円相場 148円台まで値下がり 去年11月以来の円安水準を更新

20日の東京外国為替市場ではドルを買って円を売る動きが強まり、円相場は去年11月以来、10か月ぶりに1ドル=148円台まで値下がりしました。

外国為替市場では、19日のアメリカの債券市場で長期金利が15年10か月ぶりの水準まで上昇したことを受けて日米の金利差の拡大が意識され、ドルを買って円を売る動きが広がりました。

このため東京市場では夕方の取り引きで、円相場が去年11月以来、10か月ぶりに1ドル=148円台まで値下がりしました。

午後5時時点の円相場は、19日と比べて49銭円安ドル高の1ドル=148円13銭~15銭となっています。

ユーロに対しては、19日と比べて46銭円安ユーロ高の1ユーロ=158円34銭~38銭となっています。

ユーロはドルに対して、1ユーロ=1.0689~91ドルでした。

市場関係者は「財務省の神田財務官が円安をけん制する発言したことで午前中は円を買い戻す動きも見られたが、夕方になって円を売る動きが強まった」と話しています。

ことしの円相場の推移

去年10月に1ドル=151円台後半まで値下がりした円相場。

ことしは129円台でスタートしました。

ただ、アメリカでインフレが長期化し金融引き締めが強まるとの見方から、金融緩和を続ける日本との金利差が拡大。じりじりと円安が進みました。

5月下旬には1ドル=140円台まで下落。6月下旬には145円台まで円安が進みました。

日銀は7月下旬に金融政策の運用を柔軟化し、長期金利の一段の上昇を容認。

為替市場の変動を和らげ、これ以上の円安の進行に歯止めを掛けるねらいもありました。

発表直後にいくぶん円高傾向に振れる場面もありましたが、アメリカの金融引き締めが長期化するとの見方は根強く、再び円安が進みます。

先月下旬には、1ドル=147円台まで値下がり。

そして20日、およそ10か月ぶりに1ドル=148円台まで円安が進みました。

政府・日銀は去年9月、円相場が1ドル=145円台まで下落した局面でドル売り円買いの市場介入を実施。

去年10月には151円台後半に下落したところで、いわゆる「覆面介入」を実施していて、今回の円安局面でも市場介入への警戒感が高まっています。

専門家「諸外国と日本の金利差が円安の要因」

三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは、外国為替市場で円安が進んでいる要因について「アメリカをはじめとする諸外国が金融引き締めを継続する中で日銀は金融緩和をしているという、金融政策の格差、それからくる内外の金利差が円安の要因だ。円を売ってドルを持っておくことで金利を得ることができるようになるが、いわば円を売る安心感があるような状態だ」と指摘しています。

財務省 神田財務官

20日は、財務省の神田財務官が、アメリカの通貨当局との間で緊密に連携し、過度な変動は好ましくないという認識を共有していると発言したほか、アメリカのイエレン財務長官が日本の当局による円買いの市場介入に理解を示したとも報じられています。

米 イエレン財務長官

これについて、井野チーフアナリストは「イエレン財務長官の発言は場合によってはそれを容認をすると言ったわけで、介入するかしないかという観点で言えば、1つのステップだと言っていい。その発言に合わせて神田財務官があらゆる手段を排除しないと発言したが、この2つを併せて考えると、為替の介入への警戒感を一段、強めるということが必要だと思う」と述べています。

「米が引き締め 日銀が金融緩和続ければ150円台も視野」

また、今後のアメリカの金融政策について「今の時点では来年はインフレがある程度落ち着き、金利を下げる方向になると市場参加者は見ているが、金利を引き下げるタイミングやその度合いが、今、市場が見ているより金利を引き下げない、あるいはタイミングが遅れる方向になるのではないかと言われている。仮にそういう結果になればドルが一段と強くなり円安がさらに進むということになりかねないので、神田財務官とイエレン財務長官の発言は、そうした場合にある程度備えるという意識があったのかもしれない」と述べています。

そのうえで「年内はアメリカは引き締め方向、日銀は金融緩和を続けるとすれば、少なくとも年内は円安になりやすい環境が続き、去年つけた1ドル=150円台も視野に入れなければなけない」と述べました