岸田首相 アルツハイマー新薬承認を踏まえ 医療体制構築を指示

認知症対策の強化に向けて、政府は27日、当事者も加わった新たな会議を開きました。岸田総理大臣は、承認されたアルツハイマー病の新薬がいかされるよう、必要な検査や医療の体制構築を急ぐよう関係閣僚に指示しました。

政府の「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」は関係閣僚のほか、当事者や家族もメンバーに加わって設置され、27日に初会合を開きました。

この中で岸田総理大臣は、アルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新しい治療薬「レカネマブ」が正式に承認されたことを踏まえ、「認知症の治療は新たな時代を迎えた」と指摘しました。

一方で、病気が進行した患者などは投与の対象にならないといった課題もあるとして、新薬がいかされるよう、早期発見に必要な検査や医療の体制構築を急ぐ考えを示しました。

また
▽さらなる治療薬の開発推進や
▽最新の医薬品価格の動向も踏まえた薬価制度の検討に加え
▽身寄りのない人が認知症になっても安心して暮らせる環境整備も欠かせないとして、対策の強化を図るよう関係閣僚に指示しました。

岸田総理大臣は「安心して年を重ねることができる高齢社会づくりを進める。課題解決に向けた省庁横断の体制を構築していきたい」と述べました。

認知症の人と家族の会 代表理事「認知症を自分事として」

会議のあと、当事者や家族などでつくる「認知症の人と家族の会」の鎌田松代・代表理事は記者団に対し「家族の介護をしながらでも、自分が認知症になっても、自分らしく生きられる社会であるために、皆さんに認知症を自分事として考えてほしい」と訴えました。

その上で「認知症の人は、いろいろな病態の時期はあっても自分の意思を持っている。家族は、より良くなってほしいと介護する一方、自分の人生も生きたいと思っている。会議にはそうした思いをきちんと取り込んでもらいたい」と述べました。

認知症の人たちでつくる団体の代表理事「思いを伝えた」

認知症の人たちでつくる団体「日本認知症本人ワーキンググループ」の藤田和子・代表理事は記者団に対し「誰が認知症になっても受け入れられるようなまちづくりを、認知症の本人と一緒に進めていってほしいという思いを伝えた。本人が適切な治療を受けながら社会活動を続けられ、自分らしく家族や職場の仲間と暮らしている実感が持てなければ、共生社会にはなっていかない」と指摘しました。

「声を拾うだけでなく本人と一緒に施策を」

認知症の人やその家族は悩みを打ち明けにくく孤立しがちなことが課題となっていて、各地では、当事者やその家族の人たちがそれぞれ集まり悩みや困りごとなどを共有する集いの場が設けられています。

東京 練馬区の田柄地区では区の委託を受けた地域包括支援センターが主催し、認知症の人や家族たちが悩みなどを共有するための交流会を月に1回のペースで開いています。

ことし6月に開かれた認知症の人の交流会には8人が参加していて、困っていることだけでなく最近の出来事や感じたことなどを思い思いに語り合っていました。

この集いの場を開催している田柄地域包括支援センターの奥村綾子センター長は、27日に政府の会議が発足したことを受けて「会議の中心に本人や家族が立てるのは素晴らしいと思う。自分の声を聞いてもらうと認知症の人も自信を取り戻し生き生きと変わってくるので、声を拾うだけでなく本人と一緒に施策を作っていくということを期待したいです」と話していました。