秋本真利議員を起訴 受託収賄と詐欺の罪で 議員はいずれも否認

東京地検特捜部は、政府が導入拡大を目指している洋上風力発電をめぐり、東京の風力発電会社側から会社が有利になるような国会質問をするよう依頼を受け、その見返りに7200万円余りの借り入れや資金提供などを受けたとして、秋本真利衆議院議員を受託収賄の罪で起訴しました。
また、新型コロナ対策の持続化給付金200万円を不正に受給したとして、詐欺の罪でも起訴しました。関係者によりますと、秋本議員はいずれも否認しているということです。

起訴されたのは、自民党を離党した衆議院議員の秋本真利被告(48)です。

東京地検特捜部によりますと、秋本議員は、4年前から去年にかけて、洋上風力発電事業への参入を目指す東京の風力発電会社「日本風力開発」の塚脇正幸元社長(64)から、会社が有利になるような国会質問をするよう数回にわたって依頼を受け、その見返りに7200万円余りの借り入れや資金提供などを受けたとして、受託収賄の罪に問われています。

塚脇元社長も、このうち時効になっていない4100万円余りについて、贈賄の罪で在宅起訴されました。

関係者によりますと、賄賂とされた資金はいずれも競走馬の購入費用や2人が設立した馬主組合の運営費などに充てられていたということです。

秋本議員は、こうした資金提供の前後に、日本風力開発が参入を目指す青森県沖の海域での事業に防衛関連施設への影響を理由に過度な規制をかけないよう求めるなど、会社側の希望に沿う形の国会質問をたびたびしていて、特捜部は多額の資金提供はその見返りだったと判断しました。

関係者によりますと、塚脇元社長は、国会質問を依頼しその謝礼として賄賂を渡したことを認めているということです。

一方、秋本議員は「賄賂にはあたらず、頼まれたから国会質問したわけでもない」などと否認しているということです。

また特捜部は、みずからが実質的に管理している会社で新型コロナ対策の持続化給付金200万円を不正受給したとして、詐欺の罪でも秋本議員を起訴しました。

秋本議員は「申請手続きは弁護士などが行っていて、詐欺とは思わなかった」などと否認しているということです。

賄賂とされた資金は競馬関連

特捜部が賄賂にあたるとした7200万円余りの資金は、いずれも秋本議員と塚脇元社長の共通の趣味の競馬に関するものでした。

【3000万の借り入れ】

関係者によりますと、秋本議員は、青森県沖での事業に関する国会質問をした翌月の2019年3月ごろ、塚脇元社長から3000万円を借り入れ、その資金を使って中央競馬の馬主になる登録を申請しました。

中央競馬の馬主登録には、継続的に保有する預貯金などの資産の額が7500万円以上という要件があり、それをクリアするためのいわゆる「見せ金」だったということです。

秋本議員は「のちに返済しており賄賂にはあたらない」と主張していますが、特捜部は、返済したとしても、必要な時に無利子無担保で借りることができた「金融の利益」が賄賂にあたると判断しました。

【4000万余りは】

関係者によりますと、残る4000万円余りは、3年前からことし6月にかけて提供され、このうち▼おととし5月の500万円と、▼去年10月の1000万円は、いずれも議員会館で現金で受け渡されていたということです。

これらのほとんどは、競走馬の購入費用や餌代、それにきゅう舎代などに充てられていたということです。

秋本議員は、これらの資金について、「馬の購入手続きは自分が行ったが、独断で買ったわけではない。購入した馬は自分のものではなく、資金を出した塚脇元社長のものであり、利益供与にはあたらない」などと主張しているということです。

日本風力開発が有利になるような国会質問について

秋本議員は、塚脇元社長から借り入れや資金提供を受けた前後に、日本風力開発が有利になるような国会質問をたびたびしていました。

【青森県沖に関する質問】

2019年2月には、衆議院予算委員会の分科会で、日本風力開発が参入を目指す陸奥湾など青森県沖での事業に関して質問しました。

この中で、秋本議員は「国防は何においても大事だが、支障のない範囲内で防衛省は経産省や国交省との協議に柔軟に応じ、法律に基づく洋上風力というものが青森県でもしっかり展開されるべきだ」などと発言し、防衛関連施設への影響を理由に過度な規制をかけないよう求めていました。

関係者によりますと、塚脇元社長は、質問の前後に、会社の複数の幹部に対し、秋本議員に国会質問を依頼したという内容のメールを送っていたということです。

【評価基準見直しの質問】

また、第1ラウンドの入札で、圧倒的に低い供給価格を示した「三菱商事」を中心とするグループが3つのプロジェクトすべてを落札したおよそ2か月後の去年2月には、衆議院予算委員会の分科会で質問に立ちました。

この中で、秋本議員は「今、公示している2回目の公募から評価のしかたというのをちょっと見直していただきたい」とか、「非常に大事なファクターなので運転開始時期に対するウエートづけを私はもうちょっと見直すべきだろうというふうに思っています」などと発言し、評価基準を見直して、運転開始時期の早さに重点を置くよう繰り返し求めていました。

【秋本議員の主張】

秋本議員は、逮捕後、国会での質問について「自身の政治的信条に基づいて再生可能エネルギーの普及に向けた国会質問に及んだものであり、塚脇氏から依頼されて、日本風力開発の利益を図るために国会質問をしたということは断じてありません。まして、国会質問をした謝礼として賄賂を受けたという事実はありません」というコメントを出し、一貫して否認しています。

日本風力開発 “深くおわび 捜査・公判に全面的に協力”

「日本風力開発」は、塚脇正幸元社長(64)が東京地検特捜部に贈賄の罪で在宅起訴されたことを受けて「このような事態に至り、関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けしておりますことを深くおわび申し上げます。事件の解決に向けて、捜査・公判に全面的に協力してまいります」とするコメントを出しました。

松野官房長官「こうした事態になったことは遺憾」

松野官房長官は午後の記者会見で「検察当局の個別事件処理について所感は差し控えるが、こうした事態になったことは遺憾だ」と述べました。