秋の食卓に異変 サンマは不漁続き 暑さで野菜も生育不良に

「食欲の秋」を楽しみにされている方、多いのではないでしょうか。

「目黒のさんま祭」がことしも開催され、抽せんに当選した目黒区民を対象にサンマがふるまわれました。しかし、ことしも不漁が続き、ふるまわれたのは例年の半分以下となる2000匹でした。

さらに、記録的な暑さで各地の農作物にも生育不良などの影響が出ています。

この秋は食卓に異変が起きています。

「目黒のさんま祭」開催

「目黒のさんま祭」は古典落語の「目黒のさんま」にちなんで、地元の町内会や商店街などが開いていて、ことしは抽せんに当選した目黒区民を対象にサンマがふるまわれました。

会場の公園では友好都市の宮城県気仙沼市から届いたサンマが炭火で焼かれ、家族連れなどが秋の味覚を楽しみました。

主催者によりますと、ことしは不漁の影響で祭りの直前に水揚げがない場合を想定して冷凍のサンマの提供も検討していましたが、6日水揚げされた2000匹が8日朝、届けられたということです。

新型コロナウイルスの感染拡大前は例年、5000匹がふるまわれていたため、ことしの提供は半分以下となります。

今シーズンもサンマは不漁か

「全国さんま棒受網漁業協同組合」によりますと、サンマの年間の水揚げ量は2008年には34万トンを超えていましたが、去年は1万7910トンと過去最低となりました。

国の研究機関「水産研究・教育機構」は今シーズンのサンマについて、日本近海に来遊する量は記録的不漁となった去年と同様に低水準となり、大きさも去年よりは若干大きいものの、依然として小ぶりになると見ています。

不漁については、サンマ自体の減少に加えて、水温が低い親潮が南下しなくなるなど潮流が変化し、漁場が沖合に移ったことなどが原因だと考えられるとしています。また、沖合は日本近海に比べてエサが少ないことなどから、サンマの成長が悪化し、小型化が進んでいるということです。

小ぶりなサンマは“干物”で食卓に

秋の味覚、サンマの漁獲量が減る中、そのままでは店頭に並びにくい小ぶりなサンマも干物に加工することで、少しでも食卓に届けようと取り組み始めた会社もあります。

豊洲市場を拠点に通販事業を行う会社ではこの秋から、1匹80グラム台から100グラム程度の小ぶりなサンマを買い取り、干物にして販売する企画を始めました。この日は東京・中央区にある魚の加工販売店の一角で干物作りが行われ、北海道で水揚げされた小ぶりなサンマ4キロ分が運び込まれました。

この会社ではサンマを開かずにまるごと干物にしていて、内臓もあえて取り除かず、まるごと塩水につけ込んだあと塩抜きをして、干物をつくる専用の機械に入れるなどして、加工していました。干物にすることで、日持ちするだけでなくうまみが凝縮されるといい、今後も11月上旬くらいまで製造していく予定だということです。

加工を行っている豊洲市場などで50年近く働く干場誠さんは「ことしのサンマは去年よりは少し大きいですが、最盛期と比べるとかなり細いです」と話していました。

小ぶりのサンマを干物にする企画をした通販会社の八尾昌輝さんは「市場の中でも本当にサンマが少なくて、店頭で見かけることも少なくなりました。これまでは小さいものは、



そのままでは店頭では扱われていませんでしたが、商品価値を高めることで食べてもらいたいと考えています」と話していました。

記録的な暑さ 農作物が生育不良に

ことし、7月から9月の平均気温は、いずれの月も気象庁が統計を取り始めてからの125年間で最も高くなるなど記録的な暑さとなり、各地の農作物に生育不良などの影響が出ています。

農林水産省によりますと、東京都中央卸売市場への今月の野菜の出荷量は、ねぎやにんじん、大根などが平年を下回る見込みだということです。東京都中央卸売市場の今月5日時点の価格は、平年より▽ねぎが57%、▽にんじんが54%、▽大根が44%、高くなっています。

千葉 柏の農園 約4割のねぎが枯れ収穫できず

夏の記録的な猛暑や雨不足で、各地の野菜の生育に影響が出ていて、千葉県内の農園では4割ほどのねぎが枯れてしまい収穫できなくなっています。

千葉県柏市の農家の後藤貴一さんは、秋から冬にかけて収穫する分のねぎをおよそ2ヘクタールの畑で育てていますが、ことしは厳しい生育不良に見舞われています。

例年はすでに収穫が始まっている時期ですが、ことしは夏の記録的な猛暑や雨不足の影響などで、後藤さんの畑ではおよそ4割のねぎが枯れて収穫できなくなったということです。

さらに、ねぎは気温が25度から30度超えると成長が止まってしまうといい、収穫予定の残りのねぎも例年の4分の3ほどの太さにしか育っていないということです。このため、シーズン全体の売上高は例年に比べ2割から3割ほど少なくなる見通しだとしています。

後藤さんは「本来この時期は畑一面にねぎがならんでいるはずで、ここまでひどい生育状況は初めてです。今後、取引先に納品できなくなる時期があるかもしれないのでとても心配です」と話していました。