京アニ事件裁判 遺族が初めて被告に直接質問

「京都アニメーション」の放火殺人事件の裁判で、遺族が被害者参加制度を利用して初めて被告に直接、質問をしました。亡くなった作画監督の女性の夫が被害者にも家族や子どもがいたことを認識していたかと問うと、被告は「申し訳ございません。そこまで考えなかった」と答えました。

青葉真司被告(45)は、4年前の7月、京都市伏見区の「京都アニメーション」の第1スタジオでガソリンをまいて火をつけ、社員36人を死亡させ、32人に重軽傷を負わせたとして殺人や放火などの罪に問われています。

これまでの裁判で、被告の弁護士は、責任能力はなかったとして、無罪を主張しています。

20日は、遺族による被告人質問が初めて行われ、事件で亡くなった作画監督の女性の夫が被害者参加制度を利用しておよそ10分間にわたって青葉被告に直接、質問をしました。

夫が「自分の妻はターゲットだったのか」と尋ねると、被告は「作画監督として勤めているという認識は少しはあったが、厳密に誰かを狙うというより京都アニメーション全体を狙うという認識だった。誰か個人をという考えはなかった」と述べました。

また「放火殺人の対象者に家族、特に子どもがいることは知っていたか」と問われると、被告はしばらく黙ったあとで「申し訳ございません。そこまで考えなかったというのが自分の考えであると思う」と答えました。

夫は、時折声を震わせながら質問をしたのに対し、青葉被告はこれまでの裁判での様子と変わらず、淡々と答えていました。

法廷に設けられた被害者と遺族の席や傍聴席では、2人のやりとりを聞いて涙を拭う人の姿もみられました。

20日は、遺族や代理人の弁護士、あわせて7人が質問に立ち、事件で亡くなった当時22歳だった女性アニメーターの母親が、「娘は、被告が盗作されたと主張するアニメの制作後に入社した。そうした社員がたくさんいたが、すべて焼け死んでもよいと思っていたのか」と尋ねると、被告は「そこまでは考えが及ばなかった」と述べました。

また、別の遺族の代理人の弁護士からは、事件の直前に被害者のことを考えなかったのかと何度か問われましたが、「京都アニメーションが自分の作品を盗んだ」などとみずからの主張を繰り返し、質問に直接答えない場面もありました。

被告人質問は来週も予定され、被告の弁護士や裁判官から質問が行われる予定です。