アメリカ 予算巡り共和党内で対立 トランプ氏に近いグループは

アメリカでは、10月1日から始まる政府の新たな会計年度の予算をめぐり、当面の予算執行を続けるための「つなぎ予算」が成立し、懸念されていた政府機関の閉鎖は回避されましたが、問題の背景にある政治的対立は解消されていません。

協議がこれまでまとまらなかった最大の要因は、野党・共和党内の対立です。いったいどんな背景があったのか、まとめました。

トランプ氏に近い保守強硬派の要求、そして圧力

共和党は現在、下院では多数派ですが、民主党との議席の差はわずかで、少しでも造反議員を出せば単独で法案を通せない状況にあります。このため、トランプ前大統領に近い「フリーダム・コーカス=自由議員連盟」と呼ばれるグループに属する保守強硬派が強い発言力を持つようになりました。

このグループは今回、
▼大幅な歳出削減、
▼ウクライナ支援の見直し、
▼メキシコとの国境管理の強化などを要求し、共和党のマッカーシー下院議長に対し、こうした要求をないがしろにして民主党と協力するようなら議長解任に動くと圧力をかけました。

それでもマッカーシー議長は、土壇場で民主党側との協力にかじを切り、対立の要因となっていたウクライナ支援とメキシコとの国境管理の強化のための予算をあえて外し、代わりにバイデン政権が求めていた災害復旧支援の強化のための予算を盛り込む形で、「つなぎ予算」の修正案をまとめました。

ぎりぎりのタイミングで

シューマー院内総務

この修正案に保守強硬派は反対に回りましたが、政府機関の閉鎖を望まない民主党側が賛成に回り、修正案はぎりぎりのタイミングで可決・成立しました。

民主党の上院トップ、シューマー院内総務は30日夜、「政府機関閉鎖を人質にとったあげく、トランプ氏を熱狂的に支持する共和党は何も手にすることはできなかった」と、保守強硬派をやゆしました。

マッカーシー議長は、確たる勝算がないまま採決に踏み切ったことを認めています。

ウクライナ支援にも影響する可能性

一方で、民主党が賛成に回ったことで、自分たちの主張を封じ込められた形の共和党の保守強硬派は、不満をさらに募らせた可能性があります。

これを見越してバイデン大統領は、「いかなる状況であってもウクライナへの支援を中断してはいけない」と声明のなかで述べ、早くもけん制しました。

ウクライナへの軍事支援は、すでに前年度に承認された予算によって、今後数か月分は確保されていると見られるものの、その先の予算がつくかどうかは、つなぎ予算の期限が切れる11月半ばまでの議論にかかっています。

もし今後も、新年度予算案がまとまらず、つなぎ予算が切れた時に政府機関が閉鎖されるような事態になれば、アメリカの信用低下につながるだけでなく、重要局面を迎えているウクライナ情勢にも暗い影を落としかねません。

これから11月半ばまでに協議がまとまるのか。その行方に国内外の目が向けられることになります。