物流「2024年問題」 船舶・鉄道の輸送量倍増 具体策経済対策に

政府は物流問題の関係閣僚会議を開き、トラック運転手の人手不足が懸念される「2024年問題」への対応策をまとめました。長距離輸送でトラックの代わりとなる船舶や鉄道の輸送量を、今後10年程度で倍増させる目標を掲げ、必要な具体策を新たな経済対策に盛り込む方針です。

総理大臣官邸で開かれた会議では、来年4月に実施されるトラック運転手などの時間外労働の規制強化に伴って、人手不足が深刻化し輸送量の減少が懸念される「2024年問題」への緊急の対応策をまとめました。

この中では、2030年度には輸送量が30%以上減るおそれもあるとして、輸送手段をトラックから船舶や鉄道に振り替える「モーダルシフト」を推進し、今後10年程度で船舶や鉄道の輸送量を倍増させる目標を掲げました。

このため、トラックと船舶、鉄道が共同で使えるサイズのコンテナの普及に向けて事業者を支援するとしています。

また、宅配業者の負担となっている再配達を減らすため「置き配」や、ゆとりのある配送日を指定した利用者にポイントを付与するサービスの実証事業を行うとしています。

さらに、業界全体で適正な運賃設定や賃上げが進むよう法律の整備を進める方針も盛り込みました。

岸田総理大臣は「物流は国民生活や経済を支える重要な社会インフラで物流の停滞が懸念される『2024年問題』は喫緊の課題だ。即効性の高い取り組みを経済対策に盛り込み、速やかに実行に移していく」と述べました。

長年根付いた商慣習 見直す施策も

政府がまとめた物流問題の対応策では、荷主側の企業と中小の運送会社との関係を是正し、長年根付いてきた商慣習を見直すための施策も盛り込まれました。

具体的には、トラック運転手が積み降ろしの順番を待ついわゆる「荷待ち」など長時間にわたることを問題視し、荷主側の大手企業に対して「荷待ち」などの発生を抑えるよう、計画を作成することを義務づけます。

不十分だった場合には、国が指導や勧告などが行えるよう法律を整備する方針です。

また、中小の運送会社の場合、コストに見あった適正な運賃が支払われないケースもあることから、何重にもわたる下請け構造を是正するとともに契約内容を明確化し電子データで契約書を残すよう求めます。

さらに、11月と12月を荷主や元請け業者に対する監視強化の期間に定め、「トラックGメン」と呼ばれる国土交通省の担当者が適正な取り引きを妨げていないかをチェックし、必要に応じて荷主などへの働きかけや要請を行っていくことにしています。

斉藤国交相「取り組みを具体化し着実に進めたい」

斉藤国土交通大臣は6日取りまとめられたトラック運転手の人手不足が懸念される「2024年問題」への対応策のねらいについて「今回、緊急的に取り組むべき対策を決定した。物流は国民生活や経済を支える重要な社会インフラであり、『2024年問題』への対応は喫緊の課題となっている」と述べました。

そのうえで「今後も運送業者に支払われる運賃の適正化や賃上げなどについて、関係省庁と連携するとともに事業者の声も聞きながら、取り組みを具体化して着実に進めていきたい」と述べました。