水俣病訴訟 原因企業の「チッソ」が控訴 大阪地裁判決を不服

水俣病と認定されておらず、救済策の対象にもならなかった関西などに住む128人の原告について、大阪地方裁判所が先月、全員を水俣病と認定して国などに賠償を命じた判決を不服として、原因企業の「チッソ」が大阪高等裁判所に控訴しました。

昭和30年代から40年代にかけて熊本県や鹿児島県に住み、その後、関西などに移り住んだ128人は、水俣病に認定されていない人を救済する特別措置法で、住んでいた「地域」や「年代」によって救済の対象外とされたのは不当だとして、国と熊本県、それに原因企業のチッソに賠償を求める訴えを起こしました。

先月27日、大阪地方裁判所は、特別措置法の基準外でも水銀に汚染された魚介類を継続的に食べた場合は、水俣病にり患する可能性があるとする初めての司法判断を示して、原告全員を水俣病と認定し、国と熊本県、チッソに合わせておよそ3億5000万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

このうち6人については、チッソにのみ賠償を命じました。

この判決を不服として「チッソ」は4日付けで、大阪高等裁判所に控訴しました。

「チッソ」は取材に対して「現時点で控訴したかどうかも含めて、お答えは差し控える」としています。

原告や弁護団は、被害者の早期救済を訴え、国などに控訴を断念するよう求めていて、「高齢化する原告たちを生きているうちに救済するには一刻の猶予もないが、それを無視した非人道的な控訴であり、抗議する」とコメントしています。

熊本県は「判決内容を精査し、国と協議を行って10月11日の控訴期限までに対応を決めたい」としています。

松野官房長官「関係省庁で判決内容を精査し対応を検討」

松野官房長官は午後の記者会見で「民間企業の訴訟活動について、政府としてコメントする立場にない。国としては、引き続き関係省庁で判決内容を精査し、対応を検討している」と述べました。