レスリングの世界選手権はセルビアのベオグラードで行われていて、今大会で5位以内に入った選手の国や地域にはパリオリンピックの出場枠が与えられ、日本選手は3位以内に入ればパリ大会の代表に内定します。
19日はオリンピックで行われる階級のうち女子50キロ級が行われ、東京オリンピックで金メダルを獲得した須崎選手は準決勝で中国の選手と対戦しました。
須崎選手は開始1分ほどで相手の背後を取って先制のポイントを奪うと、その後も相手を場外に押し出すなどしてポイントを重ね、8対2で勝って決勝進出を決めました。
これにより、須崎選手は今大会の3位以内が確定し、来年のパリオリンピックの代表内定を確実にしました。
須崎選手は20日に行われる決勝でモンゴルの選手と対戦します。
また、女子57キロ級の櫻井つぐみ選手と、女子76キロ級の鏡優翔選手もそれぞれ準決勝で勝って決勝に進み、来年のパリオリンピックの代表内定を確実にしました。
一方、男子フリースタイル65キロ級の東京オリンピック金メダリストの乙黒拓斗選手は18日に3回戦で敗れ、敗者復活戦に回っていましたが、棄権しました。

レスリング 須崎優衣 パリ五輪代表内定確実 世界選手権3位以内
セルビアで開催されているレスリングの世界選手権は19日、女子50キロ級が行われ、東京オリンピックで金メダルを獲得した須崎優衣選手が準決勝で中国の選手に勝って3位以内が決まり、来年のパリオリンピックの代表内定を確実にしました。
須崎優衣選手

女子50キロ級の須崎優衣選手は千葉県松戸市出身の24歳。
スピードに乗ったタックルを中心に、力強い投げ技や寝技など多彩な技による攻撃が最大の持ち味です。
小学1年生から父がコーチを務めるクラブでレスリングを始め、中学2年生から高校3年生まではJOC=日本オリンピック委員会が若手の英才教育をする「エリートアカデミー」で実力を磨きました。
中学時代は出場したすべての大会で優勝するほどの強さを誇り、高校3年生だった2017年には世界選手権で初優勝して、2002年の伊調馨選手以来となる、高校生での世界チャンピオンとなって一躍脚光を浴びました。
リオデジャネイロオリンピック、金メダリストの登坂絵莉選手など強力なライバルとの代表争いを勝ち抜いた末に出場した初めてのオリンピック、東京大会では4試合すべてで1ポイントも失うことなくテクニカルフォール勝ちという、圧倒的な強さで金メダル獲得を果たしました。
その後も「さらなる高みを目指す」とパワーの強化や組み手の技術などに磨きをかけ、去年の世界選手権では自身3つめとなる金メダルを獲得して優勝し、海外選手にはいまだ負け知らずです。
前回の苦しい経験が糧に
相手を寄せつけない強さでパリオリンピックの代表内定を確実にした須崎選手。今大会にはいつも以上に強い覚悟で臨みました。「この大会で絶対に決める」というその覚悟。ことばのうらには東京オリンピックへの切符をつかむまでに味わった苦しい経験があります。
そのつまずきが起きたのが2019年7月の、東京オリンピック出場がかかった世界選手権の代表決定戦でした。最大のライバルだった入江ゆき選手に敗れて、一時はオリンピック出場が絶望視されました。ところが入江選手が世界選手権の準々決勝でまさかの敗北を喫し、この大会での内定を逃しました。
いわば「他力」によって生まれたその後の代表選考レースを勝ち抜いたことで、何とか代表の座をつかみました。このときのことは「正直、もう二度と経験したくない」とパリオリンピックに向けては得意のタックルからの攻撃に加え、組み手や寝技などを強化するなど入念に準備を積み重ねてきました。
その成果もあって、今回は世界選手権への出場権も確実に獲得。大会本番でも終始、強さを示し続けました。2回戦から登場すると、初戦はわずか1分36秒で12対1のテクニカルスペリオリティで勝ちました。
続く準々決勝では足へのタックルから相手の背後をとり、先制のポイントを奪うと、そのまま寝技に持ち込み、相手の両肩をマットにつけるフォール勝ちでわずか43秒で準決勝進出を決めました。
そして、準決勝もほとんど危なげない試合運びで勝利し、今回はオリンピックへの切符を早々に獲得。
苦しんだ経験をみずからの成長につなげて、目標に掲げてきたオリンピック2連覇への挑戦権を手にしました。