ゲーム市場が熱い!異業種も続々参入

ゲーム市場が熱い!異業種も続々参入
ゲーム市場は高い成長が見込まれ、国際競技のeスポーツやゲーム実況など大きな盛り上がりを見せています。異業種の参入も相次いでいて、ゲーマー専用のマンション「ゲーミングマンション」まで誕生。ゲームを楽しむユーザー、ゲーム産業に関わる関係者たちが期待を寄せるその市場。最前線を取材しました。
(経済部記者 西潟茜子)

“成長性”を探るため会場へ

ゲーム市場の成長性を探るために訪れたのは9月に開かれた東京ゲームショウの会場。

ことしは、過去最大規模の開催となりました。

会場で目立ったのは海外のインフルエンサーたちの姿。

そのうちのひとり、フィリピン人のLhea(レア)さんに声をかけました。
Lheaさんは日本の最新ゲームを体験プレーする様子を撮影していました。

撮影した動画はSNSにアップされ、世界に向けて発信されているといいます。
フィリピンのインフルエンサー Lhea Bernardinoさん
「日本のゲームタイトルは海外でも根強い人気があるんです。多くの人に紹介したいと思って来ました」
こうした海外で活躍するインフルエンサーは、商品のプロモーション戦略にとって重要性が高まっているといいます。

ゲームプレーの実況配信も大きな人気を集め、市場の成長につながっています。

eスポーツ国内市場が急成長

こうした中、特に期待が集まっているのが対戦型ゲームでスポーツのように競技を行うeスポーツです。

2023年6月にIOC=国際オリンピック委員会が初めて対面での大会を開くなど注目を集め、プロ選手に限らず幅広い層に人気が広がっています。

国内の市場規模は、2023年はおよそ130億円になる見込みで、今後も平均年20%のペースで拡大すると予測されています。(JESU:日本eスポーツ連合予測)

なぜeスポーツ市場に大きな期待が集まっているのか。

東京ゲームショウの会場でプロの選手に話を聞くと、その理由をかいま見ることができました。
森翔真選手はIOCの国際大会に出場したプロ選手です。

選手たちは、練習環境にとても気をつかっているといいます。

いすの座り心地やゲームコントローラーの握り心地などのプレー環境がプレースタイルと競技結果に大きな影響を与えるからです。
eスポーツプレーヤー 森翔真さん
「そんなに高いものではないのですが、ゲーミングチェアと呼ばれる専用のものを使っています。やはり長時間座っているので、そういったものを使っていると、ある程度負担が軽減されます。プレーに快適な環境がそろうのは大事なことです」
eスポーツは、競技に採用された対戦型ゲームへの人気につながり、さらには、キーボードやマウス、ヘッドホン、チェアなど、「ゲーミング製品」と呼ばれるさまざまな専用製品を使うことで自分のゲーム環境を整えようというニーズが生まれています。

まさに関連産業への市場の拡大です。

異業種が続々参入

こうした市場の広がりをとらえて、異業種からの参入も相次いでいます。

家具大手の「ニトリ」が参入したのは“ゲーム家具”。
対戦型ゲームを楽しもうというライトユーザーへの広がりを見据えて、リビングにもなじみやすいデザインのデスクやチェアを開発したり、寝ながらでもゲームができる可動式のベッドを提案しています。

可動式ベッドはもともと、介護サポート用として開発されたものですが、朝起きてから夜寝るまで常にゲームを楽しみたいゲーマーにも需要があると見込んでいます。

さらに会場では、部屋になじむゲーム家具の配置のしかたも提案していました。
ニトリ商品部 三宅康介さん
「ゲームを楽しむ時間が生活シーンの一部として身近なものになっています。ゲーム家具は10代から20代の若い世代に自社の家具製品を知ってもらうチャンスになっています。若いゲーマーを獲得することで、その後も当社の家具を継続して選んでもらえる可能性があり、大きなビジネスチャンスと捉えています」
そして、“ゲーミングマンション”なるものも。
ゲーム市場に参入したのは、音楽家のために防音機能を高めた賃貸マンションを20年間手がけてきた都内の不動産会社。

そのマンションを訪ねてみました。
一見普通のマンションでしたが、室内に入ると、音楽スタジオ並みの防音機能を備えた防音ドアがあり、窓も二重。

室内には、一般的なマンションにはない高電圧電源が備えられていました。

ゲーマーにとって生命線となる高速インターネット回線も完備しています。
ゲーマーは、日中の仕事から帰宅したあとにゲームを始めるので、活動時間帯は夜中。

プレーしながら実況をしたり、感情が高まって歓声をあげたりと、大きな音を出すことも多く、近隣から苦情が来てしまうこともあるといいます。

こうした中、肩身の狭い思いを感じていたゲーマーから「防音タイプの部屋を探している」という問い合わせを2年ほど前から受けるようになりました。

もともと音楽家のために供給していた賃貸マンションをゲーマー用にデザインすれば、需要があるのではないかと検討した結果、「ゲーミングマンション」が誕生しました。

私が訪れたのは、防音機能を備えた音楽家向けのマンションで、その一部の部屋がゲーマー用に改装されていました。

このほかにも現在、専用マンションが都内で1棟展開されています。

さらにもう1棟、ゲーム専用のマンションが2023年末に完成する予定で、現在、ゲーム専用の部屋を保有するマンションは31棟、部屋数にすると734室に拡大しています。

それでも4000人以上が入居待ちをしているということです。
不動産会社「リブラン」戸口木綿子さん
「ゲームがいろいろなものと融合することで可能性が広がっていくということに今ちょうどスポットが当たっている時期なのかなと感じます。私たちも住まいを通して貢献していけたらと思っています」

取材を終えて

今回取材した現場はいずれもゲーム市場の成長性を実感させるものでした。

その要因は周辺産業への拡大です。

こんなデータもあります。

日本eスポーツ連合の試算では、ゲームタイトルなどの「直接市場」よりも、それに関わる大会の観戦やイベント開催、機器の購入など、「周辺産業の市場規模」のほうが大きく、6.6倍の規模があるとされています。(2018年の時点)
東京ゲームショウを主催した団体の辻本春弘イベント委員長は「ゲームは想像以上に周辺の産業を巻き込みながら成長している。今後いろいろな広がりができることに期待している」と話していました。

今回取材したさまざまな異業種の企業の間からも「周辺産業がまさに未知の領域で、とにかくこの分野にかけてみようというという気持ちだ」という声が聞かれました。

異業種参入の動きは、従来の常識にとらわれないプレーヤーが入ることで競争環境を生むことから、市場が成長するエンジンとも言えます。

今後のゲーム市場に、まだ予想もつかない新たなアイデアや新ビジネスが登場することも予感させます。

さらに未知の異業種も“巻き込みながら”、将来、大きなエコシステムとなる大規模ビジネスに成長するかもしれません。
経済部記者
西潟茜子
2020年入局
福岡局を経て、今夏から現所属