講談社元次長 やり直し裁判始まる 改めて無罪主張

7年前、人気漫画雑誌の元編集次長が自宅で妻を殺害したとして殺人の罪に問われ、最高裁判所で「審理が尽くされていない」として審理のやり直しを命じられた裁判が東京高等裁判所で始まり、元次長側は改めて無罪を主張しました。

講談社の人気漫画雑誌の編集次長を務めていた朴鐘顕被告(48)は7年前、東京の自宅で妻(当時38)の首を圧迫して殺害したとして殺人の罪に問われ、「妻は首をつって自殺した」として一貫して無罪を主張しています。

1審と2審は現場の状況などから懲役11年の判決を言い渡しましたが、最高裁判所は、「2審が根拠とした被害者の顔の血痕について検察、元次長側ともに立証しておらず、審理が十分に尽くされたとは言えない」として審理のやり直しを命じました。

3日から東京高等裁判所でやり直しの審理が始まり、それぞれが主張を取りまとめた書類を提出しました。

元次長の弁護士は、「この裁判では顔の痕跡について調べる可能性があるが、救急搬送や検視の時の写真は事件から時間がたったもので、少ない手がかりから推測することは、限界があり危険だ。痕跡の一つ一つから言えることを厳密に考え、一刻も早く無罪の判決を言い渡してほしい」などと述べました。

一方検察は、これまでと同様に元次長が妻を殺害したとして、有罪を主張する姿勢を示しました。

争点と裁判の経緯

裁判資料などによりますと、2016年8月、講談社で編集次長を務めていた朴鐘顕被告の自宅に119番通報を受けた消防隊が駆けつけると、階段の下で妻の佳菜子さんが死亡していました。

死因は首の圧迫による窒息死。

妻の額には長さ3センチほどの深い切り傷がありました。

未明の出来事で自宅には家族しかいませんでした。

寝室のマットレスやカバーには、人が窒息した状態で生じることがある尿や唾液混じりの血の痕がありました。

裁判では、
▽妻が元次長に殺害されたのか、
▽それとも首をつって自殺したのかが大きな争点となりました。

▼検察は、元次長が寝室で妻の首を圧迫して殺害し、その後階段から落とす偽装工作をしたと主張。

▼一方、元次長側は、寝室で包丁を持った妻ともみ合いになり、別室に避難したところ、妻が階段の手すりに衣類を巻きつけ、首をつって自殺したと主張しました。

審理のやり直しを命じた最高裁判所が指摘したのは、妻の額の傷からの血の痕でした。

2審の東京高等裁判所は、「妻は額にけがをしているのに顔や手に血が流れたり拭ったりした痕がない。首をつって自殺したならば傷から顔を伝って血がしたたり落ちるはずだ」として自殺の主張を否定しました。

しかし最高裁判所は、顔の血痕については検察、元次長側ともに立証しておらず、提出された写真も不鮮明で、血痕があるかどうか判断する根拠になりえないとしました。

やり直しの審理では顔の血の痕がどのような状況だったのか改めて調べるとみられ、有罪か無罪かを判断することになります。