J2のロアッソ熊本は、素早い攻守の切り替えから得点につなげるスタイルを磨き、ことしの天皇杯では、次々と格上のJ1のチームを打ち負かしてきました。
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サッカー天皇杯 ロアッソ熊本“あのときの恩は成長した姿で”
サッカー日本一を決める天皇杯で、J2のロアッソ熊本が快進撃を見せています。次に臨む8日の準決勝は、対戦相手となるJ1の柏レイソルのホームスタジアムで行われます。
ふだんはレイソルのチームカラーの黄色で染まるスタンドが、7年前のある日、ロアッソ熊本の赤色で輝いた試合がありました。
(スポーツニュース部 記者 鈴木幹人/熊本放送局 キャスター 渡慶次秋穂)
快進撃で準決勝へ
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準々決勝では現在J1で首位を走るヴィッセル神戸をペナルティーキック戦で退けて準決勝に進んできました。
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準決勝で対戦するのはJ1の柏レイソル。
ロアッソはアウェーの三協フロンテア柏スタジアムに乗り込みます。
実は、ロアッソは7年前に熊本からおよそ900キロ離れたこのスタジアムでホームゲームを開催した経験があります。
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熊本出身で育成チームからロアッソに在籍する上村周平選手は今回の試合に特別な思いを持っていました。
ロアッソ熊本 上村周平選手
「勝負の舞台で、レイソルとやり合っている姿を見せるのが、一番の恩返しかなと思います」
ゆかりの地で“成長した姿”を
2016年4月、ロアッソの地元、熊本は地震で大きな被害を受けました。
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ロアッソのホームスタジアムには次々と救援物資が運び込まれ、とても試合ができる状態ではありませんでした。
施設も安全性を確認する必要がありました。
そんな中、救いの手を差し伸べたのが柏レイソルでした。
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柏レイソル運営担当 河原正明さん
「ロアッソの当時の社長から『なんとか力を貸してくれないか』というお電話をいただきました。我々の方でスタジアムをお貸しをするということになりました。レイソルも実は、その1年半前の2014年12月に、新潟で行う予定だったJリーグの試合が大雪で延期になってしまって、鹿島アントラーズがスタジアムを用意して試合ができたということがありました。Jリーグではそういった困ったときにお互いを助けるという風土がありましたので、今度は柏レイソルの番だなという思いでした」
地震の被害を受けた熊本を元気づけるためにも重要だった一戦。両チームのスタッフは何度もミーティングを重ねました。
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J1とJ2でカテゴリーが違う両チーム。不慣れな場所での試合の開催を成功させようと設営のための機材や備品の確認、選手や関係者のホテルの手配などを綿密に行いました。
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ロアッソ熊本 岩水香織さん
「やっと試合が決まったという状況から打ち合わせを重ねました。前日にレイソルのホームゲームがあって、それから設営だったのですが『クラブ総出で手伝うので大丈夫だよ』と言っていただきました。私たちがよく知らないスタジアムでホームゲームをするのは不安でしたが、すべてしっかり設営してもらい安心しました」
みんなの支援で“ホームスタジアムのように”
迎えた2016年5月22日。
ロアッソ熊本にとって地震後、およそ1か月ぶりとなるホームゲーム。場所はいつもと違う“柏”。
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急きょの開催にも関わらず、試合にはおよそ8200人が訪れました。
ボランティアにも協力してもらい、被災地を支援するための募金活動などが行われました。
そのボランティアの中には小学生の時からロアッソを応援していた女性がいました。
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熊本出身の坂本安里紗さんは、当時は東京の大学に通っていました。
大好きなロアッソ、そして熊本の復興の役に立ちたいと柏のスタジアムを訪れ、ボランティアとしてグッズの販売にあたりました。
そのときの光景にサッカーが持つ力を感じました。
ロアッソ熊本 サポーター 坂本安里紗さん
「ロアッソのサポーターじゃない人も応援に来て、ロアッソのグッズを買ってくれて、そのときにサッカーファミリーの力、熊本への思いやサッカーのつながりを感じる機会になりました」
試合には、ロアッソと対戦相手の水戸ホーリーホックだけではなく、さまざまなチームのユニフォーム姿のサッカーファンが駆けつけました。
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配布された赤いポンチョをかぶっての応援は、ふだんレイソルのチームカラーの黄色で染まるスタンドにロアッソカラーの赤い花が咲いているようにも見えました。
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ロアッソの上村選手もグラウンドから見たその光景を目に焼きつけていました。
試合には敗れたものの忘れられない一戦です。
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ロアッソ熊本 上村周平選手
「ほかのJリーグチームのサポーターの方もロアッソを応援してくれて雰囲気を作ってくれていたので、本当にありがたかったなと思います。プレーの内容よりも、またピッチに立ってサッカーができる喜びや毎週のリーグ戦が当たり前ではないんだなと思えて、いろんな思いを抱きました」
いざ準決勝へ それぞれの思いを胸に
7年の時を経て、ロアッソが再び臨む三協フロンテア柏スタジアムでの試合。
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今回の準決勝は、両チームの選手やスタッフ、そしてサポーターにとっても大きな意味を持つ一戦です。
特にロアッソは7年前の恩を“成長した姿で見せる舞台”になります。
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あの試合、ボランティアを務めていた坂本さんは。
ロアッソ熊本 サポーター 坂本安里紗さん
「ロアッソは、みなさんのおかげでここまで強くなったんだよと、ぜひ選手たちに見せつけてほしいと思っています。ゴール裏で跳びはねる気、満々なので、しっかり応援したいです。レイソルもJ1で強いチームだから難しい試合になると思いますが、いつものロアッソらしいサッカーをしてくれれば勝てると信じています」
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ロアッソ熊本 上村周平選手
「ここまで来たら優勝したいという気持ちが強いですし、レイソルとの試合で勝たないと決勝には進めないので、何としても勝ちたいと思います。チャレンジャーだと思っていますし、結果を求めて頑張っていきたいなと思います」