ホタテ約10万食分 給食に無償提供へ 輸入停止で 北海道 森町

中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止する措置を取ってから24日で1か月です。各地で大きな影響が出る中、ホタテの養殖が盛んな北海道森町は、輸出できずに保管中のホタテおよそ10万食分を全国の学校給食に無償で提供する方針を固めました。

東京電力福島第一原発にたまる処理水の放出で、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことを受けて、生産・加工するホタテの多くを中国に輸出していた北海道森町は対応を検討してきました。

中国の輸入停止から24日で1か月となるのを前に、町は輸出できずに水産会社の冷凍庫で保管されている大量のホタテを買い取り、全国の学校給食で食べてもらうため無償で提供する方針を固めました。

具体的には、町とつながりがあったり要望を寄せたりした全国の自治体を対象に、小学校や中学校の学校給食用としてホタテおよそ10万食分を提供するということです。

町は財源として、政府が風評被害対策として設けた上限1億円の基金を活用することにしていて、来月の町議会で補正予算案が可決されれば、年内にも学校給食への提供を始めたいとしています。

森町の岡嶋康輔町長は「この地域は1次産業で成り立っているので水産関係者の心配は大きい。北海道のホタテは質がよくおいしいので、まずは味を知ってもらい課題の解決につなげたい」と話しています。

保管場所なくなる懸念も

北海道森町の水産加工会社「カネキチ澤田水産」では、中国に輸出する予定だった冷凍のホタテおよそ50トンが冷凍庫に保管されたままで、来月にも加工した冷凍ホタテを保管する場所がなくなる懸念も出てきているということです。

この水産加工会社の澤田光社長は「年間でおよそ10億円分のホタテを中国向けに輸出していました。輸出できないと相当厳しく、ことしは電気代も上がっているので大変です」と話しています。

さらに、中国への輸出ができなくなった分、国内でホタテの流通量が増え、この1か月で市場の価格が下がっているということで、澤田社長は「ホタテを消費者に届けていくという使命感を持っています。工場で働く従業員の生活もあるので、なんとか危機を乗り越えたい」と話していました。

6年前からホタテの特別給食を提供

ホタテの養殖が盛んな北海道森町では、6年前から子どもたちに地元の水産業について興味を持ってもらおうと、小学校や中学校などでホタテをメニューに入れた特別給食を提供しています。

提供されるのは年2回ほどで、来月13日にもホタテの給食がふるまわれる予定だということです。

町が今回、ホタテおよそ10万食分を全国の学校給食に無償で提供する方針を固めたことについて、町の学校に給食を届けている「森町学校給食センター」の石岡丈宜センター長は「全国の子どもたちにぜひホタテをおいしく食べてもらいたい」と話していました。

森町岡嶋町長「影響計り知れない」

北海道森町の岡嶋康輔町長は、22日、中国への輸出ができなくなった地元の水産加工会社を訪れ、現状の聞き取りなどを行いました。

この中で、水産加工会社の澤田光社長は岡嶋町長に対し「水産業は森町の基幹産業で、今回の中国の禁輸措置の影響は計り知れない」などと訴えました。

これに対し、岡嶋町長は、輸出できずに冷凍庫で保管されたままになっている大量のホタテを全国の学校給食に無償で提供する方針を固めたことを伝え、「品質のよい北海道のホタテの価値を世界中に発信していきたい」などと話していました。

聞き取りを終えた岡嶋町長は「国の基金を活用し、ホタテの販路を拡大していくことも視野に入れていますが、まずは全国の子どもたちが給食を通してホタテに親しみを持ってくれたらうれしいです」と話していました。