが専門の同志社大学の堤浩之教授によりますと、アフガニスタンには南北にのびる「チャマン断層」と東西にのびる「ヘラート断層」という大きな活断層が知られています。

7日の地震の震源の位置やメカニズムなどから、東西にのびる「ヘラート断層」の西の端の一部がずれ動いた可能性があるということです。

今回の地震は断層を境にして北側が南側にのし上がる「逆断層」と呼ばれるタイプで、この地域に特徴的な起こり方だということです。

アフガニスタンは国の東部で規模の大きな地震が発生することが多く、去年6月にも東部のホスト州で1000人以上が死亡するマグニチュード5.9の地震が起きていますが、今回、地震が起きた西部でこの規模の地震は珍しいとしています。

地震による揺れの強さは日本の震度階級に換算すると6弱程度とみられ、被害が拡大している理由については、日干しレンガを積み上げた揺れに弱い構造の建物が多いうえ、40分ほどの間に同じ程度の規模の地震が立て続けに2回発生したことで多くの建物の倒壊につながったと分析しています。

同志社大学 堤浩之教授

堤教授は「現地ではその後も地震活動が続いているため二次災害のおそれもあり、支援活動などの際は注意が必要だ。アフガニスタンは断層の分布などについての科学的な知見が少なく、国民にも危険性が十分に伝わっていないため、地震の多い日本は技術提供や教育などの分野で支援していく必要がある」と話していました。

アフガニスタン 過去にも規模の大きな地震が相次ぐ

アフガニスタンは「プレート」と呼ばれる岩盤がぶつかり合っているため地震活動が活発で、過去にも規模の大きな地震が相次ぎ、多くの死者や建物が倒壊する被害が起きています。

現地の地震活動に詳しい同志社大学の堤浩之教授によりますと、アフガニスタン周辺は「インド・オーストラリアプレート」や「アラビアプレート」が北上して「ユーラシアプレート」に衝突していて、世界的にも地震活動が活発な地域の一つです。

去年6月には東部のホスト州で発生したマグニチュード5.9の地震で1000人以上が死亡したほか、2015年10月には北東部を震源とするマグニチュード7.5の地震が発生し、アフガニスタンとパキスタンで合わせて300人以上が死亡しました。

2002年にも北東部でマグニチュード7.3の地震が起き、150人以上が死亡しています。