イタリア南部に難民急増 受け入れ要請で欧州分断の懸念も

イタリア南部の島にアフリカから地中海を渡って到着する人が急増する中、EU=ヨーロッパ連合が各国に受け入れを呼びかける一方で、フランスがこれを拒否し、ヨーロッパの分断の新たな火種となりそうです。

イタリア南部のランペドゥーサ島では、ことしに入って地中海を船で渡って到着する移民の数が増えていて、特に今月中旬には、2日間で島の人口より多い7000人近くが到着しました。

ギニアやブルキナファソなどサハラ砂漠より南のサブ・サハラ地域から来た人が大半を占め、そのほとんどが北アフリカのチュニジアを経由して来たと見られます。

急増の背景にはチュニジアの密航業者のあっせんの増加や、サブ・サハラ地域でのクーデターによる政情不安の影響があると指摘されています。

島の受け入れ施設では、定員を大きく超え屋外で人が寝泊まりしていて、入りきれなくなった人たちをバスでイタリア国内の別の場所に移送していました。

イタリア政府やEUは、各国にも受け入れを呼びかけていますが、フランス内相が19日、受け入れを拒否するなど足並みはそろっていません。

ヨーロッパでの難民申請者はことし、2015年の難民危機以降最も多い100万人に達する見通しも出ていて、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、各国の経済も疲弊するなか、ヨーロッパの分断の新たな火種となりそうです。

受け入れ施設 定員の5倍を収容 移送追いつかず

20日、ランペドゥーサ島の港を訪れると、イタリアの沿岸警備隊の船から移民とみられる人たちが次々と降りてくる様子が確認できました。

また、港には、密航船と見られる船が残されていて、船の中には空のペットボトルやマットレスなどが残っていました。

到着した人たちは、島の高台にある受け入れ施設に滞在したあと、そこから船や飛行機でイタリア各地に移送されています。

ただ、移送が追いつかず、施設で対応にあたっているイタリア赤十字社によりますと、定員が400人のところに、現在およそ2000人が滞在しているということで、屋外で寝泊まりしている人の姿も確認できました。

主にギニアやコートジボワール、ブルキナファソなどのサブ・サハラ地域の出身で、チュニジアの港から地中海を船で渡って来ているということです。

イタリア赤十字社のフランチェスカ・バジーレさんは「できる限りの緊急措置をとって受け入れを行っている。彼らはとても疲れていて、地中海を横断する前にサハラ砂漠も横断しており、どれだけの命が失われたかわからない。私たちの第一の責任は彼らに安全だと感じてもらうことだ」と話していました。

イタリア外相「サハラ砂漠以南地域の政情不安が背景にある」

イタリア政府によりますと、イタリアに到着した移民の数はことしすでに13万人余りと、去年の同じ時期のおよそ2倍に増えていて、その多くは、アフリカのギニアやブルキナファソ、コートジボワールなどから来ているということです。

イタリアのタヤーニ外相は20日、テレビ局のインタビューで移民急増について「サハラ砂漠以南のアフリカでクーデターが相次ぎ、危険で不安定な状況になっているからだ」と述べ、この地域の政情不安が背景にあるという見方を示しました。

またEU加盟国の沿岸の警備などにあたる機関によりますと、地中海対岸のチュニジアやリビアでは密航をあっせんする犯罪グループ間の競争が激しくなり料金の値下げが行われているということで、この先も当面、多くの人が海を渡ってくる可能性があるとみています。

国連総会に出席するためニューヨークを訪れているメローニ首相は19日、報道陣に対して「唯一の解決策は密航業者と戦うことだ」と述べ、対策を強化する考えを示しました。

EUが各国に受け入れ要請も 足並みそろわず

EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は今月17日、イタリアのメローニ首相とともにランペドゥーサ島を訪れ現状を視察しました。

そして「移民への対応はヨーロッパ全体にとっての課題でありヨーロッパ全体で解決しなくてはならない」と述べて、イタリアに対する10項目の支援策を発表しました。

支援策には、EUの関係機関が、新たに到着した移民の登録などを行うイタリア当局への支援を強化することや、島の負担を軽減するため、ほかのEU加盟国に一部の人を引き取るよう促すこと、移民がもともといたアフリカ各国に働きかけて、帰国させる取り組みを強化することなどが盛り込まれています。

しかしフランスのダルマナン内相が19日、ランペドゥーサ島にいる移民を受け入れない考えを表明するなど、EUの足並みは乱れていて、支援策がどこまで実行されるのか不透明な状況です。

EUでは今月28日に内相会議が予定されていて、イタリアの現状をめぐっても意見を交わすとみられます。