中国 国慶節など大型連休始まる 日本国内のへ影響は

中国では、29日から建国記念日にあたる「国慶節」などの大型連休が始まりました。のべ20億人余りが移動するとみられ、各地の空港や駅は旅行先などに向かう人たちで混雑しています。

中国政府 “のべ20億人余が移動”

中国では、29日から日本の十五夜にあたる「中秋節」と、建国記念日にあたる「国慶節」にあわせた8日間の大型連休が始まりました。

中国政府は、連休中、のべ20億5000万人が公共交通機関や車などで移動すると予測していて、1日あたりではのべ2億5700万人と、去年の同じ時期より6割近く増える見通しだということです。

首都・北京の空港では、連休を日本など外国で過ごそうという旅行客で混雑していて、搭乗手続きのカウンターに行列ができていました。

ことしは「ゼロコロナ」政策が終了してから初めての「国慶節」の連休とあって、旅行客が大幅に増える見込みで、中国のIT大手「百度」などがまとめた報告書によりますと、日本は外国で最も人気のある旅行先に挙げられています。

一方、中国の旅行会社などによりますと、東京電力福島第一原発の処理水の放出を受け、日本への団体旅行のキャンセルも一部で出ているということで、今後、中国からの旅行客がどの程度回復するか注目されます。

中国の首都・北京の空港では、日本へ向かう便のチェックインカウンターで家族連れを中心に多くの旅行客が長い列を作っていました。

日本への旅行は2回目という55歳の女性
「前回は冬で、富士山がきれいでした。今回は、秋の富士山を見て、違いを楽しみたいです。日本はとても好きで、文化や環境、食べ物などが気に入っています」
処理水の海洋放出をめぐっては
「いろいろな情報があり、海産物を食べるのはなるべく避けたいと思っていますが、自分の目で状況を確かめたい」

初めて日本に行くという24歳の2人組の男性
「日本は中国から近いので連休で遊びに行きます。東京ディズニーリゾートなど観光地をめぐりたい」
かつては「爆買い」と呼ばれ、注目された中国人観光客の消費マインドについては
「爆買いは以前のものでコロナ後は減っていると思います。日本でほかにはない魅力的な商品があれば購入を検討しますが、理性的に買い物をしたいです」

日本と中国結ぶ国際線 満席も コロナ禍前を大きく下回る

ことしの国慶節の期間中、日本の航空大手の日本と中国を結ぶ国際線はほぼ満席状態の便が多くなっています。

このうち全日空は、日本と北京や上海、広州などの間で週62往復の定期便を運航していて、国慶節の連休前後の9月26日から30日までの中国発の便はほぼ満席、10月6日から9日までの日本発の便は、9割程度が予約で埋まっているということです。

この会社では、中国から日本への団体旅行が8月に解禁されたことなど需要の回復を見込んで、10月1日から週70往復にさらに10月下旬からは週76往復に増便する計画です。

それでも、コロナ禍前と比べると両国を結ぶ定期便の数は4割程度にとどまっています。

団体旅行の解禁から1か月余りたっても、利用者の回復は緩やかでさらなる増便については、需要がどう拡大していくか、分析する必要があるとしています。

中国路線担当 石山慶之マネジャー
「国際線のなかでは中国路線の回復が一番遅れている。一気に大幅な増便を行うような需要は見込めていないが、状況を見極めて増便をしていきたい。中国からの旅行者は、移動するときは、一気に移動するので、そうした動きに乗り遅れないように準備しておきたい」

また、日本航空も国慶節の連休前後の中国から日本に向かう便はほぼ満席となっていますが、定期便の数はコロナ禍前の半分程度で、増便については、今後の需要を見極めながら検討するとしています。

国土交通省によりますと、9月時点で、日本と中国の間の国際便は中国の航空会社の運航分も含めて週650往復程度と、コロナ禍前の半分以下にとどまっています。

中国からの旅行者数 コロナ禍前の3割の水準

日本政府観光局によりますと、コロナ禍前の2019年、中国からの旅行者は、年間959万人と訪日客の3割を占め、1か月間の旅行者は最も多かった2019年7月に105万人に上りました。

しかし、新型コロナの感染拡大で水際対策が厳しく敷かれ旅行者は大幅に減少しました。

去年10月に日本の水際対策が大幅に緩和されたあとは、訪日外国人の全体の数は大きく伸びましたが、中国からの旅行者はことし1月の時点でも3万1000人で感染が急拡大する前の2020年1月の3%程度と回復の鈍さが目立っていました。

ここ数か月で見ると、6月は20万8000人、7月は31万3000人、8月時点では36万4000人と徐々に回復しています。

それでも、8月の旅行者数はコロナ禍前の2019年の同じ月と比べて36%の水準となっていて、今後の回復のペースが注目されます。

福岡 無料送迎バスで呼び込み

中国の建国記念日にあたる「国慶節」などの大型連休が29日から始まり、福岡空港にはさっそく中国人観光客の姿が見られました。

29日午前11時ごろに中国・大連からの直行便が福岡空港に到着すると、到着ゲートには続々と家族連れやカップルなどの中国人観光客の姿が見られました。

家族で来たという女性は、「大型連休なので6日間滞在して買い物や温泉を楽しみたいと思います。そのあとは東京に鉄道で移動する予定です」と話していました。

日本旅行が好きだという60代の女性は、「福岡は3回目ですが、前回は10年前くらいなので新しい福岡の姿を見たいと思って来ました。スーパーでは化粧品などを買いたいと思います」と話していました。

一方、国慶節が始まるのに合わせて中国人観光客を呼び込もうと、福岡市のデパート「博多大丸」は10月3日まで福岡空港の国際線ターミナルと福岡市中心部の天神の間を結ぶ無料送迎バスの運行を始めました。

バスは1日6便で、これまでに家族連れなどが利用しているということです。

「博多大丸」の渡邉達夫さんは、「天神までアクセスよく足を運んでもらいたい。福岡市の再開発事業『天神ビックバン』で活気が出てきているので、買い物を楽しんだり日本の文化や物づくりに触れたりしてほしい」と話していました。

神戸 4年ぶりのクルーズ船到着

神戸港では、中国からのクルーズ船が到着しました。

このクルーズ船は、全長およそ230メートル、重さ4万7000トン、定員900人の「チャイナ・マーチャンツ・アデン」です。

9月24日に中国・上海を出発し日本各地をめぐる予定で、「国慶節」などの大型連休が始まった29日、神戸港に寄港しました。

神戸市港湾局によりますと、中国発着のクルーズ船が神戸港に寄港するのは、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年以来だということです。

港では歓迎のセレモニーが開かれ、消防による色とりどりの水の放水や音楽の演奏が行われました。

クルーズ船の利用客は船から手を振りながら景色や演奏を楽しんだあと、およそ300人が港に降り立ち、神戸や大阪の観光地へ向かうバスに乗り込んでいきました。

日本に10回以上来たことがあるという女性は「日本は友好的な国で、とてもよい旅行先です。きょうの歓迎もすばらしかった」と話していました。

クルーズ船は神戸港で1泊し、30日に静岡県の清水港へ向かうということです。

東京では コロナ禍で休止の中国語バスツアー再開も…

中国の建国記念日にあたる「国慶節」の大型連休にあわせて、東京の観光バス会社では、コロナ禍で休止していた中国語のバスツアーを期間限定で再開させましたが、思うようには予約が埋まらない状況だといいます。

都内の観光バス会社「はとバス」では、新型コロナの影響で3年前から休止していた中国語のツアーを、「国慶節」の大型連休にあわせて、28日から10月30日までの期間限定で再開させました。

28日は山梨県の河口湖周辺をめぐる日帰りのツアーが行われ、国慶節の連休に合わせて来日したという中国人の男性は「前から富士山が見たかったのでこのツアーに参加しました。日本のいろいろなところを観光したいです」と話していました。

ただ、きのうのツアーに参加したのは定員の4分の1の11人でした。

会社によりますと、1日に複数のツアーを用意していたコロナ禍前は、1日あたりの参加者があわせて30人程度で、満員になることもあったということで、コロナ禍前の水準には届いていないということです。

また、10月についてもツアーに最低限必要となる10人が現時点では集まらずに見通しが立っていないツアーが多いということです。

バス会社広報室 伊藤百那主任
「バスツアーの利用はそこまで回復していないのかと思います。中国語のツアーの需要を見極めて、今後、継続して運行するか、大型連休に合わせて限定的に運行するか、対応を検討したい」

北海道 期待の中国人観光客 まだわずか

北海道登別市にある人気の観光地、登別温泉の「地獄谷」には、韓国や台湾などからの観光客の姿が多く見られました。

登別温泉がある登別市内で宿泊した外国人は、新型コロナウイルスの影響をあまり受けなかった2019年度はのべ39万2000人あまりとなっていて、国と地域別では中国がおよそ3割を占めて最も多くなっていました。

ただ、新型コロナの感染拡大によって、中国からの観光客も大きく落ち込み、現在も以前の水準には戻っていません。

このうち、登別温泉にある老舗旅館では、コロナ禍の前は外国人客のおよそ4割を中国が占めていましたが、現在は1割程度にとどまっているということです。

旅館のおかみを務める須賀紀子さんは、「今は韓国や台湾、アメリカの方が多く来ています。中国からは団体の方がみえることは今年は一度もないので、これからコロナ前以上に中国の方が来てくれることを期待しています」と話していました。

また、温泉街にある土産物店でも、中国からの観光客の姿は少ない状況が続いているということですが、国慶節にあわせて訪れる人が増えることに期待しています。

土産物店 吉田拓矢さん
「コロナ前は右を見ても左を見ても中国の方がいらっしゃるイメージだったんですけど、コロナになってパタッと、みえなくなってしまいました。中国の大型連休で今のところ大きな動きはないと思っていますが、日本へ向かう飛行機が満席だというニュースを見たので、少し期待して待っていようかなと思っています」

専門家 “円安が追い風 徐々に元に戻るのでは”

中国からの旅行者の数は回復するのか?

今後の見通しについて、観光分野に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員に聞きました。

Q.8月、中国から日本への団体旅行が解禁されたが、中国からの旅行者の数は、新型コロナの感染拡大前の2019年の8月と比べて、まだ4割以下の水準にとどまっています。考えられる背景は何でしょうか?

A.さまざまな理由が考えられる。

日本への団体旅行が解禁されて間もないので、まだ動きがデータに反映されていないという点もある。

また、ビザの発給に時間がかかっていることや、日本と中国を結ぶ航空便の数が2019年と比べて大幅に減少している上、日本国内の空港のスタッフが不足して便数の回復が思うようにいかないということもある。

さらに、中国人観光客を誘致しようとほかの国がビザを不要にするなどさまざまな対応を進める中、あえて、日本を選ぶ必要もないという点もあるとみられる。

Q.日本と中国の間では福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出の影響はあるでしょうか?

A.日本政府と中国政府との間の緊張関係のようなものを映していて、自己規制のようなものが働いているのかなという気がする。

中国人は旅行で体験したことをSNSなどで共有することを非常に好むが、中国で日本のことを快く思っていない人が一定数いる中で、そうしたことをすれば、批判されるのではないかという危惧が行動を鈍らせているのではないか。

「日本は危ない国だ、健康被害が起きかねない」という誤解を理由に旅行を見合わせるということももちろんあると思う。

Q.中国からの旅行者の数はいつごろまでにコロナ前の水準に戻るでしょう?

A.8月まで中国からの旅行者の数が他国よりかなり少ないことや、さまざまな懸念点を踏まえれば、すぐにコロナ禍前の水準に戻るとは考えにくい。

国慶節の次に旅行者が大きく増えるとみられる来年2月ごろの旧正月「春節」の時点でも戻るかどうかは現時点では微妙だ。

ただ、一時ほどのひどい対立はなくなりつつあるので、若干希望的観測ではあるが、私自身は、徐々に元に戻っていくという見方をしている。

Q.中国からの旅行者の回復を予測する上でプラス要因は?

A.中国だけに限った話ではないが、円安は、日本への旅行を決める動機づけとして大きな追い風となるだろう。

訪日外国人1人あたりの消費額はすでに2019年を上回っている。

旅行者の人数がどこまで増えるかは不透明だが、中国人の消費額も増加していくだろう。

Q.中国からの旅行者をメインのターゲットにしていた観光事業者の中でも、他の国へシフトする動きもあるようですが?

A.観光の事業者にとって、中国からの旅行者は非常に大きな市場であることには変わりないので、全体でみれば通訳などの採用にまったく力を入れなくなるとは考えにくい。

一方で、コロナ禍を経験したことで、特定の国に依存して事業を展開するとリスクとなることが明らかになった。

中国語以外の言語を話せるスタッフをバランスよく採用することなども今後は必要になってくるだろう。