トップはインド出身 コメで世界に挑む米菓メーカー

「コメの力をみんなまだわかっていない」
そう語るのは、新潟市に本社を置く米菓メーカーのトップ、ジュネジャ・レカ・ラジュ会長だ。
ジュネジャ会長はインド出身。
3年前に入社し、海外展開の旗振り役として会社を率いている。
異色のトップが語るコメの魅力とその戦略とは。
(経済部記者 米田亘)
そう語るのは、新潟市に本社を置く米菓メーカーのトップ、ジュネジャ・レカ・ラジュ会長だ。
ジュネジャ会長はインド出身。
3年前に入社し、海外展開の旗振り役として会社を率いている。
異色のトップが語るコメの魅力とその戦略とは。
(経済部記者 米田亘)
米菓を80億人に
「新潟発の日本の伝統的な米菓を80億人に届けたい」
流ちょうな日本語で語るのは、せんべいなどを生産・販売する米菓大手、亀田製菓のジュネジャ・レカ・ラジュ会長(71)だ。
流ちょうな日本語で語るのは、せんべいなどを生産・販売する米菓大手、亀田製菓のジュネジャ・レカ・ラジュ会長(71)だ。

ジュネジャ会長はインド出身。
インドの大学で発酵についてを学び、1984年、その分野で活発な研究が行われていたという日本の大学に留学した。
その後は、日本の食品化学メーカーで研究開発に取り組んだほか、日本の大手製薬会社で副社長も務めた。
グローバル化を目指す前会長の目に止まったのをきっかけに、2020年6月、亀田製菓に入社し副社長に。
そして去年、会長に就任した。
「柿の種だけでなく、たくさんのすばらしい種をもっている。ポテンシャルを感じた」
ジュネジャ会長は入社の理由をそう話す。
日本に暮らしておよそ40年。
取材に訪れたこの日、会長が社員食堂で食べていたのは、焼き鮭とひじきの煮物だった。
インドの大学で発酵についてを学び、1984年、その分野で活発な研究が行われていたという日本の大学に留学した。
その後は、日本の食品化学メーカーで研究開発に取り組んだほか、日本の大手製薬会社で副社長も務めた。
グローバル化を目指す前会長の目に止まったのをきっかけに、2020年6月、亀田製菓に入社し副社長に。
そして去年、会長に就任した。
「柿の種だけでなく、たくさんのすばらしい種をもっている。ポテンシャルを感じた」
ジュネジャ会長は入社の理由をそう話す。
日本に暮らしておよそ40年。
取材に訪れたこの日、会長が社員食堂で食べていたのは、焼き鮭とひじきの煮物だった。

ジュネジャ会長
「会社でも家でも7~8割は和食です。健康的でおいしいですね」
「会社でも家でも7~8割は和食です。健康的でおいしいですね」
海外目指す理由とは
ジュネジャ会長が先頭に立って指揮を執るのが、海外展開だ。
その背景には、国内市場への強い危機感がある。
その背景には、国内市場への強い危機感がある。

総務省の家計調査によると、2人以上の世帯が去年1年間に「せんべい」にかけた金額は平均して5948円。
過去20年ほど、ほぼ横ばいの状態だ。
さらにその購買層の中心は中高年層と見られている。
若い世代を含め、国内外での新たな顧客獲得の取り組みが、いまや必須なのだ。
会社では、1980年代後半から海外展開を進め、現在はアメリカや中国、インド、ベトナムなど、あわせて6か国で事業を展開している。
過去20年ほど、ほぼ横ばいの状態だ。
さらにその購買層の中心は中高年層と見られている。
若い世代を含め、国内外での新たな顧客獲得の取り組みが、いまや必須なのだ。
会社では、1980年代後半から海外展開を進め、現在はアメリカや中国、インド、ベトナムなど、あわせて6か国で事業を展開している。

しかし、海外での営業力の弱さが大きな課題に。
また国内に比べた収益性の低さも、克服する必要があった。
こうした中、ジュネジャ会長は急ピッチでその取り組みを進めている。
また国内に比べた収益性の低さも、克服する必要があった。
こうした中、ジュネジャ会長は急ピッチでその取り組みを進めている。
海外戦略 その取り組みは?
会社では、ことし7月、海外向けの商品開発を行う専門の部署を開設した。

集められたのは、商品開発や、米菓の成分分析などの研究、工場の設備メンテナンスといったさまざまな業務を担当していた社員たち。
組織の縦割り構造を打破し、商品開発から販売までのスピードを上げるのがねらいだ。
国内で働く海外出身の社員も、この1年で2倍以上のおよそ30人に増やした。
組織の縦割り構造を打破し、商品開発から販売までのスピードを上げるのがねらいだ。
国内で働く海外出身の社員も、この1年で2倍以上のおよそ30人に増やした。

現在はベトナム、中国、アメリカなど、さまざまな出身地のメンバーが、商品の輸出や現地法人のサポートにあたっているという。

アメリカ出身社員
「アメリカでは亀田製菓はまだあまり知られていませんが、商品には大きなビジネスの可能性があると思います」
「アメリカでは亀田製菓はまだあまり知られていませんが、商品には大きなビジネスの可能性があると思います」

インド出身社員
「インドにもアメリカにも米菓は確かにあります。ですが、私たちはその概念を変えようと思っています」
「インドにもアメリカにも米菓は確かにあります。ですが、私たちはその概念を変えようと思っています」
ジュネジャ会長
「世界に出て行くにはいろいろな国籍がいないとできない。彼らから学ぶこともある。私たちが教えることもある。私がいま言っているのは、『お互いにリスペクトしましょう』ということ。それは上司もそうですし、国籍もそうです。それらが、ダイバーシティということです」
「世界に出て行くにはいろいろな国籍がいないとできない。彼らから学ぶこともある。私たちが教えることもある。私がいま言っているのは、『お互いにリスペクトしましょう』ということ。それは上司もそうですし、国籍もそうです。それらが、ダイバーシティということです」
“コメの力”とは

「コメの力をみんなまだわかっていない」
ジュネジャ会長はこう話す。
会長が海外戦略の要と考えているのは、主力事業の米菓だけではない。
その原料でもある、コメだ。
彼が確信する“コメの力”とは何か?その1つが、世界的に多様化する食のあり方に幅広く対応できることだという。
いま、環境問題や健康志向の高まりを背景に世界で注目されているのが、大豆など植物由来の原料で作る「代替肉」だ。
ジュネジャ会長はこう話す。
会長が海外戦略の要と考えているのは、主力事業の米菓だけではない。
その原料でもある、コメだ。
彼が確信する“コメの力”とは何か?その1つが、世界的に多様化する食のあり方に幅広く対応できることだという。
いま、環境問題や健康志向の高まりを背景に世界で注目されているのが、大豆など植物由来の原料で作る「代替肉」だ。
現在は大豆を使った代替肉を生産しているが、将来的には、本業とのつながりが深いコメ100%の商品の販売を目指し、開発を続けていくという。
ジュネジャ会長
「お肉を食べる国がプラントベースドフード(代替肉)を食べる。とくに若いビーガン(動物由来の食品を避ける人)がものすごく増えている。特に女性。こういう事業は絶対将来的に大きくなる」
「お肉を食べる国がプラントベースドフード(代替肉)を食べる。とくに若いビーガン(動物由来の食品を避ける人)がものすごく増えている。特に女性。こういう事業は絶対将来的に大きくなる」
コメ由来の乳酸菌
もう1つ、期待を寄せるのが、会社が世界で初めて商品化したというコメ由来の「乳酸菌」だ。

これまでの研究で、腸を整える作用や肌のうるおいを維持する効果を確認できたということで、健康食品や菓子、飲料などへの活用が期待されている。
ただ、これまでの販売先は、国内の食品メーカーなどに限られていた。
そこでジュネジャ会長は2022年、アイルランドの食品メーカーとの間でこの乳酸菌の販売に関する契約を締結。
新たな事業の柱に育てようとしている。
ただ、これまでの販売先は、国内の食品メーカーなどに限られていた。
そこでジュネジャ会長は2022年、アイルランドの食品メーカーとの間でこの乳酸菌の販売に関する契約を締結。
新たな事業の柱に育てようとしている。

ジュネジャ会長
「コメは機能性の面ではまだまだいろいろなことをやらないといけません。コメをただ食べるだけではなくて、いろいろな食感を作って、いろいろな形を作る。それが日本らしい商品ですね。日本人は物作りにおいて器用です。誰もまだ世界では勝てないと思うので、それはもっと自信をもってほしい」
「コメは機能性の面ではまだまだいろいろなことをやらないといけません。コメをただ食べるだけではなくて、いろいろな食感を作って、いろいろな形を作る。それが日本らしい商品ですね。日本人は物作りにおいて器用です。誰もまだ世界では勝てないと思うので、それはもっと自信をもってほしい」
こうした取り組みを通じ、昨年度の海外の売り上げは前の年度に比べて1.5倍に増加したという。
会社を、グローバルな食品メーカーに生まれ変わらせようと意気込むジュネジャ会長。
2030年には、全体の売上のうち、国内米菓以外の売り上げ比率を、現在の30%から50%に高める計画だ。
会社を、グローバルな食品メーカーに生まれ変わらせようと意気込むジュネジャ会長。
2030年には、全体の売上のうち、国内米菓以外の売り上げ比率を、現在の30%から50%に高める計画だ。
アグレッシブに世界へ
「インド人と日本人では仕事の熱心さも角度もやり方も違います。日本から学ぶことはたくさんあるし、それぞれのよさがあると思います。私たちはいろいろな国でいろいろな商品を作っていくので、いろいろな文化から学ぶこと。そこでシナジーが生まれてくると思います」こう話していたジュネジュ会長。
海外を目指す日本企業にアドバイスをするとしたら?ジュネジャ会長は私のそんな質問にこう答えてくれた。
海外を目指す日本企業にアドバイスをするとしたら?ジュネジャ会長は私のそんな質問にこう答えてくれた。

ジュネジャ会長
「リスクもあると思いますが、もう少しアグレッシブに仕組みを作って世界に出るべきだと思います。商品を磨いていく、進化させていく、世界中に届けるために何が必要か。消費者の目線からどんどん世界に出て行くべきだと思います」
「リスクもあると思いますが、もう少しアグレッシブに仕組みを作って世界に出るべきだと思います。商品を磨いていく、進化させていく、世界中に届けるために何が必要か。消費者の目線からどんどん世界に出て行くべきだと思います」
日本ならではの食文化を、アグレッシブに世界に売り込んでいく。
日本とインド、2つの国の心をあわせもつ、異色の経営者の挑戦に、今後も注目していきたい。
日本とインド、2つの国の心をあわせもつ、異色の経営者の挑戦に、今後も注目していきたい。

経済部記者
米田亘
2016年入局
札幌局、釧路局、新潟局を経て現所属
新潟局では一次産業を中心とした経済取材を担当
米田亘
2016年入局
札幌局、釧路局、新潟局を経て現所属
新潟局では一次産業を中心とした経済取材を担当