「貯蓄から投資へ」新NISAでどうなる?

10月4日は「証券投資の日」(104=トウシ)。日本証券業協会が数字のごろあわせで定めています。日本の個人金融資産が過去最高を更新する中、全体の半分以上が「現金・預金」となっていて、欧米に比べて投資の割合は低い状況です。

2024年には個人投資家向けの優遇税制を拡充した新しいNISA(以下、新NISA)が始まります。貯蓄から投資へのシフトは進むのでしょうか。

2024年から「新NISA」へ

都内で開かれた証券業界の関係者などによるトークイベントです。新NISAが2024年1月から始まるのを前に投資を身近に感じてもらおうと、日本証券業協会が開きました。
イベントでは、証券取引所や証券業界の関係者やタレントの丸山礼さんが、安定した資産形成に向けては「長期・積み立て・分散」の投資がポイントだと解説していました。

岸田総理大臣もビデオメッセージを寄せ「多くの方々に新しいNISAを活用してもらいライフプランを踏まえた資産形成手段として役立てていただきたい。家計の資産形成がさらなる投資や消費につながる成長と分配の好循環に向けて取り組んでいく」とあいさつしました。

新NISA 非課税保有限度額は1800万円に

岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の柱となる新NISA。
「NISA」は個人の資産運用を後押しするため、税制の優遇制度が設けられていることが特徴で、購入した株式や投資信託などの売却益や配当金が一定の範囲内で非課税となります。

2024年1月からはこの「NISA」が拡充されます。

まず、長期の積み立てを目的に投資信託だけを購入対象とする「つみたて投資枠」と、上場企業の株式などを購入できる「成長投資枠」となり、どちらの制度も利用できるようになります。
その上で、制度は恒久的なものとして、非課税で保有できる期間も無期限となります。
年間の投資の上限額は、「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」は240万円、合計で360万円です。
非課税で保有できる資産の限度額は、2つの枠の合計で最大1800万円になります。

「貯蓄」から「投資」へ

政府は、新NISAで貯蓄を投資に振り向けて個人の資産形成や経済成長を後押しする施策を進めたいとしています。
しかし、日本の個人金融資産は一貫して現金と預金の割合が高い状態が続いています。

日銀が3か月ごとに公表する「資金循環統計」によりますと、個人が保有する預金や株式、保険などの金融資産は、2023年6月末の時点で2115兆円と、過去最高を更新しました。

日本の個人金融資産全体に占める割合をみると、
▽「現金・預金」は52.8%
▽「株式など」は12.7%
▽「投資信託」は4.7%
などとなっています。

これに対して
アメリカは2023年3月末時点で
▽「現金・預金」は12.6%
▽「株式など」は39.4%
▽「投信信託」は11.9%

ユーロ圏では2023年3月末時点で
▽「現金・預金」は35.5%
▽「株式など」は21%
▽「投資信託」は10.1%
などとなっています。

背景には「投資に慎重な日本人」

背景として、バブル崩壊後に株価が大きく値下がりし、証券業界で不祥事が相次いだことなどを背景に投資に慎重な人が多いことが指摘されています。加えて、デフレが長期化し現金の実質的な価値が上がっていたことなどから、相対的にリスクの高い株式などへの投資が敬遠されてきたのではないかという指摘もあります。
今後の焦点は、新NISAで個人が保有する巨額の現金や預金がどう動くかです。

投資の理解進むか 金融教育も強化

貯蓄から投資へのシフトを進めるには、幅広い世代に投資や資産形成に関する知識をどう身につけてもらうかも課題となります。
どこまでリスクをとって投資できるか、その「許容度」を把握し金融商品の仕組みやリスクについてもしっかり理解しておくことが重要です。

しかし、日本では欧米に比べて学校や職場などで金融に関する教育が十分に行われていないとも指摘されています。こうした中、2022年度から高校で金融教育の授業が必修となったほか、証券会社をはじめとする金融機関などの間でも、各地の学校などで金融教育を行う取り組みを強化しています。政府は金融教育を進める中核的な組織として「金融経済教育推進機構」を来年中に設置する方針で、関連する法律の改正案を次の臨時国会で成立させることを目指しています。