維新 鈴木宗男参院議員 党に無断で渡航中止勧告のロシア訪問

日本維新の会の鈴木宗男 参議院議員が、政府が渡航中止勧告を出しているロシアを訪問し、外務次官と会談しました。日本維新の会は、党に無断で訪問したとして処分を検討することにしています。

また、日本政府はロシアの出方を注視するとともに、厳しい対ロ制裁を継続する方針です。

ロシア外務省などによりますと、日本維新の会の鈴木宗男・参議院議員は、ロシアを訪問し、2日にルデンコ外務次官と会談しました。

会談でロシア側は、ウクライナ侵攻をめぐる日本による対ロ制裁について「アメリカに押しつけられた反ロシアの路線だ」と批判し「日本の国益に合致しない」などと主張したということです。

去年2月のウクライナ侵攻開始後、日本の国会議員のロシア訪問が明らかになったのは初めてです。

鈴木氏「手続きは秘書が時間的に遅れた」

鈴木氏は3日、首都モスクワで記者団の取材に応じ、モスクワでは、日本などアジア地域を担当している外務省のルデンコ次官などと2日に会談したことを明らかにしました。

鈴木氏によりますと、ルデンコ次官との会談では、北方領土の元島民らが先祖の墓を訪れる「北方墓参」の再開を求めたのに対して、ルデンコ次官は「墓参の枠組みは残っているが昨年来の日本側の判断、反応によっていまは停止している」と主張したということです。

また、ロシア政府が協定の履行を停止している北方四島周辺での安全操業については「日本の姿勢が問題でいまは交渉に入っていない」と述べたということです。

一方、今回のロシア訪問について日本維新の会が党に無断で訪問したとして処分を検討するとしていることについて鈴木氏は「維新に対する手続きは秘書が時間的に遅れた。5日に日本に帰るので馬場代表などと会うべく日程をとっている。話を聞きたい」と述べました。そして「こんなときだからこそ対話が必要だという思いで来た。率直な意見交換ができただけでも甲斐はあった」と述べました。

日本維新の会は、党に必要な届け出がないまま、渡航中止勧告が出ているロシアを無断で訪問としたとして、帰国後に本人から事情を聞いた上で、処分を検討することにしています。

鈴木氏は「手続きは、秘書が時間的に遅れた」と述べていますが、党内からは厳しい処分を求める意見も出ています。

政府内には警戒感も

松野官房長官は、3日の記者会見で「ロシア全土にレベル3、渡航中止勧告以上の危険情報を発出していて、どのような目的であれロシアへの渡航はやめていただくよう国民に求めてきている」と述べ、国会議員も対象に含まれるという認識を示しました。

政府に対し、鈴木氏側から事前の連絡などはなかったということです。

ロシアによる侵攻をめぐって鈴木氏はこれまでウクライナ側にも責任があるという認識を示していることから、日本政府内には国際社会に誤ったメッセージを与えかねないとの警戒感も出ています。

一方で「一議員のスタンドプレーだ」との冷めた見方もあり、政府は今後のロシアの出方を注視するとともに、G7=主要7か国や国際社会と結束してロシアへの厳しい制裁を継続する方針です。

上川外相「政府として答える立場にはない」

上川外務大臣は記者会見で「鈴木宗男参議院議員のロシア訪問の目的などについて政府として答える立場にはない」と述べました。

その上で「ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ。わが国はG7をはじめとする国際社会と連携しつつ、ロシアに対して厳しい制裁を行うなどの外交的取り組みを進めてきており、今後もしっかりと進めていきたい」と述べました。

自民 茂木幹事長「望ましいことではない」

自民党の茂木幹事長は記者会見で「ロシアには『危険情報』が出されており、鈴木議員がどのような経緯や目的で訪問したかは存じ上げないが、望ましいことではない」と述べました。

立民 岡田幹事長「維新の中で議論されるべき」

立憲民主党の岡田幹事長は記者会見で「党に届け出がなかったという話も出ているが、それは日本維新の会の中で議論されるべき話だ。鈴木氏がロシアに行ってどういう話をし、その中身しだいで国益を損ねるようなことがあれば非常に問題になるが、現時点では分からないのでコメントしかねる」と述べました。
一方で「鈴木氏がロシアを訪問したことを正当化している訳ではないが、ロシア側と何もしなくていいのかというと、一般論としてはそうは言えない。私はプーチン大統領と岸田総理大臣が虚心坦懐に話すことも必要ではないかと思っている。例えばトルコのエルドアン大統領は双方と会っていろいろ調整していて、日本が何もできないでいる状況で本当にいいのかということは議論がわかれるところだ」と指摘しました。

公明 山口代表「決して望ましいものとは言えない」

公明党の山口代表は記者団に対し「どのような目的や経緯で行ったのかや、どういう対話をしているのか定かではないが、政府が国民に対して『危険情報』を発している中であり、国民の代表である国会議員のふるまいとしては決して望ましいものとは言えない」と述べました。

国民 玉木代表「利用されるような行為とならないよう対応を」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「力による現状変更は許さず、領土の統一性を乱すような侵略行為を認めないというのは わが国の立場であり、今回の訪問はG7を中心とした結束を乱すような行為として捉えられてしまう。日本維新の会としてもロシアに利用されるような行為とならないようしっかり対応してもらいたい」と述べました。