札幌市 2030年冬の五輪招致断念 2034年以降を目指す方針

2030年冬のオリンピック・パラリンピックの招致を目指してきた札幌市は、東京大会をめぐる不祥事などを受けて十分なPR活動が行えず、市民に理解を広げることが難しいとして、2030年大会の招致を断念し、2034年以降を目指す方針を固めました。

札幌市は2030年冬のオリンピック・パラリンピックの開催を目指して招致活動を行ってきましたが、2021年夏の東京大会をめぐる汚職や談合事件などを受けて、2022年12月から機運醸成のための活動を休止し、透明性や公平性を確保しようと大会経費や運営体制の見直しを進めてきました。

一方で、PR活動を十分に行えない状況は続いていて、関係者によりますと、札幌市は市民に理解を広げることが難しいとして、2030年大会の招致を断念し、2034年以降を目指す方針を固めました。

札幌市の秋元克広市長が来週にもJOC=日本オリンピック委員会の山下泰裕会長と面会し、こうした意向を伝えるものとみられます。

これまで山下会長は2030年大会の札幌招致について、極めて厳しい状況にあるとして、2034年以降の招致も検討する考えを示していました。

2030年大会 各国の招致の動きは

2030年冬のオリンピック・パラリンピックについては、札幌市のほか、アメリカのソルトレークシティーに加え、ことしに入ってスウェーデンとフランスが招致を表明し、IOC=国際オリンピック委員会によりますと、開催年を限定せずに招致を検討しているスイスなどをあわせて、少なくとも6つの候補地が上がっているということです。

また、2030年大会の開催地の決定時期については、来年7月下旬に開幕するパリオリンピックまでに決める方針を示す一方で、IOCのバッハ会長は、2030年と34年の開催地を同時に決める場合は、2025年までに決めるとする考えを示しています。

IOCは気候変動への対応策として、複数の地域で持ち回りで大会を開催する案なども検討していて、今月、インドで行われる理事会や総会で議論が行われる予定です。

札幌市の五輪招致 これまでの経緯

1972年に日本で初めて冬のオリンピックを開催した札幌市。2014年、当時の上田文雄市長が2026年冬のオリンピック・パラリンピックの招致を目指す方針を表明しました。

しかし、2018年に最大震度7の揺れを観測した北海道胆振東部地震が発生したことから、その影響などを踏まえて方針を転換し、2030年大会の招致を目指すことを決めます。

その後、2020年1月にはJOC=日本オリンピック委員会によって札幌市が国内候補地に正式決定されます。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で市民との対話事業が中断されるなど、開催実現に向けて機運を高める活動は思うように進みませんでした。

2022年1月に対話事業を再開しましたが、3月に実施した市民1万人を対象にした郵送による意向調査では、賛成が52%余り、反対が38%余りとなりました。

市民の意見が割れるなか、2022年5月には札幌市とJOCが招致への機運を高めるための新たな組織を立ち上げましたが、7月以降、状況は一変します。

2021年夏の東京大会をめぐる不祥事が発覚し、汚職や談合事件に関わったとして組織委員会の元理事などが相次いで逮捕されたことを受けて、札幌市とJOCは、まずは大会の運営体制の見直しを進める必要があるとして、2022年12月、積極的なプロモーション活動を休止しました。

活動が止まっていた2023年4月には、札幌市長選挙で招致の推進を掲げた現職の秋元克広市長が3回目の当選を果たしましたが、JOCの山下泰裕会長は9月、招致活動が進んでいないことから、2030年大会の開催は極めて厳しい状況にあるという認識を示していました。

一方、札幌市はあくまでも2030年大会の招致を目指すとして、7月から公開討論会や市民向けの説明会などを開催し、今月には東京大会の不祥事を受けて透明性や公平性を確保しようと、広告代理店への委託のあり方などを盛り込んだ大会運営の見直し案をまとめていました。