【8日詳細】パレスチナ ハマスが大規模攻撃 イスラエルが報復

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる攻撃についてイスラエル軍は「数百人に及ぶとみられるハマスのテロリストがガザからイスラエル側に越境した」と非難しました。
イスラエルは空爆などの報復作戦を進め、双方の死者はあわせて500人以上にのぼっています。

最新の情報をお伝えします。

ハマスの軍事部門 “奇襲攻撃”動画を次々に公開

ハマスの軍事部門、カッサム旅団は、戦闘員たちがガザ地区からイスラエル側に侵入して奇襲攻撃を行った様子だとする動画を次々に公開しています。

そのひとつでは太陽が低く薄暗い時間帯に、戦闘員たちが空き地から電動パラグライダーを使って続々と空に飛びたっていきます。そして、イスラエルが建設したコンクリートの分離壁を越え、イスラエル軍の拠点とみられる施設に降り立ち、銃を構えて内部に侵入していく様子が捉えられています。

また、別の映像は、イスラエルとガザ地区の間の人の行き来を管理するエレズ検問所で撮影されたものとされ、分離壁で大きな爆発が起きたあと、戦闘員たちが走って行く様子や、施設のなかで激しい銃撃戦が起きている様子が記録されています。事務所と見られる場所では、戦闘員が飾られていたイスラエルの旗を引き外しています。

さらに、ガザ地区南部のハンユニス周辺で撮影したとされる映像では、イスラエルがガザ地区との境界近くに設置したフェンスが爆破され、戦闘員たちがイスラエル側に向かい、イスラエル軍の戦車を待ち伏せ攻撃する様子が捉えられています。映像が事実だとすれば、戦闘員たちはガザ地区の北部から南部にわたる広い範囲で、複数の場所からイスラエル側に侵入したことになります。

ガザ地区 高層ビルが崩れる様子が…

パレスチナのガザ地区では7日、イスラエル軍による報復作戦の空爆が続き、現地時間の午後6時すぎに撮影された映像には、地元メディアなどが入る高層ビルが左右から複数の激しいミサイル攻撃を受け、建物が崩れる様子が映っています。

これについてイスラエル軍は「2つの高層ビルにあるハマスのテロ活動の拠点を攻撃した。事前に建物の関係者に避難するよう通告した」とする声明を出しました。

ハマスが声明「戦略的決断を迫られた」

イスラエルでパレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが行ったロケット弾などによる大規模な攻撃について、イスラエル軍はこれまでに200人以上が死亡し、1000人以上がけがをしたとしています。

ハマスは声明で、「イスラエルによるパレスチナ人への犯罪に対抗するため、戦略的決断を迫られた」などと主張し、今回の攻撃を正当化しました。

イスラエル首相「ハマスの作戦指揮所を戦闘機で攻撃」

ガザ地区

一方、イスラエル軍の報道官は8日、「数百人に及ぶとみられるハマスのテロリストがガザからイスラエル側に越境した」と述べ、ハマスからの攻撃を非難しました。

イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争状態にある」として、空爆などの報復作戦を開始し、イスラエル軍は8日、「ハマスの作戦指揮所3か所を戦闘機で攻撃した」と主張しました。

ガザ地区の保健当局「これまでに313人が死亡」

これに対してハマスは8日、イスラエル側からの攻撃の報復として、あらたにイスラエル南部の町に「100発のロケット弾による大規模な攻撃を仕掛けた」と主張し、暴力の応酬が続いています。

ガザ地区の保健当局は8日、イスラエル軍の攻撃により、これまでに313人が死亡、およそ2000人がけがをしたと発表しました。

ガザ地区に住む人たちは

ガザ地区に住む38歳の男性は「攻撃はお年寄りや子どもたちにとって、とても恐ろしいものでした」と話していました。また、40歳の男性はイスラエル軍の空爆で破壊されたビルの前で、「ここは軍用施設ではなく女性用の靴屋が入っていた建物です。イスラエル軍はガザの人々と生活を破壊しようとしている」と話していました。

レバノン ヒズボラ「イスラエル北部の軍事施設に砲撃」

イスラエルの隣国、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは8日、イスラエル北部にある軍事施設に対し、砲撃を行ったと発表しました。

ヒズボラは声明で「我々はパレスチナ抵抗運動との連帯を示すため、軍事レーダー施設など3つの目標に対し、大量の砲撃を行った」と発表しました。今のところけが人などの情報はありませんが、この攻撃に対し、イスラエル軍もヒズボラの拠点を無人機で攻撃したと発表しました。

ヒズボラはイスラエルと国境を接するレバノンの南部を拠点に、イランの支援をうけて勢力を拡大していて、2006年にはイスラエルとおよそ1か月にわたり、大規模な戦闘を繰り広げています。

今後、ヒズボラが攻撃を本格化させれば、イスラエルは国の南北から攻撃を受けることになるうえに、緊張が地域に拡大する事態も懸念されます。

エルサレムでは不安の声

ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに対して大規模な攻撃をしかけたことについて、エルサレムに住む44歳のイスラエル人の男性は「このようなことが起こりえるという最悪の想定はあったが、全く兆候がなく、とても衝撃を受けています。人質になった人たちのことを心配しています」と不安そうに話していました。

また17歳の娘は「何が起きているか分からずとても怖かったです。兵役に就いている友人も多いですし、自分も現場にいたかも知れないと思うと、恐ろしいです」と話していました。

岸田首相 SNSに投稿「一般市民に多大な被害 強く非難」

岸田総理大臣は旧ツイッターの「X」に、「ハマスなどパレスチナ武装勢力がガザからイスラエルを攻撃し、罪のない一般市民に多大な被害が出ており、強く非難する。多くの方々が誘拐されたとも報じられており、早期解放を強く求める。またガザ地区でも多数の死傷者が出ていることを深刻に憂慮しており、全ての当事者に最大限の自制を求める」と投稿しました。

上川外相「すべての当事者に最大限の自制を求める」

上川外務大臣は8日午前、記者団に対し、「ハマスを含むパレスチナ武装勢力がガザ地区からイスラエルに向けて多数のロケット弾を発射するなどして、罪のない一般市民に多大な被害が出ており、強く非難する。また、多数の人々がハマスなどにより誘拐されたと報じられており、早期の解放を強く求める」と述べました。

一方で、「イスラエル軍の攻撃により、ガザ地区で多数の死傷者が出ていることを深刻に憂慮している」と述べました。

そして、「これ以上の被害が生じないよう、すべての当事者に最大限の自制を求める。わが国は引き続き在留邦人の安全確保に万全を期していくとともに、イスラエル、パレスチナ双方への働きかけを強化し、国際社会とも連携しつつ事態の早期沈静化に向けて尽力していく」と強調しました。

専門家「停戦が成立するまでには時間がかかる」

防衛大学校の立山良司名誉教授は、今回の、ハマスによるイスラエルへの攻撃について、イスラエル側が兆候をつかんでいなかったことなどを含めて「いままでには全く考えられなかったことだ。イスラエル側にとっては相当なショックだったと思う」と述べました。

そのうえで、今回の攻撃の背景の1つについてイスラエルがアラブの盟主とされるサウジアラビアと最近、国交正常化に向けた動きを活発化させていることへの危機感があると指摘します。その理由について「ハマスにはガザの問題が取り上げられず見捨てられていく可能性があるという焦りがありここで大規模な軍事作戦をやれば、そうした流れを食い止められると考えたのではないか」と述べました。

今後の見通しについては、「ハマスによるイスラエルの攻撃は、大規模なものとしては長くは継続しないと思うが、イスラエルは人質がどこにいるか分からず、やみくもに入って軍事攻撃を続ければ人質の命も危ない」と述べ、イスラエル軍がガザ地区で地上部隊による作戦をすぐに展開する可能性は低く、当面は空爆などを続けるという見方を示しました。

そして、「攻撃の規模は縮小していくと思うが、停戦が成立するまでには時間がかかると思う」と話し、事態は長期化するという見通しを示しました。

そのうえで国際社会に向けては、占領による非人道的な状態や中東和平に関心を持ち続け根本的な問題の解決に向けた努力が必要だと訴えていました。

テルアビブの空港 欧米の航空会社 多くの便が欠航

イスラム組織ハマスと、イスラエルとの間で攻撃の応酬となっている影響で、イスラエル最大の商業都市テルアビブの空港では、アメリカのほか、ドイツやフランスなどヨーロッパの航空会社が運航する多くの便が欠航しています。

今回の事態を受けてアメリカ連邦航空局は7日、イスラエル付近を飛行する航空会社に対し、「厳重な警戒」を求めるとともに、空域が閉鎖される場合に備えて現地の管制と連絡を取るよう呼びかけました。

一方、イスラエルのエルアル航空はホームページで、「定期便は予定どおり運航している」と発表し、乗客の求めがあれば搭乗便の変更を受け付けるとしています。

各国の反応は

各国の反応です。

タイ外務省 「タイ人1人死亡 少なくとも11人が連れ去られた」

タイ外務省は8日記者会見を開き、イスラエルでガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる攻撃で、タイ人1人が死亡したほか、8人がけがをしてうち5人が病院で治療を受けていると明らかにしました。

また、少なくとも11人がイスラエル側に侵入した武装勢力によってガザ地区に連れ去られたということです。

タイ政府によりますと、イスラエルでは農業や建設業で3万人近いタイ人が働いているということで、セター首相はタイ人が迅速に避難できるよう救援機の準備を空軍に指示しました。

中国外務省「緊張と暴力の激化を深く憂慮 直ちに停戦を」

中国外務省は8日、声明を発表し「パレスチナとイスラエルの間の緊張と暴力の激化を深く憂慮している。すべての関係者に対し冷静さと自制心を保って直ちに停戦し、これ以上、事態を悪化させないよう求める」としています。

そして、紛争の根本的な解決方法は、パレスチナ国家の樹立による「2国家共存」だとした上で「国際社会は和平交渉の早期再開を促し、恒久的な平和への道を模索すべきだ。中国は今後も国際社会と協力し不断の努力を続けていく」としています。

中国は、中東への関与を強めていて、ことし6月には習近平国家主席がパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長と会談し、パレスチナ問題の解決に向けた国際的な和平会議の開催などを提案しています。

イスラエル ネタニヤフ首相「ハマスに激しい復しゅうを行う」

イスラエルのネタニヤフ首相は7日夜国民向けに演説し、「われわれはハマスに激しい復しゅうを行う。亡くなった人々に哀悼の意を表すとともに、人質の無事を祈っている。この戦争は長期化するが、われわれは勝利するだろう」と述べました。

アメリカ バイデン大統領「イスラエルへの支援を惜しまない」

アメリカのバイデン大統領は7日午後、ホワイトハウスで会見し、イスラム組織ハマスを強く非難したうえで「アメリカはイスラエルとともにある。われわれはイスラエルへの支援を惜しまない」と述べました。

また、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談した際、そうしたアメリカの立場を伝えたと明らかにしたうえで「イスラエルは自国と国民を防衛する権利を完全に有する。テロが正当化されることは決してない。イスラエルの安全保障に対する支援は強固で、揺るぎないものだ」と強調しました。

そして「イスラエルに敵対するいかなる勢力も今回の攻撃の機会に乗じて有利な立場を得ようなどと考えてはならない。世界が注視している」と述べました。

国連 グテーレス事務総長も非難 安保理開催へ

パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃について国連のグテーレス事務総長は7日、報道官を通じて声明を出し「市民が攻撃され、誘拐されたという報道にがく然としている」としたうえで「最も強いことばで非難する」としています。

そして、暴力で紛争は解決できないとして「さらなる事態の悪化を避けるためあらゆる外交努力を要請する」と強調しました。

一方、国連の安全保障理事会では、対応を協議する緊急の会合が8日午後、日本時間の9日午前に開催されることになりました。