“この冬は暖冬傾向 一時的に大雪も” 気象庁長期予報

連日、季節外れの暑さが続いていますが、気象庁の長期予報によりますと、この冬は日本付近に寒気が流れ込みにくく、全国的に気温が平年より高く、降雪量も少なくなる見込みです。
気象庁は「暖冬傾向を予想しているが、一時的な寒気の流れ込みで大雪になる可能性があるので注意してほしい」と呼びかけています。

気象庁 “気温 平年より高く 降雪量少ない見込み”

気象庁が19日に発表したことし12月から来年2月にかけての冬の長期予報によりますと、上空の偏西風が日本付近で蛇行して平年よりも北を流れるとみられ、いわゆる「西高東低」の冬型の気圧配置となるのは一時的なため、東日本、西日本と沖縄・奄美を中心に寒気が流れ込みにくくなる見込みです。

このため、冬の平均気温は
▽東日本と西日本、沖縄・奄美で「平年より高い」とみられ、
▽北日本で「平年並みか高い」と予想されています。

冬型の気圧配置が弱いことから、期間を通しての降雪量は
▽東日本と西日本の日本海側で「少ない」と予想されているほか、
▽北日本の日本海側で「平年並みか少ない」見込みです。

また、降水量は
▽東日本の太平洋側と西日本で「平年並みか多い」
▽北日本、東日本の日本海側、沖縄・奄美で「ほぼ平年並み」と予想されています。

偏西風の蛇行の要因について気象庁は、南米・ペルー沖の赤道付近の太平洋で海面水温が高くなることでインドネシア付近で雨雲が発達しにくくなる「エルニーニョ現象」と、インド洋西部で海面水温が上がって雨雲が発達しやすくなる「正のインド洋ダイポールモード現象」の影響だとしています。

この冬について気象庁は、「暖冬傾向と予想している」としながらも、この夏、記録的な高さとなった日本海の海面水温が、冬も平年に比べて高い状況が続くと予想されるため、一時的に寒気が流れ込むと雪雲が発達しやすくなるとしています。

気象庁異常気象情報センターの楳田貴郁所長は「上空に寒気の影響や日本の東で低気圧が発達した場合、一時的な大雪になる可能性がある。最新の気象情報に注意してほしい」と話しています。

専門家 “短期間だが社会生活に影響する大雪も”

気象庁の長期予報でこの冬の暖冬傾向が示されたことについて、東京大学先端科学技術研究センターの中村 尚 教授は、気象庁と同様の見通しを示した上で、北極海の海面水温の上昇により、日本で社会生活に影響が出るような大雪につながる可能性があると指摘しています。

中村教授によりますと、この夏は日本だけでなくロシア西部も高気圧に覆われて記録的な高温となり、ロシア北西部に面する北極海「バレンツ海」と「カラ海」の海面水温は、8月の平均で平年より2度から5度ほど高くなりました。

水温が高い状況が冬も続いた場合には、大気中へ水蒸気が放出されることで偏西風がシベリアの上空で北へ蛇行し、その東では南へ蛇行すると見込まれ、中国北部やモンゴルの上空まで寒気が南下する可能性があるということです。

一方、日本海ではこの夏、一部の海域で海面水温が沖縄周辺を超えるなど記録的な高温となり、冬のはじめごろまで水温が比較的高い状況が続くと見込まれています。

偏西風の蛇行によって大陸から寒気が南下した場合、日本付近では大雪となるおそれがあると指摘しています。

中村教授は、「寒気が日本上空まで南下してきた場合、日本海から供給される温かい水蒸気によって雪雲が発達しやすくなり、短期間ではあるけれど社会生活に影響が出るような大雪となる可能性がある。寒気の入り方によって、雪が降る地域は変わってくるので、天気予報に十分注意して過ごしてほしい」と話しています。