「老犬ホーム」介護する飼い主の“選択肢”に

医療の進歩やエサの改良など飼育環境がよくなったことで、犬の高齢化が進んでいます。

ペットフードを製造・販売する会社でつくるペットフード協会によりますと犬の平均寿命は2010年に13.87歳。それが去年には14.76歳と、この10年ほどでおよそ1歳、人間に換算して4歳ほど延びています。

こうした中、高齢化によって介護が必要な犬も増えていて世話ができなくなった飼い主に代わって有償で犬の世話をする施設もあります。

山口市の老犬ホームには、高齢で足腰が弱くなったり認知機能が衰えたりして介護が必要になった犬などおよそ15匹が預けられています。
飼い主自身も高齢になり育て続けることが出来ず、施設に預けざるを得なくなった犬もいます。
代表の郡真美さんは、飼い主の事情で手放される犬の存在を知り、命を救うと共に飼い主にも寄り添いたいと6年前に施設を立ち上げました。

「余生を誰かに預けることにはなるけれど自分が最期まで飼い主として責任を持って行けるような選択肢がないかなと思って」

犬の状態に合わせた世話 心がける

施設では、犬の状態に合わせた世話を心がけています。
散歩は1日に4回行います。外に出ることで、匂いや音などの刺激を感じさせることが出来ます。足腰が弱り、自力で歩くことが出来ない犬にはハーネスをつけて介助します。
えさの準備は気の抜けない大事な作業です。

獣医師に処方された薬を確実に飲ませるために一錠ずつえさに混ぜて与えます。消化機能やのどの動きが弱くなった犬には、ドッグフードをふやかしたものを食べさせます。

「日々変化していくので、きのうはすごく元気だったのにきょうはご飯も食べられなくて呼吸もあんまりとか。新規で来られてまだ状況がつかめない子とかは泊まって夜間も見ることにしています」

飼い主「ちびはおとなしい性格だった」

去年10月からこの施設で過ごしている16歳の「ちび」です。
足腰が弱り、自力で立つことや排せつができません。
ちびはこの施設に入る前まで下関市内で過ごしていました。

飼い主の桝本則雄さんです。
「おとなしい性格でしたね。散歩中みんなからかわいがられて。家族ですよね。もうちょっと家でみようと格闘していたんですけどもうどうしようもなくなって。家族で話し合ってもう預けようとなった」

庭で走り回ったりボールで遊んだりするのが大好きだったというちび。15歳を迎える頃から「ある変化」があったといいます。

「狭いところに入って出られなくなったり、いろいろな所に排せつしたりですね。『ぎゃああ』といって叫ぶ、夜中じゅう叫ぶ。近所みんなに迷惑をかけて。もう睡眠不足になって昼間でもぼーっとしたり、ノイローゼ気味になったり…」

およそ1年間懸命の介護を続けましたが、悩んだ末に、老犬ホームに預けることを決めました。

今では月に1回、ちびに会うために施設に足を運んでいます。桝本さんは施設に預けたことで精神的な負担が減り、ちびの大切さを改めて感じることができたといいます。

郡さん「最期まで穏やかな日々を送ってほしい」

施設に入ってからもちびの足腰は衰え、今は自力で歩けませんが、好きだった散歩は郡さんに介助されて行くようになりました。

郡さんは、預けられた犬に最期まで穏やかな日々を送ってほしいと言います。

「犬が犬らしくというか、その子の尊厳というか、きっとこの子がそうしたいであろうということを大事にしながらお世話していきたいなと思っています」