気になる?気にならない?文化庁が新しいことばの使い方を調査

日本語の新しい表現について文化庁が調べた結果、「応援している人や物」を『推し』と言ったり、「良く見せようとする」ことを『盛る』と言ったりすることばの使い方について、「気にならない」と答えた人は8割にのぼり、広く定着してきていることがわかりました。

気になる?気にならない?

文化庁の調査結果より

文化庁は日本語の使い方の変化などを毎年調べていて、ことし1月から3月にかけて全国の16歳以上の6000人に調査し、3579人から郵送で回答を得ました。

この中で、新しい使い方が辞書に記載され始めたことばについて尋ねたところ「ほかの人が使うのが気にならない」という回答は
▽「異様だと感じあきれる」という意味で『引く』を使うことは83%
▽「気に入って応援している人や物」を『推し』と言うことは82%
▽「よく見せようとする」ことを『盛る』と言うことは81%
▽「冗談がつまらない」ことを『寒い』と言うことは79%
と8割前後になり、定着が見られました。

一方、「どうしようもなくなった」ことを『詰んだ』と言うことは67%と、やや低くなりました。

実際に「使うことがある」という人の割合を年代別に見ると、
▽『推し』や『詰んだ』は若い人ほど使う傾向にあり、10代は8割以上、70代以上は2割から1割以下でした。
▽『引く』を使う人は、20代から40代で9割を超え、
▽『寒い』は40代が8割近くと高くなりました。

地域別に見ると、東北地方では『寒い』や『引く』を使う人が関東や近畿に比べ、10ポイントほど低くなりました。

文化庁国語課の武田康宏 主任国語調査官は、「社会に定着してきている一方、『引く』や『寒い』はお笑いでも使われることばであることなど、文化や方言を背景に地域差が出ているとみられる」と話していました。

アルファベットの略語の意味は?

ことしの調査では、アルファベットの略語やローマ字の使い方についても調査しました。

ふだん見聞きすることばの中で、「AED」「SNS」「DX」などのアルファベットの略語の意味が分からず困ることがあるか尋ねました。

その結果、
▽「よくある」が31%
▽「時々ある」が54%で
8割余りが困ることがあると回答しました。

アルファベットの略語が使われている状況については、
▽「好ましいと感じる」という回答が45%
▽「好ましくないと感じる」が54%でした。

理由について、「好ましくない」と答えた人の94%が、「意味が分かりにくいから」と答えました。

また、年代が上がるほど、「好ましくない」が増えました。

ローマ字の使い方 「ち」=「ti」?「chi」?

ローマ字は1954年の内閣告示に基づき、「訓令式」という日本語の読みに基づいた方式を第1表として基本的に採用し、いわゆる「ヘボン式」を第2表として定めています。

今回の調査で、訓令式とヘボン式のどちらが学びやすいかを尋ねたところ、例えば「しゃ・しゅ・しょ」は、「s・y・a」などと「y」を使う訓令式が64%で「s・h・a」などと「h」を使うヘボン式の34%を上回りました。

一方、「ち」は「t・i」か「c・h・i」か、「し」は「s・i」か「s・h・i」かは拮抗しました。

文化庁の審議会ではおよそ70年ぶりに内閣告示を改定することも検討していて、ローマ字の使い方についてさらに調査することにしています。