ゼレンスキー大統領が対面出席 国連総会 首脳外交の行方は

アメリカ ニューヨークの国連総会では、まもなく各国の首脳らによる一般討論演説が始まります。ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアによる軍事侵攻以降、初めて対面で出席し、国際社会に改めて支援を呼びかけるものと見られます。

国連本部では、19日午前、日本時間の19日夜10時から国連総会で各国の首脳らによる一般討論演説が始まります。

初日は、アメリカのバイデン大統領や日本の岸田総理大臣のほか、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアによる軍事侵攻以降、初めて対面で出席して演説する予定です。

ゼレンスキー大統領は、総会と並行して20日に開かれる安全保障理事会の首脳級の会合にも出席するほか、各国の首脳と個別に会談します。

ゼレンスキー大統領としては、領土の奪還に向けた反転攻勢を続けるために武器の供与を含めたさらなる支援を求めるとともに、ロシア軍の撤退などを盛り込んだみずからの和平案について、幅広い支持を取り付けたい考えです。

一方で、軍事侵攻の長期化によって、食料やエネルギーの価格高騰など途上国を中心に深刻な影響が広がっていて、グローバル・サウスと呼ばれる国々などからは即時停戦を求める声も出ています。

ゼレンスキー大統領がさらに支持を広げるためには、途上国などが直面するさまざまな危機に協力して取り組む姿勢を示す必要があるとも指摘されていて、首脳外交の行方が注目されます。

このほか国連総会では、気候変動対策の遅れや、SDGs=持続可能な開発目標の達成が危ぶまれるなど、地球規模の課題も山積していて、国際社会が一致してさまざまな危機に対処できるかも問われることになります。

専門家「ゼレンスキー大統領 慎重に外交進める必要」

ウクライナのゼレンスキー大統領が国連総会に対面で参加することについて、専門家は、大統領にとっては多くの首脳らに支援を呼びかける貴重な機会になる一方、軍事侵攻の長期化で食料危機などの影響を受けている途上国の間では即時停戦を求める声もあり、慎重に外交を進める必要があると指摘しています。

シンクタンク「国際危機グループ」のリチャード・ゴーワン氏は、NHKとのインタビューで「ゼレンスキー大統領はこれまで西側の指導者と多くの時間を過ごしてきた。今回は中立的な国々のリーダーとの会談に力点を置くだろう。アフリカやアジア、南米の指導者と話をし、ロシアを支持すべきではないと説得するだろう」との見方を示しました。

そして「大統領にとっては戦争をどのようにして終わらせるべきか、自らのメッセージを国連加盟国に売り込む絶好の機会だ」と分析しています。

その一方で、ゴーワン氏は「欧米以外の国々の多くは、ウクライナについて話し合うことを避けたり、ウクライナとロシアの間で中立的な立場をとろうとしたりしている。誰もがこの戦争を一刻も早く終わらせたいと思っている。ゼレンスキー大統領は、そうした強い訴えを受けるだろう」との見方を示しました。

また「多くの国は外交による戦争の早期終結を期待していて、ロシア軍がウクライナの領土にとどまっている状態でも交渉を開始すべきだと考えている国もある」として、食料危機などの深刻な影響が広がっている途上国などの間では、即時停戦を求める声も高まっていると指摘しました。

そのうえで「仮にゼレンスキー大統領が外交的な解決を望んでいない印象を与えれば、戦争を長引かせているのはウクライナ側だと受け止められるかもしれない。それはウクライナ外交にとってマイナスだ」と分析しています。

ゴーワン氏は、ゼレンスキー大統領が途上国などが直面するさまざまな危機に理解を示し、食料の安定供給などにも貢献する姿勢を示すことが、支持をとりつけるうえで重要だと見ています。

国連本部の周辺は厳重な警備

一般討論演説が始まるのを前に、ニューヨーク マンハッタンにある国連本部の周辺では、厳重な警備が敷かれています。

前日の18日には、ウクライナのゼレンスキー大統領をはじめ多くの首脳や外相がニューヨーク入りし、国連本部の周辺では、道路が封鎖されて一般の車は通行できなくなっています。

道路のいたるところに警察官が配置され警戒にあたっているほか、建物の屋上でも武装した警察官が監視にあたるなど、ものものしい空気に包まれています。

このあとも各国の首脳が続々と到着することになっていて、警備はさらに強化される見通しです。