ロシア国防省系メディア 黒海艦隊司令官“健在”の映像公開

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアにある、ロシア黒海艦隊の司令部への攻撃で、ウクライナ側が死亡したと主張する司令官について、ロシア国防省系のメディアは27日、司令官がインタビューに答えているとする映像を公開しました。司令官の生死をめぐってウクライナ側との間で情報戦の様相を呈しています。

ウクライナ軍は、南部クリミアの軍港都市セバストポリにあるロシア海軍の黒海艦隊の司令部に対する今月22日の攻撃で、黒海艦隊を率いる司令官を含む34人が死亡したと主張しています。

ロシア海軍の黒海艦隊の司令官はビクトル・ソコロフ氏で、去年9月に黒海艦隊の司令官に就任し、階級はロシア海軍最上位の大将です。

これに対してロシア国防省系のメディアは27日、ソコロフ氏がメディアのインタビューに答えているとする映像を公開しました。

この中でソコロフ氏だとする人物は「黒海艦隊は自信をもって任務を遂行している」と述べていて、司令官が健在だとアピールするねらいがあるとみられます。

この映像がいつ、どこで撮影されたのかについては明らかにされていません。

一方、ウクライナ軍の特殊作戦部隊は26日、SNSで「入手可能な情報源によると、死者の中には司令官も含まれていた」と主張していて、ロシアにとって戦略的に重要な黒海艦隊のトップの生死を巡り、双方の間で情報戦の様相を呈しています。

専門家「指揮統制や軍事活動に支障が出る可能性も」

防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は、黒海艦隊を率いる司令官の安否について「仮に死亡したとすれば、今後の黒海艦隊の指揮統制や軍事活動に支障が出る可能性がある」と指摘しています。

黒海艦隊を率いるソコロフ司令官の安否をめぐっては「ウクライナ側は当初、司令官が死亡したという見方を示したものの、証拠を示しておらず本当に死亡したのかどうかは確認できていないのではないか。ロシア側がオンラインで会議に参加したとする映像を出したことで、ウクライナ側は『事実関係を調査する』と、軌道修正をはかっている」と述べ、現時点ではどちらの可能性も考えられるとしています。

そのうえで「司令官は非常に階級が高い人物だ。仮に死亡しているならロシア軍に衝撃を与え、政治的にも大きなダメージになる」と分析しました。

また、ウクライナ側が黒海艦隊の司令部の幹部会議の最中をねらったと主張していることについて「攻撃を明らかにしたウクライナ側の特殊作戦部隊はロシアの占領地域であるクリミア半島でも情報収集を行い、幹部会議がいつ、どこでどの程度の人が参加するのか、正確な情報を把握して攻撃を行ったのではないかとみられる」と指摘しました。

一方、ウクライナ軍が進める反転攻勢への影響については「一時的に黒海艦隊の動きが弱まる可能性はあるが、前線でのロシア軍の補給機能が損なわれたわけではない」と述べ、前線への影響は限定的だという見方を示しました。

そのうえで、今後の動きについて「ウクライナ軍は補給活動を断つために攻撃を強めていくだろう。ロシア側が押されるような形でクリミアへの攻撃が激化している中で、プーチン大統領がどのような対応を示すのか注目される」と述べました。