【10日詳細】イスラエル“南部制圧” 双方の死者1600人以上に

イスラム組織ハマスへの報復作戦を進めるイスラエル軍は10日、ハマスが実効支配するガザ地区への空爆を続けるとともに、ハマスの戦闘員などが侵入した南部の地域を制圧したと発表しました。双方の死者はあわせて1600人以上にのぼっていて、ガザ地区では空爆によって避難を強いられる人が急増しています。

※10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

外務省 イスラエルの危険情報のレベル引き上げ

今回の事態を受けて、日本の外務省は10日、イスラエルの危険情報のレベルを引き上げました。

ガザ地区とその境界周辺には、これまで4段階の上から2番目にあたるレベル3の「渡航中止勧告」が出されていましたが、最も高いレベル4の「退避勧告」に引き上げました。

また、レバノンとの国境地帯はレベル3の「渡航中止勧告」、ヨルダン川西岸地区は不要不急の渡航中止を求めるレベル2を継続しています。

一方、テルアビブやエルサレムなどこのほかの地域については、これまでレベル1でしたが、航空便の運航を含め、事態が流動的だとして、不要不急の渡航中止を求めるレベル2に引き上げました。

プーチン大統領「中東でのアメリカ政策の失敗例」

ロシアのプーチン大統領は10日、首都モスクワを訪問したイラクのスダニ首相との会談の冒頭、イスラエルとパレスチナ暫定自治区のガザ地区の情勢について言及し、「ウクライナ危機が続き、そして残念ながら中東情勢が急激に悪化している。中東におけるアメリカの政策の明らかな失敗例だ」と述べアメリカを批判しました。

そのうえで「われわれの立場は、民間人への被害は最小限に抑えるべきというものだ」と述べ、双方に自制を促しました。

ハマス最高幹部”攻撃が続く限り、人質解放の交渉受け入れず”

ハマスがガザ地区に連れ去った100人を超える人質について、ハマスの最高幹部ハニーヤ氏は10日、声明を発表し「敵の捕虜について、接触をしてきたすべての当事者に対して、戦闘が終わるまでこの件について取り合わないと伝えた」として、イスラエル軍の攻撃が続いている限り、人質の解放をめぐる交渉は受け入れないと主張しました。

イスラエルのネタニヤフ首相は9日、「市民の解放のためにあらゆる手段を講じる」と述べ、ガザ地区へのさらなる攻撃が懸念される一方で、トルコのエルドアン大統領は「捕虜交換をはじめとしたあらゆる仲介の準備がある」と述べて、仲介に意欲を示しています。

UNRWA “空爆で18の国連施設が被害”

パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は10日、声明を発表し、イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃が始まった10月7日以降、学校など少なくとも18の国連の施設でイスラエル軍による空爆の被害を受けたほか、2人の職員とUNRWAの学校に通う生徒5人が死亡したということです。

また、ガザ地区にあるUNRWAの本部が入るビルも、近くで起きた空爆で大きな被害を受けたと明らかにしました。これによる死者やけが人はいないということです。

国連の推計では、10日現在でガザ地区にある80以上のUNRWAの学校に13万7000人あまりが避難しているということで、さらなる被害が懸念されます。

イスラエル軍“南部の地域を制圧”と発表

イスラエル軍などによりますと、これまでにイスラエル側では少なくとも900人が死亡し、およそ2700人以上がけがをしたほか、100人以上がハマスの人質になっているということです。

一方、パレスチナの保健当局によりますとガザ地区でこれまでに770人が死亡し、およそ4000人がけがをしたとしていて、双方の死者はあわせて1600人以上にのぼっています。

イスラエル軍の報道官は10日、ガザ地区に空爆を続けているとしたうえでハマスの戦闘員などが侵入した南部の地域を制圧したと発表しました。

そして「テロリストのインフラを完全に破壊した。何千もの標的を攻撃し、何百トンもの爆弾を投下してきた。最大限の被害を与え続けている」と述べ、空爆とともに海上からもガザを包囲し、報復作戦を続ける方針を示しました。

また、イスラエルのカッツエネルギー相は10日、SNSに「ガザ地区への電力供給は終わる。燃料の備蓄がなければ数日以内に地区の電力はなくなり、井戸水も1週間以内にくみ上げられなくなるだろう」と投稿し、圧力を強めています。

ガザ地区の状況についてOCHA=国連人道問題調整事務所は9日、家を破壊されたり、被害を受けたりして学校や親戚の家などに避難している人が18万7000人以上に上り、さらに増え続けるとみられ、食料などの支援が急務だと指摘しています。

ハマス報道官 ”さらなるサプライズ起こす”

イスラエルの隣国レバノンの首都ベイルートにあるイスラム組織ハマス事務所のアフマド・アブドルハディ報道官は9日、NHKの取材に応じました。

この中で「イスラエルでパレスチナに敵対的な政権が誕生し、占領地でのユダヤ人入植地の数が増え続けているにもかかわらず、多くのアラブ諸国がイスラエルとの国交正常化を進め、パレスチナの権利をはく奪しようとしている」と述べ、今回の攻撃を正当化するとともにアラブ諸国にも責任の一端があると主張しました。

イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が激しさを増していることについては「私たちはイスラエルが空爆や地上戦を展開することは想定していて、それに対応する用意がある。私たちはさらなるサプライズを起こすだろう。私たちは奪われたすべての土地を取り返すまで抵抗を続ける」と述べ、イスラエルがガザ地区への攻撃を激化させれば激しい抵抗を受けることになるとけん制しました。

ハマスの攻撃計画イランの関与は否定

ハマスによる攻撃の計画に、同じくイスラエルと敵対するイランが関与していたとアメリカの有力紙が報じたことをめぐり、イランにあるハマス事務所のハレド・カドミ代表が9日、NHKのオンライン取材に応じ「この作戦ははじめから最後まで完全にパレスチナの抵抗勢力によって行われているものだ」と述べ、イランの関与を否定しました。

また、イランの最高指導者ハメネイ師は10日、首都テヘランで行った演説で、ハマスによるイスラエルへの攻撃について「政権の中枢を容易に再建できないほど破壊した」と称賛しました。その上で「この動きの背後にイランがいるという話は間違っている」と述べ、今回の攻撃の計画にイランが関与していたとする指摘について改めて否定しました。

SNSなどで偽動画が拡散 現地の検証団体など注意呼びかけ

旧ツイッターの「X」では、ハマスによる大規模攻撃が起きた直後に「パレスチナの戦士がイスラエルのヘリコプターを撃墜した」などとする文章とともに、兵士が持ち運びができるミサイルでヘリコプターを撃ち落とす様子を撮影したとされる動画が拡散されました。しかし、この動画はゲームの映像で、偽動画だと指摘する投稿が相次いでいます。

また、動画共有アプリ「TikTok」でも、今回の衝突のものだとする偽動画が広がっていて、このうち「パラシュートでイスラエルに降下するパレスチナの兵士たち」だとする動画は映像の中に映る建物がエジプト・カイロにある軍の教育施設で、今回の衝突とは無関係であることがわかります。

さらに「イスラエルの子どもたちがハマスに誘拐され、おりに閉じ込められている」様子だとする動画は、数百万回閲覧されていますが、イスラエルの研究者らによる検証団体は、攻撃が起きる前に投稿された誤った動画で害を及ぼすものだとして拡散しないよう呼びかけています。

《空爆続くパレスチナ ガザ地区》

がれきの山 増え続ける負傷者

イスラム組織ハマスによる大規模な攻撃への報復として、イスラエル軍による激しい空爆を受けたパレスチナのガザ地区の各地から被害の状況が伝えられています。

このうち、北部にあるジャバリア難民キャンプでは、空爆を受けた建物が大きく壊れてがれきの山になっていて、消火活動にあたる人の姿も確認できます。

また、ガザ地区にあるモスクも空爆を受け、9日、けがをした人たちが次々と病院に運び込まれていました。

なかには毛布に包まれた小さな子どもの姿もあり、住民の女性は「彼らは私たちを殺し、私たちを破壊しました。ガザの人たちを助けてください」と話していました。

病院では医療物資不足

イスラエル軍による大規模な空爆が続くパレスチナのガザ地区では地区の拠点となっている病院に連日、多くのけが人が運び込まれています。

NHKが9日午後に撮影した映像では病院に次々と救急車が到着し、空爆で負傷した人たちが医療関係者によって運び込まれていました。

なかには出血して自力で歩けなくなった幼い子どもたちもいて、ストレッチャーに乗せられたり大人に抱えられたりして運び込まれていました。

また病院の外では死亡した家族と対面し、泣き崩れている人の姿や祈りをささげている人の姿もありました。

NHKの取材に応じたガザ地区の保健当局の報道官は「受け入れ態勢を引き上げたが医療物資の不足に苦しんでいます。負傷者が著しく増えていて医療物資の支援が必要です」と訴えていました。

NHKのガザ事務所スタッフ「安全な場所はない」

NHKのガザ事務所のスタッフ、ムハンマド・シェハダ氏は10日、オンラインでのインタビューで現地の様子を次のように伝えました。

シェハダ氏はイスラエル軍による報復攻撃について「30分から45分おきに激しい空爆が行われていて、誰も寝ることができていない。3日間で10時間ほどしか眠れていない」としています。

その上で、イスラエル軍から安全な場所に避難せよとの警告があることについて「シェルターに避難しろというメッセージを受け取っても、ガザ地区にシェルターはない。シェルターとされる学校も空爆を受けているからだ。ここに安全な場所はない。どこに行けばいいのか、どこに身を隠せばいいのかわからない。いつ頭の上に爆弾が落ちてくるかわからない状況では、いまいる場所が安全かどうかを判断することはできない。『安全』という感覚を私たちは失っている。人々がどのような気持ちでいるのか、ことばや映像で説明することはできない」と話しています。

激しい空爆が続く中、シェハダ氏とカメラマンの2人のNHKスタッフも避難を余儀なくされています。9日午後、イスラエル軍がNHKの事務所がある地域に空爆を行うとして、直ちに避難するよう住民に警告したためです。

シェハダ氏は避難したときの様子について、「亡くなった市民が次々と運ばれてくる病院を取材して事務所に戻ると、イスラエル軍が事務所のある地域は危険だと警告していることを知った。11階にある事務所から外を見ると、住民らが急いで避難していく様子が見えた。すぐに最低限の荷物をまとめて避難した」と話しています。

さらに10日午前1時ごろ、避難先のホテルの近くでも空爆があり、現場近くまで取材に行ったジャーナリスト3人が亡くなったということです。

避難先のホテルでは、現在は電気やインターネットを使うことができていますが、いつ使えなくなるかはわからず、今後どうなるのか見通せない状態だといいます。

そして、「イスラエルはハマスの軍事施設だけを攻撃していると主張しているが、私たちが病院やその周辺で目にした攻撃されている場所は、すべて民間の建物であり、犠牲者も市民だった。多くの子ども、女性、お年寄りが殺されている」と話し、国際社会に対し「一刻も早く、ガザで起きている戦争を止めるための方策を見つけてほしい」と強く訴えていました。

《ハマスとの戦闘続くイスラエルでは》

ガザ地区近くから避難の女性 “テロリストに多くの人殺された”

イスラエルの南部では、ガザ地区からイスラエル側に侵入してきたハマスの戦闘員とイスラエル軍の戦闘が続いています。

こうしたなかエルサレム郊外のホテルには、イスラエル南部から逃れてきた人たちおよそ300人が身を寄せています。

3人の子どもを連れて8日に避難してきたという42歳の女性は、「土曜日の朝にテロリストが集落に侵入して来て、私たちは避難部屋にずっと隠れていました。15年以上、ガザ地区の近くで暮らしていますがこんなことは初めてです。多くの人が殺され、行方不明になっている人もいます。再び戻れるのか想像もできません」と話していました。

また、37歳の男性は、「テロリストが朝6時ごろに集落に来て、近所の家を襲い始め、それが午後5時半ごろまで続きました。住民が小型の銃やライフルで集落を守ろうとし、さらに犠牲者が増えました。私も小さなナイフを持っていて連れ去られそうになったら家族を守るために抵抗しようと思っていました」と話していました。

エルサレムはガザ地区からおよそ70キロ離れていますが、NHKの取材班が避難してきた住民を取材している最中も、ガザ地区からロケット弾が飛んできたことを知らせる防空警報が鳴り響きました。ホテルの前の広場で遊んでいた子どもや親たちは、慌てて建物の中に入り、地下の部屋に集まっていました。

その後、ホテルから数キロ離れた住宅をロケット弾が直撃し、1人がけがをしたことがわかりました。被害を受けた住宅では窓が割れ、壁の一部が崩れ落ちていて、警察や消防が駆けつけて騒然とした雰囲気に包まれていました。

エルサレム 献血に1000人超の列

エルサレムではハマスによる大規模攻撃を受けて、スタジアムに設けられた臨時の献血会場に長蛇の列ができていました。

イスラエルでは負傷者への輸血のために今月7日から献血の呼びかけが始まり、9日も午前9時に受付が始まると、1000人を超える人が集まり、中には献血をするまで4時間待ったという人もいました。

献血に訪れたエルサレムに住む男性は「兵士たちは私たちのために戦っている。多くの人が自分たちの責任を果たそうとここにきている」と話していました。

またエルサレムに住む女性は「南部で起きていることはひどいことだ。献血には2~3時間かかると聞いたが、国のために貢献したいと思い、ここで待っている」と話していました。

イスラエル中央銀行 為替市場へ初介入

イスラエル中央銀行は9日、通貨シェケルの大幅な値下がりを防ごうと、保有する外貨の一部を売却すると発表しました。

イスラエル中央銀行の発表によりますと、売却する外貨の額は最大300億ドル、日本円でおよそ4兆4700億円だとしています。

売却の目的については、「シェケル相場の大幅な価格変動を抑え、市場が適切に機能し続けるために必要な流動性を供給するため」と説明していて、市場ではシェケルを買い支える狙いがあると受け止められています。

海外メディアによりますと、イスラエル中央銀行による為替市場への介入は、変動相場制に移行して以来初めてだということです。

《各国の反応は》

米バイデン大統領ら5か国の首脳 “イスラエルの取り組み支援”

アメリカのバイデン大統領とイギリスのスナク首相、ドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、それにイタリアのメローニ首相は9日、電話で会談しました。

会談後に発表された共同声明でバイデン大統領らは「イスラエルへの揺るぎない結束した支持とともに、ハマスの恐るべきテロ行為に対する明確な非難を表明する」としています。そして「われわれの国は残虐行為から自国と自国民を守るためのイスラエルの取り組みを支援する」と強調し、引き続き5か国で連携していくとしています。

米国防総省高官“軍事支援急ぐ”

アメリカ国防総省の高官は9日、記者団に対しイスラエル側の要請を受けて防空関連の装備や弾薬などの軍事支援を急いでいると説明しました。

さらに周辺地域の抑止力を高めるため、アメリカ海軍の最新鋭の空母、「ジェラルド・フォード」を中心とした空母打撃群が、イスラエルに近い東地中海にまもなく到着するということです。

また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者団に対し「イスラエルが戦闘で弾薬を消費し続けるため、追加の軍事支援の要請があることを想定しており、可能な限り迅速に要請にこたえる」と述べて、イスラエルを継続的に支援する考えを示しました。

一方、カービー調整官は「イスラエルにアメリカ軍を派遣するつもりはない」と述べました。

国連事務総長 ガザ地区の人道状況 極めて悲惨

国連のグテーレス事務総長は9日、ニューヨークの国連本部で会見し、ハマスによる攻撃を改めて非難したうえで、「パレスチナの人たちが抱えている正当な不満はわかっている。しかしテロ行為と市民の殺害や誘拐は正当化できない。ただちに攻撃を停止しすべての人質を解放するよう求める」と訴えました。

一方、イスラエルの軍事作戦について「イスラエルの正当な安全保障上の懸念を認識している。一方で軍事作戦は国際人道法に沿って行われなければならない」と述べ、市民の生命や民間インフラは保護されなければならないと強調しました。

さらにガザ地区の人道状況は極めて悲惨だとしたうえで、イスラエルがガザ地区を完全に包囲するとしていることに「深く心を痛めている」と述べ、緊急の人道支援を届けるため国際社会が取り組むよう呼びかけました。

国連によりますとグテーレス事務総長はイスラエルのネタニヤフ首相やパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長、それに、周辺国の首脳らと相次いで電話会談を行っていて、事態のさらなる悪化や地域の不安定化を防ぐために協力を求めています。

トルコ エルドアン大統領「あらゆる仲介の準備がある」

トルコのエルドアン大統領は9日の首都アンカラで行われた閣議後の会見で、イスラエルのヘルツォグ大統領、それにパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長、それぞれと電話で会談したと明らかにしました。

その上で、「双方からの要請があれば、捕虜交換をはじめとしたあらゆる仲介の準備がある」と述べて、双方に自制を呼びかけるとともに仲介に意欲を示しました。

ただ、イスラエル側は「今は交渉や仲裁の時ではなく、境界の安全確保に取り組んでいる」としているほか、ハマスの軍事部門も「空爆のさなかに人質をめぐる交渉はしない」と述べるなど、当事者間では停戦に向けた動きは見られません。

こうした中、エルドアン大統領は9日、エジプトのシシ大統領やカタールのタミム首長ら関係各国とも相次いで電話会談を行っていて、事態打開の糸口を見いだせるか注目されます。

イギリス イスラエルへの全面的支援 表明

イギリスの首都ロンドンでは9日、パレスチナ出身の人たちなどがイスラエル大使館前に集まり、イスラエルによる長年にわたる占領や入植が今回の事態を引き起こしたとしてガザ地区への攻撃をやめるよう訴えました。

集まったのはイギリス在住のパレスチナ人や反戦団体のメンバーなど数百人で、パレスチナの旗を振ったり「パレスチナを解放しろ」などと声を上げたりして攻撃の停止を呼びかけました。

一方、イギリス政府はイスラエルへの全面的な支援を表明し、ハマスを支持したり、ユダヤ人の安全を脅かしたりする行為は取り締まりの対象になると警告していて、現場では多くの警察官が警戒に当たっていました。

デモを主催した1人、イシュマイル・パテルさんは「イスラエル側はガザ地区への電気や食料、水の供給を遮断すると発表したうえ、地上侵攻が始まれば数千人が犠牲になると懸念している。イギリス政府はかつて1917年のバルフォア宣言に署名し、イスラエルという国家の成立に歴史的な責任を持っている。侵略者の肩を持つのではなく公平な立場を保ち、両者の対話を促してほしい」と訴えていました。

地元メディアによりますと、ハマスによる攻撃でイギリス人10人以上が死亡、または行方不明になっているということで、スナク首相はこの日、内閣の会議を緊急招集し「イスラエルは自国を守り、さらなる侵略を阻止する権利を持っている」と強調しました。

世界各地で双方の支持者がデモや集会 根深い対立浮き彫りに

アメリカ・ニューヨーク、マンハッタン中心部のイスラエル総領事館の近くでは、9日、幅20メートルほどの道路を挟んで、北側にイスラエルの支持者100人あまり、南側にパレスチナの支持者300人あまりがそれぞれ集まりました。

現場に多くの警察官が出て警戒にあたる中、双方ともバリケードの中から身を乗り出すようにして相手側を非難することばを叫び、周辺は一時騒然となりました。

イスラエル側の参加者の女性は「イスラエルの人たちは非人道的に誘拐された。いったい誰がやったのか。裁かれなければならない」と話していました。

パレスチナ側の参加者の女性は「パレスチナの人たちは長い間、抑圧の中で生きてきた。もう十分だ」と話していました。

ヨーロッパ有数のユダヤ人コミュニティーがあるフランスでは、9日、パリ中心部におよそ2万人が集まり、「イスラエルに連帯を」などと書かれたプラカードを持って行進したほか、観光名所のエッフェル塔ではイスラエル国旗をあしらったライトアップがされました。

EU パレスチナへの資金支払いを即時停止

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を受けてヨーロッパではパレスチナへの支援を見直したり、一時的に停止したりする動きが出ています。

このうちEU=ヨーロッパ連合では、近隣国についての政策などを担当するバールヘイ委員が9日、ソーシャルメディアに「イスラエルとイスラエルの人々に対する暴力行為と残酷さは転換点となった。何事もこれまでどおりというわけにはいかない」と投稿しました。そのうえでパレスチナに対するあらゆる資金の支払いを即時停止するとしたほか、すべての開発援助プロジェクトを見直すとしています。

ドイツやオーストリア パレスチナへの援助 見直す動き

ドイツ政府は、9日の定例の記者会見で、パレスチナにおける飲料水の確保や職業訓練などのために、ことしと来年拠出する予定の2億5000万ユーロ、日本円でおよそ400億円の資金について、見直しが必要か検討するため一時的に拠出を停止していると明らかにしました。

さらにオーストリアの外相も9日、地元メディアに対して、ハマスによる今回の攻撃を強く非難した上で、パレスチナへの援助を一時的に停止すると明らかにしました。

ロシアとアラブ連盟 イスラエルと欧米を批判

ロシアのラブロフ外相は9日、首都モスクワを訪問したアラブ連盟のアブルゲイト事務局長と会談しました。

会談後の記者会見でアブルゲイト事務局長は「ガザでは、これまでも多くの人々が殺害され、流血の事態が起きてきた。イスラエルはこうした行為を繰り返してきた」と述べイスラエルを批判しました。

そして「今回の協議で、最も重要なことは流血を止め、情勢の安定化を達成するということで一致した。そうでなければ状況は大きく悪化するおそれがある」と述べ即時停戦を訴えました。

これに対しラブロフ外相も「欧米は即時停戦を求めながら、イスラエルが勝利しなければならずテロリストを破壊すべきだと言っている」と述べ、欧米の立場は矛盾していると主張し、批判しました。

ウクライナ大統領 “ロシア 中東で戦争を引き起こすことに関心”

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、動画を公開し、イスラエル・パレスチナ情勢について「これはウクライナだけでなく、ヨーロッパ全体にとって極めて重要だ。入手可能な情報によれば、ロシアは中東で戦争を引き起こすことに関心を抱いている。それにより新たな痛みや苦しみの源が世界の団結を損ねることになる。ロシアのプロパガンダの宣伝者はほくそ笑んでいる」と述べ、事態が悪化し国際社会の足並みが乱れれば、ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアにとって利益になると主張しました。

そのうえで「世界中のあらゆる国は今、国際法をどう守るか選択しなくてはならない」と訴えました。

ユニセフ ガザ地区の電力などの供給停止に懸念示す

イスラエル政府は9日、ハマスに対する圧力を強めるため「ガザ地区を完全に包囲する」としてガザ地区への電力や食料、水などの供給をすべて停止する考えを示しています。

これについて、ユニセフ=国連児童基金のキャサリン・ラッセル事務局長は9日、声明を発表し「ガザ地区への電力の遮断や、食料、燃料、水の供給を止める措置は、子どもたちの命を危険にさらすことにつながりかねない」と懸念を示しました。

その上で、「人道状況が急速に悪化する中、子どもたちやその家族がどこにいようと、人道支援に携わる人々が安全に、命を守るための活動や、物資を届けることをできるようにしなければならない」として封鎖が行われる中でも緊急な人道支援は行われるべきだと訴えました。

《ハマス奇襲攻撃 何が起きたのか》

始まりはガザ地区からの大規模ロケット攻撃

今回のハマスによる奇襲攻撃は7日午前6時半ごろ、ガザ地区からの大規模なロケット攻撃で始まりました。発射されたロケット弾の数について、ガザ地区を実効支配するハマス側は5000発以上、イスラエル側は2200発以上だとしています。

それと前後するように戦闘員がイスラエル側に侵入。ガザ地区はイスラエルが建設した壁やフェンスに囲まれて封鎖されていますが、イギリスの公共放送BBCは、検問所を含む7か所をハマスの戦闘員が突破したと分析しています。

ハマスの軍事部門のカッサム旅団はSNSなどで戦闘員がイスラエル側に侵入した様子だとする映像を公開しています。

このうち、空から侵入したとする動画では複数の戦闘員が、動力付きのパラグライダーを使ってイスラエルが建設したコンクリートの分離壁を越えていくような様子が映っています。

また、イスラエルとガザ地区の間の人の行き来を管理するエレズ検問所で撮影されたとされる映像では、分離壁で大きな爆発が起きたあと戦闘員たちが走って行く様子や施設のなかで激しい銃撃戦が起きている様子が記録されています。

そして、フェンスごと爆破してそこから武装した戦闘員を荷台に乗せた複数の車がイスラエル側に侵入しているような動画もあります。

さらに8日に公開された映像では、複数の戦闘員が海とみられる場所でボートに乗って水面を進む様子がとらえられています。

ハマスによる奇襲攻撃が行われた7日はユダヤ教徒にとって、重要な祭日の最中で、イスラエルにとっては不意を突かれた形です。

さらに前日の6日は、ユダヤ教徒にとって最も重要なしょく罪の日「ヨム・キプール」にイスラエルが突如、攻撃を受けたことから始まった第4次中東戦争から50年の節目にあたっていました。

ハマスは今回の奇襲攻撃の作戦名を「アルアクサの洪水」としていてエルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地「ハラム・アッシャリフ」にある「アルアクサ・モスク」のことを指しているとみられます。

この聖地をめぐっては、同じ場所にかつてユダヤ教の神殿があったとされることから、イスラム教徒とユダヤ教徒の間の火種になってきました。

一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争状態にある」と述べ、イスラエル軍が「鉄の剣」と名付けた報復作戦でガザ地区のハマスの拠点などへの大規模な空爆を続けています。

ハマス 音楽イベントを襲撃 100人以上を人質に

イスラエル側は侵入した戦闘員がおよそ1000人にのぼるとしていて、戦闘員はガザ地区との境界近くで開かれていた音楽イベントの会場を襲撃し、260人を殺害したほか、兵士や市民を人質にしてガザ地区に連れ去るなどしています。

人質の数について、ハマスは声明で100人以上にのぼると主張しています。一部のハマスの戦闘員はその後もイスラエル領内に残っていてイスラエル軍は交戦状態が続いていることを明らかにしています。

音楽イベント参加者“生き地獄のよう”

音楽イベントの参加者が、ロイター通信の取材に応じ、凄惨な現場の様子を証言しました。

このうち、イスラエル人の男性は、「午前6時半ごろにロケット弾による攻撃が始まり、参加者は何が起きているか分からず、叫び声が聞こえた。その後、会場で自動小銃を持ったバイクの男2人が銃を乱射し始めた。私たちは頭を伏せながら車を運転して逃げた。それから建物に入って部屋に隠れたが、外では絶えず銃声や叫び声が聞こえ、人が殺されていった」と話していました。

別の男性は、「本当に生き地獄のようだった。私は軍隊に入って2つの戦争を経験したが、これほどの事態は見たことがない。遺体がそこかしこにあり、テロリストは殺す相手が男か女かも気にしなかった。彼らが行ったことは決して許されない」と話していました。

イスラエル軍 レバノンから侵入の戦闘員を殺害

イスラエル軍は9日、「レバノンからイスラエルに侵入した複数の戦闘員を殺害した」とSNSで明らかにしました。具体的な人数や所属などは明らかにしていません。

イスラエル軍は隣国レバノンとの国境付近にも戦車や装甲車を展開していて、9日に撮影された映像では、国境付近の道路に検問所が設けられているほか、武装した兵士が警戒にあたる様子が確認できます。

隣国レバノンをめぐっては、イスラエルと国境を接する南部を拠点にするイスラム教シーア派組織ヒズボラが8日、イスラエル北部にある軍事施設に対し砲撃を行ったと発表しています。

ロイター通信は「ヒズボラの幹部は今回の戦闘員のイスラエルへの侵入を否定した」と伝えていますが、今後、ヒズボラが攻撃を本格化させれば、イスラエルはハマスと二正面作戦を余儀なくされることになり、緊張がさらに拡大する事態も懸念されます。

《各国の犠牲者》

各国の発表によりますと、イスラエルでのイスラム組織ハマスによる攻撃で外国人にも多くの犠牲者や行方不明者が出ていて、一部は人質になっているとみられています。

このうち、アメリカのバイデン大統領は9日、少なくとも11人のアメリカ人の死亡が確認されたと明らかにしました。バイデン大統領は「ハマスに拘束されている人たちの中にアメリカ人が含まれている可能性が高い」としています。

タイの外務省によりますと、これまでにタイ人2人の死亡が確認されたほか、現地の雇用主からは死亡したタイ人は18人にのぼるという情報も入っているということで確認を急いでいます。また、タイ人11人が人質になっているということです。

フランス外務省も、これまでにフランス人4人の死亡が確認されたほか、13人の行方がわからなくなっているとしています。

フィリピン外務省は自国民7人が行方不明になっていると発表したほか、ブラジル外務省はガザ地区との境界近くで開かれていた音楽イベントに参加した自国民3人の行方が分からなくなっているとしています。

イギリスの地元メディアはハマスによる攻撃で、イギリス人10人以上が死亡、または行方不明になっていると伝えています。

アルゼンチンの外務省によりますと、これまでにアルゼンチン国籍の7人が死亡し、15人の行方がわからなくなっているということです。

またブラジル外務省によりますと、ガザ地区との境界近くで開かれていた音楽イベントに参加していたブラジル人1人の死亡が確認されたということです。

ペルー外務省も1人が死亡したと発表しました。

また、チリの外相はチリ人の女性1人が誘拐されたと明らかにしました。

そのほか、各国政府によりますと、ペルー人3人、ブラジル人2人、コロンビア人2人、パラグアイ人2人の行方がわかっていないということです。

《1からわかる!イスラエルとパレスチナ》