日銀 植田総裁 就任から半年 金融政策正常化に向けた道筋 課題

日銀の植田総裁は、9日で就任から半年となります。日銀は、賃金の上昇を伴う2%の物価安定目標の達成を目指して大規模な金融緩和を続けていますが、円安が進み長期金利の上昇も続く中、市場と向き合いながら金融政策の正常化に向けた道筋をどうつけていくかが課題となります。

消費者物価指数の上昇率は、ことし8月まで17か月連続で日銀が目標とする2%を上回っていますが、植田総裁は、賃金上昇を伴う形での2%の物価安定目標の達成を見通せる状況にはなお至っていないとして、今の金融緩和策を粘り強く続ける考えを示しています。

ただ、日銀が金融緩和を続けていることが、円安や物価高の要因となっているという指摘もあります。

日銀はことし7月の会合で、長期金利の上昇をそれまでの0.5%程度から事実上、1%まで容認する方針に変更しました。

為替を含めた金融市場の急激な変動を抑えるねらいもありましたが、その後、アメリカの長期金利が上昇を続ける中、円安がじりじりと進み、円相場は今月3日、1年ぶりに1ドル=150円台まで値下がりしました。

また今月4日には長期金利が一時、10年ぶりに0.805%まで上昇しました。

こうした中、市場では、日銀が金融緩和策を早期に修正するのではないかという観測がくすぶり続けていますが、植田総裁は、先月22日の記者会見で「現時点では経済や物価をめぐる不確実性が極めて高く、政策修正の時期や具体的な対応について到底決め打ちはできない」と述べています。

今後は市場や物価の動向をにらみながら金融政策の正常化に向けた道筋をどうつけていくかが課題となります。

日銀の金融政策のポイントは

経済部で日銀を担当する真方健太朗記者に日銀の金融政策のポイントについて聞きました。

Q1.日銀は、賃金上昇を伴う2%の物価目標を目指していますが物価の上昇が続き、企業の間で賃金上昇の動きも相次ぐ中、それでもまだ目標にたどりついていないとはどういうことなのでしょうか。

A1.賃金の上昇が物価の上昇に追いついていないということがあります。

給与は伸びているものの、物価の上昇分を差し引いた「実質賃金」は、ことし8月まで17か月連続でマイナスになっています。

来年の春闘で賃金上昇の力強い動きが継続するか、そして中小企業にも広がるかが物価目標達成に向けてのポイントとなります。

Q2.賃金上昇の動きが広がり、物価目標の実現が見通せるようになればいよいよ大規模緩和の出口が見えてくるということになるのでしょうか?

A2.植田総裁も、先月の会見で物価目標の実現が見通せる状況になった場合は、いまの大規模緩和の枠組み撤廃やマイナス金利の修正を検討することになると話しています。

ただ、まだ経済や物価をめぐる不確実性が高いので、政策を修正する時期や方法については「決め打ちできない」と述べています。

一方、一部の政策委員からは「来年1月から3月ごろには物価目標の実現が見極められる可能性がある」「今年度後半は見極めの重要な局面になる」という発言もあがっています。

Q3.今後の注目点は?

A3.今、長期金利が上がり続けてますが、日銀がこれをどこまで認めるのかという点です。

長期金利が上昇すると住宅ローンの固定金利がさらに引き上げられる可能性もあります。

ただ、長期金利を抑えようとすると円安がさらに進み、物価の一段の上昇につながるおそれもあります。

日銀がどう動くかは私たちの暮らしにも影響を及ぼすことになります。