野球 日本代表監督に井端弘和氏 就任「魅力的な侍ジャパンを」

野球の日本代表の監督に、中日などでプレーし、12歳以下の日本代表の監督を務めた井端弘和氏が就任し、「少年からプロまで多くの選手が目標にできる魅力的な侍ジャパンを築いていきたい」と意気込みを述べました。

プロとアマチュアの代表で作る日本野球協議会の「侍ジャパン強化委員会」は4日、都内で会見を開き、日本代表の新しい監督に井端氏が就任したと正式に発表しました。

井端監督は現役時代は中日や巨人で守備の名手として活躍し、去年から12歳以下の日本代表の監督を務めています。

井端監督は会見で就任の要請があったときを振り返り「驚いたとともに、こんなに光栄なことはないと感じた」と話し「全力で務めることが日本野球への恩返しだと思う。今この瞬間も努力している少年からプロまで多くの選手が目標にできる魅力的な侍ジャパンを築いていきたい」と意気込みを述べました。

そして目指す野球について「WBCで優勝したし、それは必ず引き継いでいかないといけない。打つ方でも世界に近づいているし、高い投手力、守備力を生かした緻密な日本の今までの野球と融合させたい」と話しました。

また、4日は井端監督が15歳以下の日本代表の監督も務めることが発表され、初めての兼任監督となります。

これについて、井端監督は「まだ日本代表としての戦い方を伝え切れていないと感じていて、そこは強く要望を出した。これまでの経験を生かして、トップチームでも子どもたちの思いを乗せて戦っていきたい」と話していました。

契約期間は、「プレミア12」が行われる2024年11月までの1年間を前提とするということですが、強化委員会の井原敦 委員長は「大会ごとにベストな日本野球を示したい」として11月、東京ドームで開催される国際大会「アジアプロ野球チャンピオンシップ」など大会ごとに契約を更新していく考えを示しました。

井端監督が指揮をとる日本代表は大会に向けて、11月上旬に宮崎市でキャンプを行う予定だということです。

井端弘和氏とは

日本代表の監督に就任した井端弘和氏は48歳。

1998年に亜細亜大学からドラフト5位で中日に入団し、ショートの名手として荒木雅博選手と長年、二遊間を組んで「アライバ」と呼ばれました。

堅実な守備と、しぶといバッティングを持ち味に活躍し、2014年から巨人でも2シーズンプレーしました。

17シーズンで1896試合に出場し、通算成績は打率が2割8分1厘、1912安打、ホームラン56本、510打点で、ゴールデン・グラブ賞に7回、ベストナインにも5回選ばれました。

2013年 第3回WBC=ワールド・ベースボール・クラシック

国際大会の経験も豊富でベスト4まで進んだ2013年の第3回WBC=ワールド・ベースボール・クラシックではDHでベストナインに輝きました。

2015年に引退し、翌年から巨人の内野守備・走塁コーチを務めたほか、2017年からは日本代表の内野守備・走塁コーチも務め、2021年の東京オリンピックでは金メダル獲得に貢献しました。

そして、2022年からは12歳以下の日本代表の監督を務めていて日本代表の指導者としてもキャリアを積み重ねていました。

日本代表 歴代の監督と成績

2006年にWBC=ワールド・ベースボール・クラシックが始まってから、日本代表はこれまで7人の監督が指揮を執ってきました。

第1回WBCで日本代表を指揮したのが現在ソフトバンクの会長を務める王貞治氏でした。

イチロー選手や松坂大輔投手などを率い初代の世界一に導きました。

2008年の北京オリンピックでは星野仙一氏が監督を務め、メダルを獲得することができませんでした。

翌年、2009年の第2回WBCでは、当時も巨人の監督を務めていた原辰徳氏が指揮し、決勝で韓国を破って2大会連続の世界一を果たしました。

2013年の第3回WBCでは広島で監督経験のある山本浩二氏が指揮をとり、準決勝でプエルトリコに敗れ、初めて世界一を逃しました。

その後、日本代表が常設化されると同時にプロ野球では監督経験がない小久保裕紀氏が監督に就任し、2017年の第4回大会では予選リーグを初の無敗で突破したものの、準決勝でアメリカに敗れて2大会連続のベスト4でした。

2021年に行われた東京オリンピックでは稲葉篤紀監督が指揮をとり、今回監督に就任した井端弘和氏が内野守備・走塁コーチを務めて日本を金メダルに導きました。

そしてことし、6年ぶりに開催された第5回大会では日本ハムの監督を10年間務めた栗山英樹氏が指揮をとり、大谷翔平選手やダルビッシュ有投手などを中心に日本を14年ぶり、3回目の世界一に導きました。

監督の人選は難航 大会ごとに契約更新の考え

新監督の選考は、栗山英樹監督のもと14年ぶりの世界一を達成したことし3月のWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの直後から始まりました。

「侍ジャパン強化委員会」は
▼国際大会などの海外経験
▼求心力
▼知名度
▼発信力
▼アマチュア野球界を含めた日本野球界への理解
▼侍ジャパン事業への理解
の6点を要件に定めました。

新監督の決定は当初8月中を目指していましたが、WBCで劇的な形で3大会ぶりの優勝を果たした栗山監督の後任を担う重圧や長期の契約期間などがネックとなって人選は難航し、新監督の初陣となる「アジアプロ野球チャンピオンシップ」を1か月あまり後に控えたこのタイミングまでずれ込むことになりました。

井原強化委員長は4日の会見で井端監督の契約について「来年11月末日、プレミア12までの1年間を前提としている」とした一方、今後10年ほどは連続して大きな国際大会が続く可能性があるとして「10年先に視点を置いて逆算して考えると、2、3年のスパンで常設監督の任期を捉えず、国際大会ごとにその時点でベストの日本野球の姿を示すことが侍ジャパンのあるべき姿と考えた」と述べ、大会ごとに契約を更新していく考えを示しました。

2013年に日本代表が常設化されてからは、WBCやオリンピックなど大規模な大会を見据えて監督選びが進められ数年単位で契約が結ばれてきましたが、今後は状況に応じて短期間で監督が交代していくことも考えられます。

日本代表が常設化された当初は一定期間監督を固定し、長期的な視点でチーム強化を進めてくことが狙いの1つでしたが、監督人事の難航も背景に、ここに来て代表の強化が新たなアプローチで進められることになり、その成果が注目されます。

井端監督は「まずは1年やってみて、その中で評価していただければと思っている。話をいただいて日もたっておらず、WBCについては何も考えていない。まずは来月の大会をどのように戦うか考えていきたい」と目の前の大会に集中することを強調していました。