大谷翔平 右ひじのじん帯修復手術 術式は 復帰の見通しは

大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が19日、ロサンゼルスで右ひじのじん帯を修復する手術を受けました。手術を行った医師によりますとピッチャーとしては再来年のシーズン、バッターとしては来シーズンの開幕から復帰できる見通しだということです。

エンジェルスは19日、大谷選手の代理人を務めるネズ・バレロ氏の声明を発表しました。

それによりますと大谷選手は19日の朝、ロサンゼルス市内の病院で右ひじのじん帯を修復する手術を受けたということです。

具体的な術式は明らかになっていませんが、バレロ氏は声明で「今後を見据えて最終的な判断と術式を決めた。翔平はこの先、何年にもわたって二刀流を続けることを希望した」と説明しました。

手術を行ったのは大谷選手が大リーグ1年目の2018年10月に右ひじのじん帯を再建するトミー・ジョン手術を受けた時と同じ医師で、医師によりますとピッチャーとしては再来年のシーズン、バッターとしては来シーズンの開幕から復帰できる見通しだということです。

大谷選手は8月23日に右ひじのじん帯の損傷が明らかになり、その後はバッターとして出場を続けていましたが、9月4日の試合前に行ったバッティング練習中に右脇腹を痛めました。

その後は欠場が続き、今月16日にけが人リストに入って今シーズンを終了したため、チームの遠征には同行せず右ひじの治療を進めると見られていました。

今後は、再来年のシーズンに向けて1年半以上右ひじのリハビリを進めながらピッチャーとしての復帰を目指すことになりますが、バッターとしては来シーズンの開幕から出場できる見通しになりました。

5年前と同様 100%の状態目指すための選択か

大谷選手にとって2回目となる右ひじの手術は、先月23日にじん帯の損傷が明らかになってからおよそ1か月後、今月16日にシーズンを終了してからわずか3日後の決断でした。

手術の詳しい方法は明らかになっていないものの、大谷選手の執刀医は「完全な回復を期待している」とコメントしていて、大谷選手は前回手術を決断した5年前と同様、100%の状態でマウンドに戻るために1年以上に及ぶ長いリハビリを選択したと見られます。

大谷選手は、2018年に右ひじのトミー・ジョン手術を決断した際に行った会見で「100%、自分が投手としてパフォーマンスを発揮できる状態なのかどうなのか。(手術を)しないならしないに越したことはないと思うし、それで自分の100%が出せるならやらない方がいいと思うが、そうではないと思った」と話しています。

今回もこの考え方が大谷選手のベースにあると見られ、160キロを超える力強いストレートを軸に横に大きく曲がるスイーパーや鋭く落ちるスプリットなど、多彩な変化球を組み合わせてバッターをねじ伏せる現在の投球スタイルを復帰後も継続するために再び手術に踏み切ったとみられます。

来シーズンは、大リーグ2年目だった2019年と同様にピッチャーとしてのリハビリを続けながら試合ではバッターに専念することになります。

トミー・ジョン手術ではなく人工じん帯か

大谷選手が受けた手術の詳しい方法は明らかになっていないため断定はできませんが、執刀医の復帰の予測時期などから考えると今回の手術は5年前に受けたトミー・ジョン手術ではなく人工じん帯などを使う新しい術式を採用した可能性が考えられます。

右ひじのじん帯を修復するには、主に4つの選択肢があります。
1.トミー・ジョン手術
2.人工じん帯の移植手術
3.1と2を合わせたハイブリッド手術
4.PRP療法
このうち、1のトミー・ジョン手術は損傷したじん帯を切除して自分自身の主に手首のけんを患部に移植する方法で、大谷選手も5年前に受けています。

復帰までには1年から2年近くかかるのが特徴で、大谷選手もピッチャーとして試合に復帰したのは手術から1年9か月後、本格的な復帰は手術から2年半がたった2021年のシーズン開幕でした。

一般的には2回目のトミー・ジョン手術は1回目よりもさらに長いリハビリ期間が必要とされているため、今回の手術がトミー・ジョン手術を含む1や3の術式だった場合は大谷選手の執刀医が予測している2025年シーズンでのピッチャーとしての復帰は難しくなります。

また、執刀医は「じん帯を強化する」とコメントしていますが、4のPRP療法は患部の再生を促す治療のため、じん帯を強化する効果を期待できるものではありません。

また、このPRP療法だけを行ったのであれば通常は2、3か月程度で復帰が可能となります。

一方、2の人工じん帯を使った手術は1のトミー・ジョン手術よりも新しい術式で「インターナル・ブレース」と呼ばれる人工じん帯を患部に移植して損傷したじん帯を強化する方法です。

術後3か月ほどでスローイングを再開でき、復帰までの期間が7か月前後と早いのが特徴で、トミー・ジョン手術を含んだ1や3の方法のおよそ半分程度の期間で復帰できるとされています。この方法なら、2025年にピッチャーとして復帰できるという執刀医の見通しと矛盾はありません。

人工じん帯を使った手術はまだ症例が少なく、手術を適応できる損傷の種類が限られることがデメリットですが、大谷選手の代理人のネズ・バレロ氏はこれまでの取材で今回損傷したじん帯は5年前とは別の箇所であることと、けがの程度が決して重くないことを強調していて、今回の大谷選手にこの新しい術式が採用された可能性が考えられます。

現段階で球団は詳しい術式はわからないとしていますが、代理人のバレロ氏はプランを検討していた段階で「さまざまな医師の意見を集めている」とも話していたことから、これらの方法以外のさらに新しい術式を採用した可能性もあります。

大谷選手「一日でも早くグラウンドに戻れるように」

大谷翔平選手は自身のSNSを更新し「早朝に手術を受け無事成功しました。不本意ながらシーズン途中でチームを離れることになりましたが、残り試合のチームの勝利を祈りつつ、自分自身一日でも早くグラウンドに戻れるように頑張ります」と復帰に向けた意気込みをつづりました。

代理人ネズ・バレロ氏 声明全文

9月4日 大谷のケガの状態を説明する代理人のバレロ氏

エンジェルスが発表した、大谷選手の代理人を務めるネズ・バレロ氏の声明の全文です。

「翔平はけさ、ロサンゼルスにあるカーラン・ジョーブ整形外科クリニックで手術を受けました。

最終的な判断と術式は、今後を見据えて決めたものです。

翔平は、この先何年にもわたって二刀流を続けることを希望しました。

手術を担当したニール・エルアトラッシュ医師はこう言っています。

『翔平と協議を重ねて決めた最終的なプランは、ひじを今後も長く使うために患部を修復し、生体組織を加えて健康なじん帯を強化するというものです。私は完全な回復を期待しています。2024年の開幕には制限無く打てる状態になり、来たる2025年の開幕には二刀流として復帰できると思っています』

翔平は今、休んでいて気分も良く、これからの復帰への道のりを楽しみにしています」

日本人大リーガーがコメント

菊池雄星「ただでは起き上がらない男 強くなり帰ってくる」

花巻東高校の先輩でもあるブルージェイズの菊池雄星投手は「ただでは起き上がらない男だと思うので、強くなって帰ってくると思います」と力強いことばで後輩の復帰に期待をかけていました。

前田健太「翔平はプロ中のプロ リハビリも大丈夫」

ツインズの前田健太投手は「どういう手術をしたかがわからないので何とも言えないが、翔平だったらリハビリも大丈夫だと思う。復帰までの道のりをつらいと捉えるか当たり前の事ととらえるかは人それぞれだし、翔平はプロ中のプロの選手なのでそこは問題ないと思う」と話していました。

鈴木誠也「すぐに復活して同じように活躍してくれる」

大谷選手と同学年のカブスの鈴木誠也選手は「すごい成績をあげていたし、すごく残念な気持ちはある。本人がいちばん残念だと思うが、でも彼ならたぶんすぐに復活して同じように活躍してくれると思う。僕も負けないように頑張りたい」と話していました。

吉田正尚「早く元気な姿を」

ことし3月のWBC=ワールド・ベースボール・クラシックで大谷選手とともに日本の優勝に大きく貢献したレッドソックスの吉田正尚選手は、「早く元気な姿をお願いします」と笑顔でエールを送りました。

国内のファン「ほっとした」

大谷翔平選手が右ひじのじん帯を修復する手術を受け、成功したことについて、国内のファンからは「ほっとした」などの声が聞かれました。

大谷選手が所属していた日本ハムの試合が行われる埼玉県所沢市のベルーナドームでは、日本ハムファンの20代の男性が「ファンとしてはほっとしました。ピッチャーとしての大谷選手はしばらく見られなくなるのでそこは残念ですが、バッターとしてまたたくさん打つところを楽しみにしています。日本ハムのファンにとって大谷選手は雲の上の存在です。無理せずリハビリを精いっぱい頑張ってほしいです」と話していました。

30代の男性は「無事に手術が成功してよかったです。これをきっかけにいい方向に向かって、来年はたくさんホームランを打ってほしいです。でも、焦らずゆっくりリハビリしてしっかり治してほしい」と話していました。

20代の女性は「手術が成功してとてもうれしいです。日本中が応援しているのでリハビリも頑張ってほしいです」と話していました。