新たな経済対策 10月中の策定を目指して検討を本格化へ

岸田総理大臣は26日、物価高への対応などを柱にした新たな経済対策の具体化を関係閣僚に指示し、来月中の策定を目指して検討を本格化させることにしています。減税措置を含む、対策の実効性とともに、裏付けとなる補正予算案の国会提出の時期なども焦点となります。

新たな経済対策について、岸田総理大臣は25日、物価高対策、持続的な賃上げの実現、国内投資の促進など、5つを柱とする方針を明らかにしました。

岸田総理大臣は「コロナ禍で苦しかった3年間を乗り越え、経済状況は改善しつつある。国民が物価高に苦しんでいる今こそ、成長の成果である税収増などを適切に還元する」と述べました。

26日に関係閣僚にこうした考えを示した上で対策を具体化するよう指示し、来月中の策定を目指して検討を本格化させることにしています。

具体策としては、賃上げに取り組む企業への減税措置の強化や、半導体をはじめとした戦略分野の国内投資を促す新たな減税に加え、電気やガス料金の補助制度を来年以降も続けるかを含む、家計の負担軽減策も検討される見通しです。

一方、裏付けとなる補正予算案について、岸田総理大臣は対策の策定後、速やかに編成に入る方針を示したものの、国会に提出する時期は明言しておらず、与野党の間では「この秋の衆議院解散を考えているのではないか」という見方も出ています。

さらに予算案をめぐっては、大規模な財政支出が必要だとする声に対し、規模ありきで財政規律を緩めるべきではないとの意見があります。

このため今後の検討では、対策の実効性とともに、予算規模や国会提出の時期も焦点となります。

大規模な財政支出を求める声 インフレ長期化の懸念も

経済対策をめぐっては、自民党の世耕参議院幹事長が投資を後押しする施策や低所得者への支援策などもあわせて「15兆円から20兆円規模の対策を講じるべきだ」という考えを示すなど、政府・与党内で大規模な財政支出を求める声も出ています。

一方で、鈴木財務大臣が今月22日の記者会見で「真に必要で効果的な政策を積み上げた結果、規模が決まる」と述べるなど規模ありきではないという意見もあります。

政府は新型コロナの感染拡大以降、20兆円から30兆円規模の大規模な補正予算を繰り返し編成してきました。

ことし6月にとりまとめた「骨太の方針」では、「歳出構造を平時に戻していくとともに、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないように取り組む」として、財政政策は潜在成長率の引き上げなどに重点を置き、持続可能な経済財政運営を行うとしています。

経済財政政策に詳しいBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは日本経済の需要と供給力の差を示す「需給ギャップ」の推計値がマイナスからプラスに転じて物価が上昇しやすい状況になっているとして、「日銀の金融緩和の継続で円安が進み、それが物価高につながっている。本来、一時的な効果にとどまるはずの円安インフレの影響が長期化しているのは、日本の需給ギャップがすでにタイト化していることが理由にある。物価高の国民生活への影響を和らげるため、よかれと思って政府が大規模財政を行うとそれが需給ギャップをさらにタイト化させ、高いインフレを長期化させることになりかねない」と指摘しています。