五輪汚職事件 組織委元理事 裁判に証人として出廷も証言拒否

東京オリンピック・パラリンピックをめぐり、総額2億円近い賄賂を受け取ったとして受託収賄の罪に問われている大会組織委員会元理事の高橋治之被告が、贈賄側とされる被告の裁判に証人として出廷しましたが「自分の裁判に影響を与える可能性がある」と述べて証言を一切拒否しました。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事(79)は、大会のスポンサー契約などをめぐり、5つの企業から総額2億円近い賄賂を受け取ったとして受託収賄の罪に問われていて、ことし12月に初公判が予定されています。

それを前に27日、贈賄の罪に問われ無罪を主張している広告会社「大広」の元執行役員、谷口義一被告(58)の裁判に証人として出廷しました。

高橋元理事が逮捕後、公の場に出るのは初めてで、発言が注目されましたが、元理事は検察官や裁判官、それに弁護士からの質問に対し「証言が何らかの形で自分の裁判に影響を与える可能性があるので一切答えられない」と述べ、すべての証言を拒否しました。

元理事は上下スーツ姿で証言台の前に座り、自身の経歴などを問われても証言の拒否を繰り返しました。

高橋元理事の証人尋問は来月開かれる次回でも行われる予定でしたが、取りやめになりました。

関係者によりますと、高橋元理事はいずれの事件についても不正を否定しているということです。

高橋治之元理事とは

高橋治之元理事は、1967年に大手広告会社の「電通」に入社し、スポーツ局長や専務を務め、日本のスポーツビジネスの第一人者として広く知られていました。

東京オリンピック・パラリンピックの招致では、招致委員会のスペシャルアドバイザーを務め、IOC=国際オリンピック委員会の委員に対するロビー活動の中心を担い、招致のキーマンとも言われる存在でした。

2014年6月に東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事に就任すると、スポンサー契約やライセンス商品の審査などに関して影響力を持ち、みなし公務員であるにもかかわらず、5つの企業から総額2億円近い賄賂を受け取ったとして、受託収賄の罪で、東京地検特捜部に4回起訴されました。

関係者によりますと、高橋元理事はいずれの事件についても不正を否定しているということです。

一連の五輪汚職事件

一連の五輪汚職事件では、紳士服や広告、出版の大手企業の幹部などが贈賄側とされ、5つのルートで合わせて15人が起訴されました。

去年12月に開かれたAOKIホールディングスの前会長らの初公判を振り出しに、
▽広告大手「ADKホールディングス」
▽出版大手「KADOKAWA」
▽大会マスコットのぬいぐるみを製造・販売した「サン・アロー」
▽広告大手「大広」の5つのルートすべてで裁判が始まっています。

裁判が始まった12人のうち、無罪を主張しているのは「大広」の谷口義一元執行役員のみで、そのほかの4つの企業の元幹部などはいずれも起訴された内容を認めました。

これまで10人に執行猶予付きの有罪判決が言い渡され、確定しています。

一連の裁判では、組織委員会の理事としてスポンサー集めなどを任されていた高橋元理事の影響力を頼って、それぞれの企業が繰り返しアプローチしていた状況が浮き彫りになっています。