社会

北アルプスで遭難 49歳男性 8日ぶりに救助 首痛めるなど大けが

富山県と長野県の県境にある北アルプスの不帰嶮(かえらずのけん)の近くで遭難していた埼玉県の49歳の男性が、20日、行方不明になってから8日ぶりにヘリコプターで救助されました。男性は、首を痛めるなどの大けがをしたということです。

目次

富山県側から “助けて” の声

救助されたのは、埼玉県川越市の49歳の会社員の男性です。

警察によりますと、9月17日、北アルプスの不帰嶮の近くにいた登山者から、「富山県側から『助けて』という声が聞こえる」と警察に通報がありました。

警察などがヘリコプターで捜索したところ、助けを求める声が聞こえましたが周辺は霧が濃く、樹木も生い茂っていたため捜索が難航し、捜索2日目と3日目も声は聞こえていたものの見つかりませんでした。

4日目の20日夕方、不帰嶮から西に1キロほど離れた谷で手を振る男性を発見し、ヘリコプターで救助したということです。

富山県内の病院に搬送され、首を痛めるなどの大けがをしたということです。

男性は今月10日から1人で2泊3日の予定で、長野県の栂池高原から入山し唐松岳で下山する計画でしたが、12日夜になっても連絡がつかなかったため、家族が警察に届け出ていました。

救助された時、雨具やヘルメットを着用し、リュックサックを装備していて、警察に「登山道を外れてしまい道に迷ってしまった」と話していたということです。

警察は当時の状況について詳しく調べています。

「不帰嶮」近くの救助現場とは

警察が20日、ヘリコプターから撮影した救助現場の写真です。

赤い点がある場所が男性が発見された場所で、男性は立ち上がって手を振っていたということです。

現場は険しい崖に囲まれた谷の斜面で、男性がいた場所のすぐそばに水が流れているのがわかります。

「不帰嶮」はりょう線が細く、岩がむき出しになっていて、富山県と長野県の県境に連なる北アルプスの有数の難所とされています。

男性 “近くの水飲み 動かず救助待った”

男性が搬送された富山県内の病院によりますと、男性は「食料は多めに用意していたが、途中で水がなくなり、救出されるまで近くに流れている水を飲んで生きのびた。雨具で寒さをしのぎ、遭難した場所から動かずに救助を待ち続けていた」と話していたということです。

富山地方気象台によりますと、男性が行方不明になってから救助されるまでの9月12日から20日にかけて、「不帰嶮」の周辺の天気は曇りが多く、雨が降ることもあったということです。

また気温は10度から20度ほどで推移していました。

救助待ち続けた9日間

警察は21日、救助された男性に聞き取りをし、遭難した当時の状況などが分かってきました。

警察によりますと、男性は9月12日の午前6時前に宿泊していた天狗山荘を出発し尾根伝いに下山していましたが、午前9時半ごろ、自分より高い位置に尾根があることがわかり、道を外れて迷ったことに気づいたということです。

そのため、ルートを引き返していたところ、足を滑らせて3メートルほど斜面を滑落し、右足をひねってしまったということです。

男性が身に着けていたのは半袖のTシャツ、長袖のシャツ、ウインドブレーカーを2セット、上下の雨具を1つ、ヘルメットと小型のリュックサックなどでした。

持っていたのは、500ミリリットルのペットボトル3本の水と、食料は山荘で買った弁当1つと、多くの栄養補助食品やゼリー、それにナッツやビスケット、ドライフルーツを1袋ずつでした。

当時、スマートフォンのバッテリーは半分程度で、モバイルバッテリーは持っていませんでした。

電波は届かず連絡手段がなかったということです。

また寝袋などは持っていなかったため、12日はその場にとどまって夜を明かしました。

翌日の13日になると上空からヘリコプターの音が聞こえたため救助が来たと思い、ヘリコプターが来た方向に山を下りていったいうことです。

その後は、日陰になる場所で休んだり、近くにある沢で水を調達したりして救助を待っていたということです。

そして17日に、またヘリコプターが来て自分の名前が呼ばれたのに気づき、返事をしましたが、霧が濃かったため、見つけてもらえなかったということです。

19日になると足の痛みがピークになり動けなくなったため、平らになっている場所にとどまって、救助を待っていました。

男性は17日までは1日に3回、食べていましたが、18日からはドライフルーツだけになり、20日には食料がつきかけていました。

その日に、ヘリコプターによって発見され、無事、救助されたのです。

男性は登山の経験がありますが、今回の登山ルートは初めてだったということです。

救助した山岳警備隊員 “低体温症のような症状”

20日、ヘリコプターで遭難の現場に向かい男性を引き上げて救助した富山県警察本部山岳警備隊の中村直弘 小隊長が21日、報道陣の取材に応じ、「『おーい』と声をかけると男性から『おーい』や『助けてくれ』という声がかすかに聞こえた。何度も声が聞こえたが、尾根や谷が入り込む複雑な地形だったため音が反響してしまい、どこにいるのかピンポイントで捉えづらかった」と捜索活動を振り返りました。

男性の様子については、「ヘリコプターから発見した時は立ち上がって元気そうに見えたが、救助してからは体が震えていて低体温症のような症状がみられた。ヒーターをつけて体温が回復するよう努めた。男性はありがとうと言っていた。諦めずによく頑張ってくれた」と話しました。

山で遭難しないために

中村小隊長は、山で遭難しないための注意点として、
▼身の丈にあった登山計画をたてることや
▼登山届を提出すること、
▼携帯電話の電波が届かない場所でも使用できる地図データや山岳アプリをダウンロードしたり、GPS機能のついた機器を利用したりすることなどをあげました。

そのうえで、「万が一、遭難した場合は通った道を戻ることがセオリーだが、体力が消耗している場合はその場からむやみに動かないで体力を温存し、救助を待ってほしい」と呼びかけていました。

ことしの山岳遭難 過去最多

警察庁によりますと、ことし7月から8月までの2か月間に全国で発生した山岳遭難は738件で、遭難した人は809人でした。

去年の同じ時期よりも70件増加し、遭難者も23人多くなっていて、件数、人数ともに統計を取り始めた昭和43年以降、最も多くなりました。

都道府県別では
▼長野県が101件ともっとも多く
▼静岡県が76件
▼富山県が56件となっています。

去年までの同じ時期の件数と人数の推移をみてみると、
▼令和元年が606件、669人
▼令和2年が470件、541人
▼令和3年が533件、597人
▼令和4年が668件、786人
と増加傾向になっています。

山岳遭難が増加傾向にあることについて警察庁は、コロナ禍で密を避けるレジャーとして山登りが人気となり、登山者が増えたことが要因と考えられるとした上で、実力に見合った山を選び、的確な計画の作成や装備品の万全な準備を心がけてほしいとしています。

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