【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(6日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる6日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

東部ハルキウ州 6日もミサイル攻撃 2人死亡

ロシアによる攻撃で5日、住民50人以上が死亡したウクライナ東部ハルキウ州で、6日、再びロシアからのミサイル攻撃があり、地元の知事は10歳の子どもと祖母の68歳の女性が死亡したほか、28人がけがをしたとSNSで発表しました。

地元の当局などによりますと、攻撃は短距離弾道ミサイル「イスカンデル」2発によるもので、3階建ての住宅1棟が破壊され、集合住宅2棟が被害を受けたということです。

ハルキウ州では5日、クピヤンシク近郊の集落にロシア軍による攻撃があり、商店やカフェが被害を受け、子どもを含む住民少なくとも52人が死亡したばかりで、ウクライナ側はロシアへの非難を強めています。

これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は6日、ロシアメディアに対して「ロシア軍は民間の目標を攻撃していない。攻撃の対象は軍事インフラ施設や部隊や軍の指導部が集まる場所だ」と主張しています。

プーチン大統領「領土目的ではない」侵攻を正当化

ロシアのプーチン大統領は5日、ロシア南部ソチで国際情勢をテーマに開かれた「バルダイ会議」に出席しました。

プーチン大統領は「ロシアの領土は世界最大で追加の領土を征服することに関心はない」などと述べ、ウクライナ侵攻は領土目的ではないと主張し、正当化しました。

そのうえで「われわれは新しい世界秩序の基礎となる原則について話している。西側諸国、特にアメリカは独断的にルールを決め、こうすべきだと教えてくる。植民地主義的な考えだ」と述べアメリカに対抗する姿勢を全面的に打ち出しました。

また、プーチン大統領は最新の巡航ミサイルなどロシアの核戦力を誇示したほか、ロシアが批准しているCTBT=包括的核実験禁止条約について「理論上、批准は取り消すことができる」と述べ、批准を撤回して新たな核実験に踏み切る可能性も示唆しました。

これを受けてプーチン大統領の側近として知られるボロジン下院議長は6日、SNSで「次の議会でCTBTの批准撤回について必ず議論する。CTBTを批准していないアメリカに対する鏡のような対応となるだろう」と投稿し、欧米側へのけん制を一段と強めています。

会議に参加した日本の研究員「侵攻を正当化しようとしている」

今回のバルダイ会議に日本から参加し、プーチン大統領に直接質問もした、ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員が会議の後、NHKのインタビューに応じました。

畔蒜氏は、プーチン大統領の発言について「ウクライナでの戦争は、今後の世界秩序をめぐる戦いだと再定義することが一番のねらいだった。その世界秩序とは、彼が繰り返し言ってきた、アメリカ主導ではなくすべての国々が参加できる秩序であり、それに向けた象徴的な動きがBRICSだ」と述べ、アメリカと距離を置く国も多いBRICSやグローバル・サウスなどと新たな秩序を作るための戦いだとして軍事侵攻を正当化しようとしていると指摘しました。

また、核戦力を誇示した一連のやりとりについて「ロシアにとって核の抑止力の信頼性が落ちているという危機感がある。西側が直接的に関与しないようけん制するのが一番の目的だと思う」と述、べウクライナ支援を続ける欧米側をけん制するねらいだと指摘しました。

プーチン大統領がCTBTの批准の撤回を示唆したことについては「今後の展開次第では、核実験の再開に向けた地ならしをする余地があるという発言をしたということだ」と述べけん制するねらいが込められているとしています。

畔蒜氏は、演説などを行うプーチン大統領の様子について「アメリカで国内政治が混乱し、ヨーロッパではスロバキアで親ロシア派の政権が誕生するなど、プーチン大統領にとってある種の追い風のようなものが吹いている。良くも悪くも自信を持って受け答えをしたという感じがある」と述べました。

一方、専門家などによる日ロの対話の可能性に関してプーチン大統領に質問したことについて「アメリカとロシアは核の問題があるので政府間の関係が悪化しても民間で対話を補うという伝統が根づいている。いま、日ロの政府間の関係は最低レベルだが、隣国であるロシアは核兵器を持っているし、最近は北朝鮮との関係も強化しようとしている。専門家レベルでも対話のチャンネルは持っておくべきだ」と述べました。

南部ヘルソン州 ロシア軍が民間施設を攻撃 市民に死傷者

ウクライナ南部のヘルソン州では、この数日、ロシア軍の攻撃によって民間施設などが被害を受け死傷する市民も相次いでいます。

ヘルソン州の知事は、ロシア軍の攻撃で病院の建物や救急車が被害を受け、医療従事者2人がけがをしたと5日発表しました。

また、ヘルソン当局によりますと、同じ5日、ロシア軍の攻撃により教育施設が被害を受けたほか、市民2人が死亡したということです。

ヘルソン州の知事は、ロシア軍の攻撃は4日には78回、3日には100回あったとそれぞれ発表していて、住宅街や教育施設、教会などが攻撃されたとしています。

米議会でウクライナ支援の予算成立めど立たず 各国が注視

スペインで5日、ウクライナのゼレンスキー大統領やヨーロッパ各国の首脳による会議が開かれ、参加者からはアメリカ議会でウクライナ支援のための予算案の可決のめどが立たないことについて、懸念の声が聞かれました。

アメリカ議会では野党・共和党の内部対立で下院議長が解任されるなど混乱が続いていて、ウクライナ支援を含む予算案の可決のめどがたっていません。

スペインで開かれた「ヨーロッパ政治共同体」の首脳会議に出席したウクライナのゼレンスキー大統領は、会議後の記者会見で、記者からアメリカからの支援が減る事態への備えができているかを問われ「アメリカの状況は危険だ。アメリカにとってもウクライナにとっても難しい時期になっている。侵攻当初から状況は容易ではなかったので、どんな厳しい時期にも対応する用意はある」と述べました。

一方、EUの外相にあたるボレル上級代表は会議を前に記者団に対し「ヨーロッパはアメリカに取って代わることはできない。ヨーロッパは支援を強化しようとしているし強化することはできるが、アメリカの支援は不可欠だ」と述べました。

参加した首脳からは「アメリカが支援を継続することを疑っていない」などという発言も聞かれましたが、EU加盟国の国民の間ではウクライナへの軍事支援を支持する人の割合が減っていて、支援疲れも指摘されているだけに、アメリカの動きを注視しているとみられます。

「支援疲れ」に結束強調 EU加盟国などウクライナ交え首脳会議

スペインでは5日、ロシアによるウクライナ侵攻後にEU加盟国や周辺国の連携を強化するため設けられた「ヨーロッパ政治共同体」の首脳会議が開かれました。

会議に出席したゼレンスキー大統領は冒頭、各国には立場や意見の違いがあるとしながらも、「重要なのはわれわれが結束することだ。結束と連帯は揺るぎないものでなければならない」と述べ、防空能力の強化のため、いっそうの支援を求めました。

ロシアによる侵攻が長引くなか、EU加盟国ではウクライナへの軍事支援を支持する人の割合は減りつつあり、「支援疲れ」も指摘されています。

会議では開催国スペインのサンチェス首相が「結束しなければならないというわれわれの思いはいっそう強くなっている」と述べるなど、各国の首脳は結束や支援の重要性を改めて強調しました。

ゼレンスキー大統領は各国首脳と個別の会談も行い、このうちドイツのショルツ首相との会談のあと、SNSで、地対空ミサイルシステム「パトリオット」を追加で供与する用意があると表明されたことを明らかにしました。

ウクライナの電力施設復旧に日本が支援 冬を前に変圧設備供与

ロシアによる攻撃で破壊された電力施設の復旧を支援するため、日本政府がウクライナに対して大型の変圧設備を供与し、5日、記念式典が開かれました。

5日は2基が供与され、年末にかけてさらに2基が届けられることになっています。

ウクライナでは去年10月以降、ロシアによる攻撃で発電所などの電力施設が相次いで破壊されて深刻な電力不足に陥り、厳しい冬の寒さの中で、停電や暖房の供給停止が起き、市民は困難な生活を余儀なくされました。

冬の訪れを前に復旧工事が進められていて、日本が供与した変圧設備は電力供給の正常化に向けて活用されることになっています。

ウクライナ東部ハルキウ州 子ども含む住民 少なくとも50人が死亡

ウクライナ内務省は東部ハルキウ州のクピヤンシク近郊の集落で5日午後、ロシア軍の攻撃があり、子どもを含む住民少なくとも50人が死亡したとSNSで明らかにしました。

クリメンコ内相は地元メディアに対して、商店やカフェが被害を受け、現場では当時、追悼式で多くの人々が集まっていたとしています。

ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで、「残忍な犯罪だ。ロシアのテロを阻止しなければならない」と強く非難しました。

また、イエルマク大統領府長官も「ロシアは意図的に住民を殺害したテロリストだ」とSNSに投稿し、非難を強めています。

ウクライナ国防省 クリミアで特殊部隊が上陸作戦

ウクライナ国防省の情報総局は4日、ロシアが一方的に併合した南部クリミアで特殊部隊が上陸作戦を行い、ロシア軍の空てい部隊に打撃を与えたと発表しました。

クリミアでウクライナ軍がロシアの軍事施設などへの攻撃を強める中、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは4日、ロシア海軍の黒海艦隊が、潜水艦やフリゲート艦など複数の艦船をクリミアのセバストポリからロシア南部のノボロシースクに移したと伝えました。

ウクライナによる一連の攻撃を受けた動きだという見方を示した上で、「2014年にクリミアを占領したプーチン大統領にとって驚くべき後退だ」と伝えています。

プーチン大統領「達成できると確信」軍事侵攻続ける考え強調

ロシアのプーチン大統領は5日、ロシア南部ソチで開かれた国際情勢をテーマにした「バルダイ会議」に出席しました。

4時間近くにわたって行われた会議の中で、プーチン大統領はウクライナがことし6月に開始した反転攻勢について、「ウクライナ軍は9万人以上の人や557両の戦車、1900台近くの装甲車を失った」と述べ、ウクライナ側が大きな打撃を受けていると強調しました。

そのうえで、「われわれは目標に向かって自信を持って進んでいる。必ず達成できると確信している」と述べ、軍事侵攻を続ける考えを強調しました。

また、プーチン大統領はこれまでにおよそ33万5000人が契約軍人としてロシア軍に参加したと述べました。

一方、プーチン大統領は「数年前に発表した最新の戦略兵器について、作業がほぼ完了した」と述べ、原子力を動力源とし、核弾頭を搭載できる最新の巡航ミサイル「ブレベストニク」の最終実験に成功したとするなど、ロシアの核戦力を誇示し、対立する欧米側をけん制しました。