猛暑の影響はコメにも 新潟「1等米」比率 去年を大きく下回る

記録的な猛暑がコメの品質にも影響を及ぼしています。
見た目の評価がもっとも高いとされる「1等米」の比率は、8月末の時点でコメどころの新潟県で41%にとどまり、去年の同じ時期を20ポイント以上下回ったことが農林水産省のまとめでわかりました。

コメの等級は法律にもとづいて、形などの見た目をもとに4つの区分に分けられ、もっとも見た目の評価が高いものは「1等米」に分類され、JAなどによる買い取り価格が高くなる傾向にあります。

農林水産省が29日に発表したことしのコメの検査結果によりますと、8月末の時点で全国の1等米の比率は68.9%で、去年の同じ時期との比較ではほぼ横ばいでした。

しかし、各県別で見ると
▽コメどころの新潟で41%と、去年を24ポイント下回ったほか
▽富山、石川、福井の北陸3県も去年を下回りました。

また、
▽愛知が39.9%で19ポイント余り
▽三重も30.4%と14ポイント余り低下しています。

記録的な猛暑などによる生育不良で、コメが白く濁ったり、割れたりしていることなどが主な原因です。

等級が落ちても味は変わらないことが多いとされますが、農家の収入の減少につながることが懸念されます。

9月以降、東北や北海道などでもコメの収穫が本格化していますが、農林水産省では、これらの地域でも1等米の比率が例年より低くなる可能性があるとして、状況の把握に努める方針です。

宮下農林水産大臣は、29日の閣議のあとの会見で「ことしは、東北、北陸、北関東などにおいて、1等米の比率が例年より低くなる見込みだという報告を受けている。農産物の収量や収入の減少に対しては、現状を十分に把握したうえで対応についてしっかり考えていきたい。暑さに強い品種への転換を支援していくことも重要だ」と述べました。

新潟 「3等米」の評価も 大幅減収に懸念

新潟県内ではコメの主力品種、コシヒカリの収穫が多くの地域で終盤に入っていますが、この夏の記録的な暑さの影響で見た目の評価が下がり多くが「3等米」と評価される農家も出ていて、大幅な減収を心配する声が聞かれます。

このうち、コメ農家の関隆さんの新潟県南魚沼市などにある田んぼでは、主力品種のコシヒカリの収穫が9月26日に終わりました。

関さんによりますと、ことしは稲から穂が出て成長する7月下旬から8月にかけて高温などに見舞われたため、食味に影響はないものの米粒が白く濁るなど見た目の品質が低下した米が多く確認されたということです。

関さんが育てたコシヒカリは、例年は8割以上が最も品質が高い「1等米」と評価されますが、ことし収穫したコシヒカリおよそ330トンは
▽8割が「2等米」
▽2割が「3等米」で、「1等米」はなかったということです。

関さんはおよそ45年にわたりコメ作りをしていますが、コシヒカリで「3等米」と評価されるのは初めてで、このままだと、大幅な減収は避けられないといいます。

関さんは「例年にない厳しい暑さの影響で、味には影響がないが、見た目の面では厳しい評価になっている。これから機材や肥料の支払いをする農家も多く、コメの等級が下がり利益が少なくなると経営に影響が出るおそれがあり、とても心配している」と話していました。

「3等米」割合増加 農協などが農家支援の動き

これまでのJAの各地の検査ではコメの主力品種コシヒカリで品質が低い「3等米」の割合が多くなっていて、農協などが農家を支援する動きが広がっています。

このうち新潟市などを管轄する「JA新潟かがやき」の管内では28日まででコシヒカリは、
▽3等米が69.1%
▽2等米が29.4%
▽1等米は0.6%と
1等米がほとんどなく、3等米が最も多い厳しい状況となっています。

JAは、この夏の記録的な暑さの影響で稲から穂が出て成長する7月下旬から8月にかけて高温などに見舞われたため、食味に影響はないものの米粒が白く濁るなどして見た目の品質が下がったとしています。

28日、新潟県阿賀野市にあるJAの倉庫には、およそ36トンの米が次々と運び込まれ、検査が行われました。

このうちコシヒカリでは、検査員が袋から取り出した米粒の大きさや色などを確認していましたが、白く濁った米粒が確認され、多くの袋に3等米の等級印が押されていました。

1等米よりも価格が安い3等米が多くなると農家の収入が減り、経営に影響が出るおそれがあるとして、「JA新潟かがやき」はコメを出荷する管内の農家に前金として支払う「仮渡し金」を10月から増額することを決めています。

具体的には、
▽1等米から3等米ではJA全農新潟県本部の目安より増額し、コシヒカリの3等米では60キロ当たり1万1800円とするほか
▽例年は仮渡し金が支払われない「規格外」の一部についても、60キロ当たり1万円を支払うとしています。

「JA新潟かがやき」営農部米穀課の斎藤政幸 課長は「農家の生活を守るため『仮渡し金』を増額する対応をとったが、今後は温暖化が進む中、暑さに強いコメの開発も重要になってくると思う」と話していました。

ことし収穫される県内のコメの品質をめぐっては、JA全農新潟県本部の調査で、9月20日時点で集荷されたコシヒカリについては、1等米の割合が1%となっている一方、3等米は68%となっています。

こうした中、関係者によりますと、JA全農新潟県本部も県内のコメの出荷農家に支払うコシヒカリの3等米の「仮払い金」の目安を10月から増額することを決めています。

温暖化など見据え 暑さに強い品種開発も

新潟県は、県内で栽培されているコメの主力のコシヒカリについて地球温暖化などを見据え、令和5年度から高温でも品質が変わらない暑さに強い品種の開発を進めています。

新潟県ではこの夏の記録的な暑さの影響で、米粒が白く濁るなど見た目の品質が低下する被害が確認されていますが、地球温暖化などで将来的にも同じような被害が出ることが懸念されています。

新潟県は、こうした暑さへの対策として、主力のコシヒカリについて、令和5年度から暑さに強い品種の開発を進めています。

開発では、「コシヒカリ」と暑さに強い別の品種を交配させ、高温でも米粒が白く濁らず、味も変わらない遺伝子を持つコシヒカリを生み出すことを目指します。

開発が進められている新潟県長岡市にある県農業総合研究所の温室では交配と栽培が行われていて、穂が出る前の稲は暗い状態でより生育が早まることから、一日の大半、カーテンを閉めて栽培しています。

こうして育てた稲を調べ、暑さに強い可能性があるDNAが組み込まれていた場合、さらに交配を繰り返し、最後に稲の病気に強いとされるコシヒカリの品種と交配させます。

県は、暑さに強い品種の有力な候補を今後5年で見つけたいとしています。

新潟県農業総合研究所作物研究センターの岩津雅和 育種科長は「コシヒカリは新潟のトップブランドだが、近年、暑さで被害を受けることが多い。高温への耐性を持たせ、厳しい暑さでも品質が変わらないコシヒカリの開発を目指したい」と話していました。